番頭とは?現代の会社における役職とその重要性

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目次

番頭とはどのような役職・役割なのでしょうか。長寿企業やファミリービジネスでは番頭の呼び名が残っていたり、現代の会社において実質的にCFOが同じ役割を担っていたりする例があります。番頭・CFOの役割とその重要性をみていきましょう。

「番頭」という言葉の由来

「番頭」を辞書で調べると、「輪番で勤務する際の責任者」「江戸時代,商家の使用人のうちで最高の業務支配人」「平安時代以降,荘園領主は夫役の交替,年貢・公事 (くじ) 徴収のため荘園内をいくつかの番に分け,有力名主に給田あるいは給米を与えて番頭として統制させた。このことから集落の長のようになり,室町時代の惣村結合の中心となった」とあります。

企業における番頭の役割は、当然ながら「商家の使用人のうちで最高の業務支配人」です。

「輪番で勤務する際の責任者」でいうところの「番」は、交替勤務の形態の「早番・遅番」などで現在も使用されています。また、集落の長や戦時中の軍の「当番長」などから、地域やグループを支配しているという意味での「番長」「番を張る」が派生したといわれています。

番頭は現代の会社でいうとどのような役職か 

ひと昔前、会社の役職といえば、会長、社長、部長などと、日本語で統一されていましたが、近年は英語の役職名も定着しました。

最もわかりやすい例が、CEO(Chief Executive Officer)です。日本語に訳すと最高経営責任者で、旧来の役職名の中では代表取締役が最も近いでしょう。日本では、代表取締役と社長職(President)の兼任が多いため、CEOと社長が混同されがちですが、実際は別の役職で、一般にはCEOがPresidentの上に位置します。アメリカでは、CEOは中長期的の企業の経営方針を決定・執行する経営のトップ、Presidentは短期の事業計画を決め、経営戦略に沿って実施する現場のトップです。

CEOに次いでよく耳にするのは、COO(Chief Operating Officer)、最高執行責任者です。COOは日々の業務の執行に責任を持ちます。

そして数年前から新たに認知され始めているのが、CFO(Chief Financial Officer)です。CFOという役職名を日本語に訳すと、最高財務責任者です。商家で活動全般を担っていた「番頭さん」の役割は、現代のCOOとCFOを合わせたものですが、財政に責任を持つ経営陣という意味で、最も近いのはCFOといえるでしょう。

番頭と財務本部長の違い

CFOが認知される前の旧来の役職名でいうと、番頭と最も近いのは財務本部長ですが、CFOを財務本部長の職務との違いとはなにかをみていきましょう。

旧来の財務本部長の役割

財務本部長とは、財務職の最高責任者で、企業の年間資金計画立案、予算管理、資金調達、資産調整などの業務を請け負います。

企業内でお金を扱う部署を大別すると、財務部と経理部があります。経理が過去の経営活動を記録する業務を基本とするのに対して、財務は「企業が将来的に、どのようにお金を使うのか」を考え、必要量の調達や調整にあたります。「すでに動いたお金」を的確に把握するのが経理、「これから動かすお金」について考え、企業の未来を描く業務が財務です。

しかし財務本部長はあくまで、会社の資金情報を全体的に把握しているポジションという位置づけでした。財務本部長が経理本部長を兼任している会社も多く、出納状況や資金計画を経営者に報告するのが、主な業務内容です。財務本部長が重要な役職であることは確かですが、多くの場合、経営に影響を及ぼすほど大きな発言力を与えられてきたわけではありません。

番頭の役割とは

それに対して、番頭(CFO)は単なる財務面の責任者ではなく、経営陣のひとりです。具体的には、CEOについで、COOと並ぶポジションであり、会社のナンバーツーやナンバースリーに位置します。他の経営陣から求められる要求に対し、財務データを活用して意思決定を行ない経営方針を決める立場です。

上記のように、番頭は単なる金庫番ではありません。企業の将来の方向性に影響を与える、重要なポジションです。また番頭は他の経営陣に比べ、「具体的な資金情報を把握している」という強みを持っています。その影響力は相当に大きいと考えて差し支えないでしょう。

次に番頭に求められる主要な役割をみていきましょう。

番頭の役割① 企業価値を向上させる

番頭は、財務強化だけでなく「企業価値を向上させ、市場に評価してもらう」という役割を担います。企業価値はさまざまな角度から検証されますが、その一例をみてみましょう。

1 資本コスト
2 営業キャッシュフロー
3 純資産に対する収益/設備投資を除外した収益
4 売上高成長率
5 安定性
6 株主の収益率や利益成長率

こうした検証を地道に実践し、確かなデータとして蓄積します。そのうえで「問題点を改善するにはどうすべきか」を考えていくことが、番頭のミッションです。番頭は“経営のプロ”としてステークホルダーの利益を考え、企業が市場から高く評価されるための意思決定をします。それらの意思決定が、良質な企業イメージの醸成に繋がり、企業価値の向上へとつながっていくのです。

