100年企業レポート vol.02 京都編

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。
そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

1.京都府の100年企業に関する分析

京都 景色

京都府には多くの100年企業が存在するが、その多くは京都市に集中している。
京都市は794年に平安京として遷都して以来、約1000年の間日本の首都であり続けた言わずと知れた日本を代表する古都である。

都であった平安時代から幕末まではもちろん、その後も京都府では数多くの長寿企業が誕生した。
京都府の100年企業数は現在1,403社であり、全国4位である。

西陣織などの産地であることから、古くから織物業が盛んであり、現在も業種別トップは伝統的な織物卸が最多である。一方で、創業当時は花札やトランプを製造していたが、その後家庭用ゲーム機である「ファミリーコンピュータ」を発売した世界的ゲームメーカーの任天堂や、和傘屋の老舗であり現在は和傘を利用した照明を開発して、2007年にグッドデザイン賞中小企業庁長官特別賞を受賞した日吉屋など、伝統を守りながらも大きな事業転換を行なってきた企業も多く存在している。

本レポートでは、100年企業数と相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、京都府の特性を分析した。

100年企業が多い一方、働き世代と働き先は平均を下回る

京都府は歴史ある都市であり、『100年企業輩出率』が高い。古くからの観光地であるため『商業地平均価格』も2013年以降上昇している。一方で働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)は平均との差がマイナスとなっておりあまり多くなく、雇用環境もあまり良くないといえる。その点において、大阪や愛知、神奈川などの大都市エリアとは少し傾向が異なる。高齢化が進んでおり、相続・事業承継が多いため『相続税課税割合』が高いエリアでもある。

【図表1】京都府の指標別偏差値と順位

【図表1】京都府の指標別偏差値と順位

指標 偏差値 平均との差 順位
100年企業輩出率 70.0 20.0 2
生産年齢人口数 49.6 -0.4 13
有効求人倍率 49.2 -0.8 25
商業地平均価格 60.8 10.8 4
事業所数 50.0 0.0 13
相続税課税割合 60.8 10.8 6
合計スコア 340.4 40.4 5

2.京都府の100年企業データ

① 創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比34.5%であった。次いで『江戸時代』の22.3%、『大正以降』の21.3%、『明治前期』の20.5%の順である。全国に比べ『江戸時代』の比率が高いのが、歴史ある京都府の特徴である。
また、創業時期別TOPによれば江戸時代は茶、和菓子、酒などの古くから続く製造業が多く、西陣織などに代表される織物業は明治になってから増えたようである。以降織物業は上位を維持していることから、京都府の産業を支えてきたといえる。

【図表2】創業時期別構成比

【図表2】創業時期別構成比

【図表3】創業時期別TOP業種
江戸時代 明治前期 明治後期 大正以降
1位 製茶業 絹・人絹織物業 他に分類されない
その他の卸売業
木造建築工事業
2位 生菓子製造業 他に分類されない
その他の卸売業
絹・人絹織物業 織物卸売業
3位 清酒製造業 大学 造園工事業 和装製品製造業
(足袋を含む)

② 創業年TOP5

京都府の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の一般財団法人池坊華道会は、全国でも第2位となっている。

【図表4】 創業年TOP5
順位 企業名 業種 創業年
1 一般財団法人池坊華道会 生花・茶道教授業 587
2 学校法人真言宗洛南学園 高等学校 828
3 株式会社田中伊雅 宗教用具製造業 889
4 公益財団法人長刀鉾保存会 その他の事業サービス業 1225
5 株式会社本家尾張屋 そば・うどん店 1465

③ 市町村別は『京都市』が最多

市町村別では京都市が1,039社で最多であった。京都市をさらに区別で見ると、中京区(226社)、下京区(210社)、上京区(136社)の順である。
京都市で多い業種は、『和装製品製造業(足袋を含む)』、『織物卸売業』がそれぞれ29社と最も多く、次いで『造園工事業』が27社である。
2位の舞鶴市では、『建築工事業』、『乾物卸売業』、『その他の建築材料卸売業』、『金物卸売業』がそれぞれ2社でトップである。

