日本に定着しない「CFO」を中小企業で活躍させるには?
~「会社の番頭」の選び方・育て方[第5回]

ひと昔前、会社の役職といえば、会長、社長、部長などと、日本語で統一されていましたが、近年はすっかり横文字の役職名も定着しました。

最もわかりやすい例が、CEO(Chief Executive Officer)です。日本語に訳すと最高経営責任者で、旧来の役職名の中では代表取締役が最も近いでしょう。日本では、代表取締役と社長職(President)を兼任していることが多いため、CEOと社長がよく混同されています。そしてここ数年、新たに認知され始めているのがCFO(Chief Financial Officer)です。

本連載では、これまでCFOの職務内容などについて解説してきました。第5回の今回は、日本のCFO人材の特徴や弱点について解説していきます。

日本国内におけるCFOの歩み

CFOは最高財務責任者として、CEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)に並び立つポジションです。その発祥は米国で、時代は1970年代の中頃にまで遡るとされています。

一方、日本企業内にCFOが登場し始めたのは1990年代の後半以降になります。当時の日本ではバブルが崩壊し、経済に閉塞感が生まれていました。資金繰りに苦しみ始めた企業は「財務面から経営計画立案に参加する」「企業価値検証によって信用力を上げる」「株主対応も任せられる」CFOを必要とするようになりました。

日本企業で初のCFO人材を登用したのは、ソニーと言われています。2000年には一般社団法人日本CFO協会が発足し、現在までセミナーや資格認定などの活動を継続しています。CFOの肩書を持ち、企業に就業している人材は数多く存在しています。

しかし、1990年代の後半から20年以上が過ぎた今でも、日本企業におけるCFOの価値は、CEOと並び立つまでには至っていません。

日本に真のCFOが定着しにくい理由

ではなぜ日本企業には、CFOが定着しにくいのでしょうか。以下で理由を考えてみましょう。

■数値ベースで物事を動かしにくい

CFOは企業内の経営陣の中でも最高の財務責任者です。会社の資金情報を全体的に把握している立場であり、具体的な数字を活用して今後の経営方針に影響を与える存在です。

しかし、日本企業の多くは、経営や戦略を数値ベースで考えない傾向があります。社内の同族意識が強く、数字を持ち出さなくても意見が統一されやすいためです。

こうした状況下では、CFOが財務責任者以上の能力を発揮しづらくなります。

■財務スキルしか持たないCFOが多い

国内の大企業で経営陣の一角に就いている人材は、実務を担当しないケースが多くなっており、配下の役員に実権が与えられているため、彼らの役割は統括や最終の意思決定のみとなることがあります。このため、財務スキルしか持たない人物が年功序列などの理由からCFOに就任していることが多いのです。

CFO本来の役割は財務に留まりません。経営計画や企業価値検証のため、日々能動的に実務へ取り組まなくてはならないのです。そのためには、財務以外のスキルや現場スタッフを束ねるマネジメント能力も必要となります。

しかし、国内の大企業によく見られるCFOは、経営企画業務に携わったことがありません。このため、戦略の立案遂行を求めることが難しいのです。

このような国内大企業の体質や習慣は、名ばかりのCFOを輩出する大きな原因となっています。

■現場スタッフにCFOの役割が理解されていない

近年、国内でCFOの需要が高まっているのは確かで、必要なスキルを備えた人材が就業を果たすケースも多くなってきました。しかし、企業全体にCFOの重要性が浸透していないせいで、せっかくの人材が宝の持ち腐れになることもあります。

CFOは業務全般のスムーズな進行を企業価値向上へと繋げるべく、日々奔走しています。しかし、技術偏重のスタッフが現場に多いと「実務を担当しないのに、指示をしてくる。」と疎まれてしまうこともあります。経営陣がCFOの価値を理解していることは大前提ですが、馴染みの薄い横文字の役職に戸惑うスタッフの存在は、CFOにとって大きな障害となります。

日本の中小企業にCFOを定着させるには?

それでは、日本の中小企業にCFOを定着させ、本来の能力を発揮させるには、経営者はどのように努力すべきなのでしょうか。以下で見ていきましょう。

■トップダウン方式を採り入れる

日本では大企業になるほど、若者に現場を任せて年長者をお目付け役にさせる風潮があるため、経営計画立案などについてはボトムアップ方式が定着しています。このためCFOも経営陣の一角に祭り上げられ、能力を発揮しないまま過ごすことになってしまうのです。

しかし、CFOは本来、現場を積極的に行き来しながら経営計画立案に関わっていくポジションです。彼らが充分にポテンシャルを発揮することで、現在の日本企業の在り方に大きな風穴を開けるはずです。そのためには、ボトムアップ方式を脱却してトップダウン方式を採り入れることが必要となってきます。

経営者が個室で安穏と過ごすわけにはいかない中小企業において、トップダウン方式は比較的取り入れやすいはずです。その実施は、年功序列を排した実力主義を生み、今後の日本社会に必要な企業の競争力を育んでくれるでしょう。

■数値を尊重する習慣を付けていく

CFOにとって、財務スキルは「基本のキ」です。財務は数字によって支配された世界であり、そこから弾き出されたデータを元に、今後の経営について計画を立案していきます。

CFOを最大限に活用するためには、数字という誰にでもわかるデータを尊重し、重視する姿勢が必要となります。経営者自身が意識改革を率先して行い、経営の透明性を高めていくようにしましょう。

■社内にCFOの存在意義を周知させる

先述の通り、日本ではまだCFOの認知度が充分とは言えず、名称は知っていても本当の存在意義が理解されていない傾向にあります。CFO人材を雇用/育成する場合は、他のスタッフにも、その職務内容についてしっかりと理解してもらわなくてはなりません。

まずほかならぬ経営者自身が、CFOを「自分と同様に重要なポジション」と位置づけ、正当に評価する必要があります。わかりやすく言えば、社内に自社専属の有能なコンサルタントが在籍することになるのです。CFOを経営参謀として認め、その意見を重用していく姿勢を持つことが最も大切です。

また、現場で就業する一般スタッフたちにも、CFOの役割を説いていきます。特に技術系スタッフには、企業価値向上やコーポレートガバナンス遵守が、現代の企業にとっていかに重要であるかを、説明しなくてはなりません。

その番人がCFOであることを理解できれば、彼らの心中にも理解や協力姿勢が育まれていきます。場合によっては勉強会を開催し、CFOの存在意義を浸透させていきましょう。

現在の国内は少子高齢化の影響からグローバル化が進んでいます。また、設備投資を抑えて資本を効率よくマネジメントしていくために、国際的なビジネススタイルを背景に持つCFOは必要不可欠です。名ばかりのCFOではなく、本物の実力を持ったCFOの受け入れ態勢を積極的に整えていきましょう。

 

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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