100年企業レポート vol.34 長崎編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

長崎県の100年企業に関する分析

長崎の街並み

対馬、壱岐、五島列島などの多くの島々や半島、湾から成る長崎県。五島列島は東シナ海と鎖のように繋がっていたことから、古代から近世にかけて海外との中継地として日本の文化の発展を支えた。中でもザビエルの渡来でも知られるように、キリスト教が根付いていることから、数多くの教会が今でも残されており、歴史の流れを感じることができる。

長崎県の100年企業数は、374社であり、全国35位である。

長崎県には「和華蘭文化」といわれる独自の文化がある。鎖国時代、日本で唯一ヨーロッパに開かれた貿易の窓口だった「出島」によって、異国文化が混ざり合い、今なおその面影を感じることができる。和は日本、華は中国、蘭はオランダ(西洋)のことをいい、長崎名物の「カステラ」はオランダ、「長崎ちゃんぽん」は中国から伝わっており、多彩な文化が織りなしている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、長崎県の特性を分析した。

観光業に力を入れるも著しい人口減少が課題
今後、新幹線開通による発展に期待

古くから海外と盛んに交易が行われ、鎖国時代にも日本唯一の窓口として開かれていた長崎県は、他県にはない独特の文化や歴史を持っている。異国情緒溢れる観光施設や重要遺産には多くの観光客が訪れている。しかし現在は6指標すべて平均を下回る厳しい状況にある。特に人口減少が著しく進み、1950年から2015年の生産年齢人口減少率は九州ではトップである。その影響が他指標にも及んでいると考えられる。そんな厳しい状況のなか、2022年の九州新幹線開通にともなう商業地の開発や観光業の発展などが、長崎創生につながることを期待したい。

2.長崎県の100年企業データ

① 創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比42.9%であった。次いで『大正以降』の25.1%、『明治前期』の22.6%、『江戸時代』の8.9%の順である。
鎖国体制を敷いていた江戸時代、長崎は外国との文化や通商における唯一の窓口であった。多くの砂糖が輸入されると同時にお菓子の作り方も伝来し、街道沿いではカステラをはじめとするさまざまなお菓子が作られるようになった。そのため長崎街道は「シュガーロード」と呼ばれている。

② 創業年TOP5

長崎県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の田中鎌工業有限会社は、全国で37位となっている。

③ 市町村別は『長崎市』が最多

市町村別100年企業数では長崎市が138社で最多であった。
1位の大津市では、『酒小売業』、『貸事務所業』の2業種が8社と最も多い。
2位の佐世保市は、100年企業数56社であり、業種別に見ると『陶磁器・ガラス器卸売業』が3社と最も多く、次いで『内装工事業』や『清酒製造業』を含む5業種がそれぞれ2社である。
3位の南島原市は、100年企業数34社であり、業種別に見ると『めん類製造業』が3社と最も多く、次いで『鉄骨工事業』や『水産練製品製造業』を含む5業種がそれぞれ2社である。

④ 産業は『漁業』が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が181社(構成比48.4%)と最も多かった。次いで、『製造業』83社(同22.2%)、『サービス業』49社(同13.1%)の順である。
三方を海に囲まれている長崎県では、さまざまな種類の魚が集まるため漁業が盛んである。魚種は250種を超え、漁獲量は北海道に次ぐ全国2位となっている。クロマグロやサザエ、アジ類は全国トップの漁獲量を誇る。また古くから主要な産業として造船業が発展しているが、長崎県の第2次産業の割合は少ない。
100年企業においては、すべての産業が全国平均と比べると少ない状況であるが、観光業に力を入れるなどの地域活性化策に取り組んでいる。

⑤ 業種は『貸事務所業』が最多

業種別では、『貸事務所業』が14社で最多であった。本業が好調時に不動産を取得し、その後本業が縮小したケースがほとんどであり、東京をはじめとする大都市で多い傾向がある。ちなみに九州では福岡県と長崎県が『貸事務所業』がトップであった。
2位は『酒小売』が12社であった。長崎県壱岐市は麦焼酎発祥の地といわれており、その歴史は16世紀まで遡る。その伝統と製法を受け継ぎながら普及した壱岐焼酎は、1995年にWTO(世界貿易機関)による「地理的表示」の産地指定を受け、世界的に認められた。
ポルトガルから伝わった「カステラ」を代表とする『生菓子製造』も3位に入っている。

⑥ 資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比40.9%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が29.2%、『5千万円以上~1億円未満』が4.5%の順である。
資本金トップは株式会社親和銀行(業種:普通銀行)が368億円。以下、株式会社十八銀行(業種:普通銀行)が244億円、株式会社長崎銀行(業種:普通銀行)が61億円の順であった。
地銀3行がTOP3を占めた。

⑦ 従業員数は『10人未満』が5割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比37.6%と最も多かった。次いで、『10~49人』が29.0%、『5~9人』が19.2%の順である。10人未満で5割を超える。
長崎県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社十八銀行と株式会社親和銀行は従業員1,000人を超える。

⑧ 売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比45.1%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が41.8%、『10億円以上~100億円未満』が11.7%の順である。
売上高上位10社のうち卸売・小売業が5社である。

⑨ 本業以外に貸事務所業を行っている企業は6社

長崎県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は22社であり、構成比では全国16位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は6社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは、卸売・小売業が5社と大半を占める。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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