激変する時代に求められる「アジャイル型」への意識改革とは?
〜中小企業経営者のための注目の経営トピックス[第16回]

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目次

業種を問わず、世の中のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでいます。そんな中、従来の「ウォーターフォール型」ではなく、短い期間で実装とテストを繰り返す「アジャイル型」という、変化に強い開発方法が注目を集めています。

メディアでも注目されている企業経営に関するトピックスを解説する本連載。今回は、「アジャイル型開発」の基礎知識や伝統型との比較、導入することで得られる変化について解説します。

アジャイル型開発とは

アジャイルとは「敏捷」や「すばしっこい」などの意味を持つ英単語です。つまり、アジャイル開発とは、企業内で利用するITシステムやソフトウェアを敏捷に開発することを指します。

そんな「アジャイル型開発スタイル」が登場し始めたのは、2000年代前半のアメリカです。すでに20年以上の年月が経過しているため、日本国内でもIT業界ではすでによく知られた専門用語となっています。

ゆっくりと時間をかけ、隙のないシステムやソフトウェアを構築できればそれに越したことはありません。しかしIT業界における競争は年々激化しており、「短納期で精度の高い商品やサービス」へのニーズが高まり続けています。そこで、スピーディで小回りの利くアジャイル型開発が重用されているのです。

伝統的なウォーターフォール型開発との違い

アジャイル型開発の対極に位置するのが「ウォーターフォール型開発」です。アジャイル型はそもそも、ウォーターフォール型の持つ欠点を補う開発法として登場した経緯があるため、2つの開発法の間には大きな違いがあります。以下に見ていきましょう。

スタート地点が大きく異なる2つの手法

ウォーターフォール型開発の場合、開発スタート前に綿密な企画~要件定義~設計というプロセスが設けられます。これはシステムやプログラムが持つすべての機能を対象としたプロセスであり、実際にプログラミングが始まるまで、長い時間がかかります。

対してアジャイル型は「途中変更がある」という前提でスタートする開発手法なので、おおよその仕様が決められた段階で、すぐにプログラミング作業が始まります。そのため、作業途中でリクエストが追加されることは珍しくありません。一方で、プログラミングが完了した箇所から順次サービスの提供を開始していくなど、柔軟な対応も可能です。

開発スタッフの関わり方の違い

ウォーターフォール型開発は、企画~要件定義〜設計〜テスト〜実装という工程ごとに責任担当者が変わるという「分割工程」を採用しています。対してアジャイル型開発は、参加する技術者がチームを組んですべての工程に関わり、全体の動きを精査します。

アジャイル型開発は単に「すばしっこい」というだけではない

ウォーターフォール型の工程は計画的に管理されている分、終盤のテスト段階で初めて不具合が見つかり、大きなタイムロスにつながることがあります。しかしアジャイル型であれば、不具合を早期に発見し、柔軟に対応可能です。利用者との双方向性も高く、「フィードバックが、システムやソフトウェアのクオリティをさらに高める」という相乗効果も期待できるでしょう。

アジャイル型開発の注意点

ここまでアジャイル型開発の特徴やメリットを紹介してきましたが、注意すべき点もあります。

可変性の高さが仇となることも

事前に仕様を定め、品質の安定度が高いウォーターフォール型開発に比べ、実装やテストの過程で変更を繰り返すアジャイル型は、すべての機能が揃った際に「クオリティがいまひとつ」という結果になるリスクがあります。アジャイル型の開発を行う際は、ディテールにこだわるあまり、全体の仕様や設計がおろそかにならないよう、注意が必要です。

かえって納期が延びる!?

可変性の高さが納期に悪影響を及ぼしてしまうこともあります。アジャイル型はウォーターフォール型とは異なり、開発の各工程が明確化されていません。

このため変更を繰り返し過ぎると、機能ごとの進捗が管理し切れなくなり、当初の納期に間に合わなくなることもあります。各工程がしっかり管理されているウォーターフォール型にならい、スケジュールを徹底していく必要がありそうです。

DXにおいてアジャイル型開発がもたらすもの

ここまでの内容を一読し「アジャイル型開発の概要は分かったが、ウチと関係があるのだろうか?」という疑問を抱いた中小企業経営者がいらっしゃるかも知れません。

しかし、中小企業にさまざまなメリットをもたらすDXについて考える際、アジャイル型開発の敏捷性や柔軟性は見逃せない存在となります。

DXとは、単にデジタルテクノロジーを活用して業務効率を高め、自社製品やサービスの顧客満足度を追求することだけを指すのではありません。その本質は、個人と組織が、急速に変化し続ける時代に合った思考方法を身につけることにあります。

社会やビジネスモデルの変化が激しい中で生き残るには、システム開発の現場のみならず組織全体に、アジャイル型へと変わっていくための意識改革が必要になります。

アジャイル型開発への理解を深めることは、中小企業が真の意味でのDXを成功させる上でも大きな役割を果たすのです。

参考
※非ウォーターフォール型開発 WG活動報告書/独立行政法人 情報処理推進機
ソフトウェア・エンジニアリング・センター , https://www.ipa.go.jp/files/000004565.pdf

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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