中小企業の「法人税率」は所得によって2段階
経営者のための「中小企業税制」の基礎知識[第1回]

中小企業の経営と切っても切れない関係にあるのが税制です。税負担によって最終的な利益(税引き後利益)が変わってきますし、将来に向けての投資計画とも密接な関係があります。

今回から、数回に分けて、「中小企業税制の基本」について解説していきます。第1回目は「法人税の税率」についてです。

法人税法で定める「法人税の分類」と「納税対象者」

法的な権利・義務の主体となるのは通常は人(自然人)ですが、法律によって一定の団体や財産が法的な権利・義務の主体となることがあり、これを「法人」と呼びます。

法人には様々な種類があり、「公法人」と「私法人」、「社団法人(団体が法人になったもの)」と「財団法人(財産が法人になったもの)」、「営利法人」と「公的法人」などの分類があります。株式会社であれば、私法人・社団法人・営利法人ということになります。

税金の観点で見ると、人(自然人)が得た所得にかかるのが、「所得税(国税)」や「個人住民税(地方税)」です。これに対して、法人が得た所得にかかるのが「法人税(国税)」や「法人住民税(地方税)」です。

ただ、法人のすべてに法人税等がかかるわけではありません。株式会社などの一般法人と協同組合等は、事業による所得のすべてが法人税等の対象になりますが、人格のない社団等(PTAや分譲マンションの管理組合など)、公益法人等は収益事業を行っている場合にのみ、収益事業による所得に法人税等がかかります。また、地方公共団体などの公共法人は、そもそも法人税等の対象外です。

法人税の「計算の仕組み」と「手順」

法人税の課税対象となるのは、法人が事業活動を通じて得た各事業年度の所得です。この「所得」はどのように計算するのでしょうか。

ここで注意しておきたいのは、「所得」と「利益」の違いです。一般的にはどちらも似たような意味に受け取られていますが、厳密にいうと違います。

「所得」とは税法上の用語で、税金の対象となるもの(課税対象)です。法人税については「益金」から「損金」を差し引いて計算します。赤字になった場合は「欠損」と呼びます。

 

益金 - 損金 = 所得(または欠損)

 

一方、「利益」は会社法等に基づく会計上の用語で、法人の儲けを表すものです。「収益」から「費用」を差し引いて求め、損益計算書などに記載されます。また、計算段階に応じて、粗利(売上総利益)、営業利益(売上総利益から、販管費を差し引いたもの)、経常利益(営業利益と営業外収益を足して、営業外費用を差し引いたもの)、税引前当期純利益(経常利益と特別利益を足して、特別損失を差し引いたもの)、純利益(税引後当期純利益)といった区別があります。赤字になった場合は「損失」と呼びます。

 

収益 - 費用 = 利益(または損失)

 

税法上の「所得」と会計上の「利益」(特に税引前当期純利益)は、感覚的には似ていますが、実際には同じ額になるというわけではありません。

日々の取引を記録し、毎月の試算表にまとめ、年度末に集計したものが、会計上の「利益」です。これを毎年度、損益計算書や貸借対照表などの決算書類としてまとめ、株主総会で承認を得ます。

一方、税法上ではそこからさらに、課税の公平や政策的な目的からいろいろな調整を行い、税金がかかる「所得」を計算し、法人税の税額が決まるのです。

法人税の計算上、「益金」になるもの、「損金」になるもの

こうした会計上の「利益」に対して税法における「所得」を求めるための修正について、税法上では「別段の定め」と一般的に呼ばれる規定があり、「別段の定め」によって所得金額を計算することを「税務調整」といいます。

先ほどの式のように、会計上の「利益」は「収益」から「費用」を差し引いて求めます。一方、税法上の「所得」は「益金」から「損金」を差し引いて求めます。そこで、「税務調整」では「収益」と「益金」、「費用」と「損金」の間で調整を行うことになり、次の4つのパターンに分けられます。

(1)加算調整
益金算入:会計上の収益ではないが、税務上の益金となるもの
損金不算入:会計上の費用ではあるが、税務上の損金とはならないもの

(2)減算調整
益金不算入:会計上の収益ではあるが、税務上の益金とはならないもの
損金算入:会計上の費用ではないが、税務上の損金となるもの

たとえば、会社が保有している株式の配当金を受け取った場合、会計上は「収益」として計上します。しかし、株式の配当金というのは、配当金を支払う会社が法人税を支払った後の税引き後利益から支払っており、二重課税になってしまいます。そこで、受取配当金の分は、会計上は「収益」として計上しますが、益金としては計上しない「益金不算入」の処理を行い、税法上の「益金」とするのです。

あるいは、交際費や役員報酬は会計上は「費用」に計上されますが、税法上では公平の観点から一定程度までしか「損金」として認めていません。そのため、税法上の限度を超える交際費や役員報酬については、会計上は「費用」として計上しますが、損金としては計上しない「損金不算入」の処理を行い、税法上の「損金」とするのです。

そのほか、建物や機械設備などの固定資産における減価償却費、取引先との接待交際費などについても、会計上と税法上で違いがあることが少なくありません。

こうした税務調整が多いと、会計上の利益と税法上の所得の額のずれも大きくなり、将来的に法人税等が増減するケースが出てきます。その場合は、将来の税負担の増減を当期の決算に反映させるため「税効果会計」という会計処理を行うことがあります。

原則23.2%の税率が、中小企業なら15%に

個人に対する所得税は現在、課税所得に応じて税率が5%から45%まで7段階に分けてアップする累進課税になっています。これに対して法人税の税率は原則として23.2%の一つだけです。

ただし、「中小法人」については、800万円以下の所得金額の部分については軽減税率が適用され、2段階になっています。

中小法人とは普通法人のうち、各事業年度終了時において「資本金または出資金の額が1億円以下の法人」、または「資本もしくは出資を有しない法人」のことをいいます。ただし、大法人(資本金または出資金の額が5億円以上の法人)などの100%子会社などは除きます。多くの中小企業は税法上の「中小法人」に当てはまるのではないでしょうか。

 

区分 所得 税率
普通法人 中小法人 年800万円以下の部分 15%
年800万円超の部分 23.2%
中小法人以外の法人 全額 23.2%

 

ちなみに、個人と中小法人の800万円の所得(課税所得)に対する税負担を単純に比較すると、個人(所得税)は120万4000円、中小法人(法人税)は120万円となり、ほとんど差がありません。しかし、これが3000万円になると個人(所得税)は920万4000円、中小法人(法人税)は696万円となり、200万円以上の差になります。

所得が多くなればなるほど、個人より法人のほうが税負担においては有利といえるでしょう。

 

※内容は、2019年12月時点の情報に基づいて作成されたものです。

※本情報は、法律、会計、税務の一般的な説明です。個別具体的な法律上、会計上、税務上の判断や対策などについては、弁護士や公認会計士、税理士などの専門家に相談ください。

 
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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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