【図表5】市町村別100年企業TOP10

【図表5】市町村別100年企業TOP10

④ 産業は『卸売・小売業、飲食店』が最多

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が628社(構成比44.8%)と最も多かった。次いで、『製造業』415社(同29.6%)、『建設業』162社(同11.5%)と続き、この3産業で全体の8割を占めた。
最も少ないのは『鉱業』で1社(同0.1%)であった。

【図表6】産業別件数

【図表6】産業別件数

⑤ 業種は『織物卸』が最多

業種別では、『織物卸』が46社で最多であった。次いで『絹・人絹織物製造』が36社で2位である。西陣織などの産地であることから、古くから織物業が盛んであることを反映している。
3位は『木造建築工事業』が27社であり、産業の発展により建築工事業が増えたことがうかがえる。『貸事務所業』は21社(同率8位)であり、大都市にしては割合が高くなかったが、『貸家業』の24社(6位)もあるので、不動産業が少ないというわけではない。

【図表7】業種別TOP10

【図表7】業種別TOP10

⑥ 資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比62.8%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が12.5%となり、5千万円未満で約7割を占めた。資本金トップは国立大学法人京都大学(業種:大学)が2,681億円。以下、国立大学法人京都工学繊維大学(業種:大学)が296億円、株式会社島津製作所(業種:製造業)が266億円の順であった。大学が2トップを占めたが、上位10社のうち5社は製造業であった。

【図表8】資本金別構成比

【図表8】資本金別構成比

※2018年10月時点データを使用

⑦ 従業員数は『4人以下』が最多

従業員別では、『4人以下』が構成比34.9%と最も多かった。次いで、『10~49人』が33.1%、『5~9人』が20.3%の順である。10人未満で5割を占める。
京都府の100年企業の多くは小規模企業であるが、国立大学法人京都大学、学校法人立命館大学や株式会社島津製作所、任天堂株式会社の製造業を含む企業6社が従業員2,000人を超える。

【図表9】従業員規模別構成比

【図表9】従業員規模別構成比

※2018年10月時点データを使用

⑧ 売上高は『1億円以上~10億円未満』が約4割

売上高別では、『1億円以上~10億円未満』が構成比43.6%と最も多かった。次いで、『1億円未満』が39.8%、『10億円以上~100億円未満』が13.1%の順である。売上高上位10社のうち、製造業が4社、学校法人が3社であった。

【図表10】売上高規模別構成比

【図表10】売上高規模別構成比

※売上高は直前3期分の平均値データを使用(2018年10月時点データ)

⑨ 本業以外に貸事務所業を行っている企業は23社

京都府で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は65社であり、構成比では全国29位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は 23社存在しており、上場企業は0社であった。貸事務所業との組み合わせで多いのは、『木材・竹材卸売業』・『木造建築工事業』(各3社)、『その他の化学製品卸売業』・『その他の化学製品卸売業』・『織物卸売業』・『清酒製造業』・『和装製品製造業』(各2社)であった。

【図表11】 本業以外で『貸事務所業』を行っている主な企業

No 企業名 業種
1 株式会社千總 和装製品製造業(足袋を含む)、その他の衣服卸売業、貸事務所業
2 株式会社北川本家 清酒製造業、蒸留酒・混成酒製造業、貸事務所業
3 平和酒造合資会社 清酒製造業、貸家業、貸事務所業
4 山下織物株式会社 和装製品製造業(足袋を含む)、絹・人絹織物業、貸事務所業
5 伊吹株式会社 織物卸売業、婦人・子供服卸売業、貸事務所業
6 株式会社ゑびや 食堂,レストラン、貸事務所業
7 中川薬品株式会社 その他の化学製品卸売業、貸事務所業、家具小売業
8 ディオニー株式会社 酒類卸売業、その他の食料・飲料卸売業、貸事務所業
9 株式会社京都駅前駿河屋 菓子製造小売 、貸事務所業
10 京都工業株式会社 情報処理サービス業、貸事務所業、パッケージソフトウェア業

※上記は一部抜粋

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。
※創業年について
創業年が「○○年間」などのように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。
※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

京都 庭園

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

 
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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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