100年企業レポート vol.21 石川編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

石川県の100年企業に関する分析

本州のほぼ中央部、日本海側に位置する石川県。北部は日本海に突き出た能登半島、南東部の加賀地方には霊峰白山を擁するなど、多様な自然に恵まれている。そのような変化に富んだ表情を見せる石川県では、数多くの貴重な文化財が残されているほか、輪島塗をはじめとする優れた伝統文化や伝統工芸が脈々と受け継がれている。なかでも金沢箔の金箔は、金閣寺や日光東照宮などの歴史的建造物や漆器、陶器などさまざまな工芸品にも使われている。

石川県の100年企業数は、501社であり、全国27位である。

その一方で石川県は、季節を問わず、常に美しい景色が見られるよう設計された日本三名園のひとつ「兼六園」をはじめ、「金沢城」「ひがし茶屋街」「近江町市場」など、藩政期の面影をとどめた加賀藩の栄華を今に伝えるスポットが点在し、年間を通して多くの観光客が足を運んでいる。また金沢市の中心部に位置し、「新しい文化の創造」と「新たなまちの賑わいの創出」を目的に開設された金沢21世紀美術館もまた国内でもトップクラスの入館者数を誇っている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、石川県の特性を分析した。

伝統文化・工芸技術の発展と
最新技術の組み合わせで地域経済の活性化へと繋げる

石川県は江戸時代からの加賀百万石文化が今なお息づく文化県である。古くからの文化・工芸の技術が地場産業として発展し、現在まで受け継がれているため『100年企業輩出率』が高い。「モノづくり」の拠点であるという需要面と、女性や高齢者の就業率が高く、労働参加余力が限られているという供給面の要因から『有効求人倍率』が高く、人手不足の問題を抱えている。
北陸新幹線の開通をきっかけに観光業の更なる成長と、地域経済の活性化に積極的に取り組んでいる。

2.石川県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比36.8%であった。次いで『明治前期』の24.1%、『大正以降』の21.9%、『江戸時代』の15.8%の順である。
江戸時代から明治前期にかけては『清酒製造業』と『旅館・ホテル』が多い。江戸時代には酒造りの高い技術を持った「能登杜氏」が誕生し、伝統と技術を受け継ぎながら石川の酒造りをけん引してきた。また、加賀温泉郷など長い歴史を持つ温泉地も多いため、『旅館・ホテル』も多い。

②創業年TOP5

石川県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の粟津温泉法師は、全国で6位となっている。

③市町村別は『金沢市』が最多

市町村別100年企業数では金沢市が243社で最多であった。
1位の金沢市では、『他に分類されないその他の卸売業』が9社と最も多く、次いで『木材・竹材卸売業』、『酒小売業』の2業種がそれぞれ7社である。
2位の小松市は、100年企業数51社であり、業種別に見ると『絹・人絹織物業』が4社と最も多く、次いで『酒小売業』、『旅館・ホテル』の2業種がそれぞれ3社である。
3位の白山市は、100年企業数47社であり、業種別に見ると『清酒製造業』が3社と最も多く、次いで『豆腐・油揚製造業』、『菓子小売業』、『書籍・雑誌小売業』、『旅館・ホテル』の4業種がそれぞれ2社である。

④産業は『卸売・小売業、飲食店』が最多

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が266社(構成比53.1%)と最も多かった。次いで、『製造業』150社(同29.9%)、『サービス業』37社(同7.4%)の順である。
石川県は加賀友禅、九谷焼、輪島塗、金沢漆器に代表される数々の伝統工芸を育んだ歴史を持ち、製造業が盛んである。現在では、機械、繊維、食品に近年成長が著しいITを加えた4産業が基幹産業と位置付けられており、石川県ではこれらの基幹産業を中心としたモノづくり産業の振興・発展を図っている。
また、独自の技術を磨き、ニッチな分野で業界トップシェアを誇る企業が多いことも石川県の特徴である。

⑤業種は『清酒製造』、『旅館・ホテル』が最多

業種別では、『清酒製造』と『旅館・ホテル』がそれぞれ17社で最多であった。石川県は加賀百万石の豪華絢爛な食文化であったことから、食品産業が盛んである。「能登杜氏」の伝統技術である『清酒製造』が1位であり、その他にも『菓子製造小売』や『しょう油等製造』の食品製造業が上位である。
伝統工芸品が多い石川県では、加賀友禅の発展を土台とした『呉服・服地小売』、輪島塗や九谷焼などの『漆器製造』も上位である。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比63.4%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が13.2%、『5千万円以上~1億円未満』が7.5%の順である。
資本金トップは津田駒工業株式会社(業種:製織機械・編組機械製造業)が123億円。以下、ニッコー株式会社(業種:強化プラスチック容器・浴槽製造業)が34億円、金沢信用金庫(業種:信用金庫)が21億円の順であった。
上位10社のうち製造業が4社、金融業が3社であった。

⑦従業員数は『10人未満』が5割超え

従業員別では、『10~49人』が構成比31.6%と最も多かった。次いで、『4人以下』が31.4%、『5~9人』が23.1%の順である。10人未満で5割を超える。
石川県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社クスリのアオキは従業員1,000人を超え、津田駒工業株式会社、株式会社トランテックス、ニッコー株式会社の製造業3社は従業員500人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比41.7%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が40.9%、『10億円以上~100億円未満』が15.0%の順である。
売上高上位10社のうち卸売・小売業が5社、製造業が3社であった。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は6社

石川県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は12社であり、構成比では全国42位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は6社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは運輸業や小売業、情報通信業などであり、本業以外に貸事務所業を行っている企業は少ない。北陸3県は、本業で貸事務所業を行っている企業も少ないという特徴がある。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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