グロービス経営大学院の准教授で、税理士法人カマチの代表社員としてもある蒲地正英氏は、長寿企業の特徴として、番頭が企業存続への危機感を持ち、身の丈にあった投資の判断軸を身に着けていることをあげています。成長のためにリスクをとる・存続のためにリスクを避ける、そのどちらが将来的な企業価値向上につながるのか、数値に戻づいて検証し、判断することが番頭には求められるのです。

番頭の役割② 市場から資金を調達する

昨今の日本企業にCFOが導入されるようになった背景には、資金調達の難しさがあります。バブル崩壊などを経て、金融機関は企業の現在の経営状態を重視するようになり、将来の見込みだけで融資をしてくれることはほとんどなくなりました。こうした状況もあり、特にベンチャー企業や新規事業では、将来性を見込んで投資してくれる市場、つまり投資家から資金調達を行う必要が出てきたのです。

しかし、企業の将来性を伝えるにも、金融機関と投資家とでは視点が異なります。銀行は財務状況や財務計画を重視しますが、投資家は企業の成長性や経営戦略、それに見合った財務戦略を重視します。

番頭は、経営陣のひとりとして、投資家の視点を理解し、将来的に大きなリターンを生み出すことをわかりやすく伝えねばなりません。具体的には、データを活用し、経営計画の立案、企業価値の検証、マネジメントレポートの提出などを行ないます。

番頭の役割③ 経営陣と現場の社員をつなぐ

番頭がここまでみてきたような役割を果たすには、「経営計画は軌道に乗っているのか」「企業価値は高まっているのか」「リスクマネジメントは徹底されているのか」などを、多角的に確認する必要があり、こうした社内の状況把握も重要な役割のひとつです。

特に、経営者が世代交代する際には、番頭の役割が必要不可欠です。新たな経営者に経営や財政面の課題を共有し、数値根拠をもとにした解決案を提供するとともに、現場や社員の実態と経営をつないでいく必要があります。経営者にとって「現場を理解し、ともに経営戦略を立案する参謀」が番頭です。

番頭が発揮すべきリーダーシップ

番頭の業務は多岐に渡り、すべてを独りでこなすことは事実上不可能と言ってよいでしょう。財務部門、経営企画部門に在籍する多くの部下を束ね、優れたパフォーマンスを維持してもらわなくてはなりません。そのためには、リーダーシップを発揮し組織をマネジメントする力が重要です。

・経営陣で共有した経営計画に基づく目標・戦略を、明確なビジョンや方法論に解釈して部下に伝える
・スタッフに実務を任せたうえで、その動向を逐一確認し、適切にフォローする
・スタッフとの人間関係を円滑にし、必要に応じて指導や意見を与え、部下からの意見に耳を傾ける
・問題が発生した場合には多面的に検証し、改善策を打ち出す

番頭が発揮すべきコミュニケーション力

マネジメントの実施にあたり問われるのが、番頭のコミュニケーション能力です。高圧的な態度では周囲からの信頼を得られませんから、各現場に溶け込める柔軟性が求められます。しかし慣れ合いになることなくコーポレートガバナンスをしっかりと機能させるには、時には厳しい態度を取ることも必要です。

そのような場合にも信頼を失わないよう、大勢のスタッフを納得させられる道徳観・倫理観に基づく一貫した人間性と、感情を適切にコントロールできる冷静さが必要不可欠です。さらに、笑顔を忘れないことで、CFOの多彩な業務はスムーズに進行していくことでしょう。

そのほかに番頭が発揮すべき力

番頭には、マネジメント力やコミュニケーション能力以外にも、企業規模や業種、業態に応じて以下のような能力も求められます。

・マーケティング能力(市場調査、消費者動向調査、プロモーション戦略、セグメンテーションなど)
・国際対応力(英語力、プレゼンテーション力、異文化理解力)
・オペレーション管理能力(物流や在庫、原料調達に関する知識、業務効率化に向けたノウハウなど)
・業務管理能力(販売/購買管理、外注管理に関する知識など)
・人事管理能力(制度構築、コーポレートガバナンスに即したインセンティブ/福利厚生制度構築など)

加えて、企業規模や業務内容によって「グループ経営の管理能力」や「情報システム構築に関する知識」が求められることもあります。企画経営や財務に加え、上記スキルのすべてを網羅している人物は、理想の番頭といえるのです。

まとめ

これまで、日本企業の多くは部署機能を分散させ、各部署がそれぞれの業務を担う組織体制が主流でした。こうしたシステムは専門能力の向上やトップダウンの経営に向いており、大量生産・大量消費の時代にはメリットとして作用し、高度経済成長の原動力となりました。

反面、このシステム下では、社内の縄張り意識や派閥を発生させ、セクト主義を生み出すというデメリットがあります。「自分が担当している業務の利害のみを追求する」「自分が担当していない業務については、事なかれ主義を貫こうとする」という問題が少なからず発生するのです。セクト主義は経営環境の変化にすばやく対応すべき現在においては、業務の進行を阻害し、企業価値の低下に直結しかねません。

「商家の使用人のうちで最高の業務支配人」という位置づけから始まった番頭さん。現在の企業においても、企業価値を向上させるために、様々な部署=番に目を配りながら効果的に作用させる、「大番頭」の役割を求められるといえるでしょう。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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