労働力人口減少が加速…慢性化する人手不足から会社を守るには?
~20年で終わる会社 20年を超える会社[第5回]

帝国データバンクの調査によると、2018年に倒産した企業の数は8,000件以上でした。業種別で見るとサービス業が最も多く、卸売業、建設業が後に続いています。また、「倒産した企業の平均寿命は23.9年」という数値もこちらの調査で導き出されています。

リーマンショックが起きた2008年(倒産企業数1万3,000件以上)以降、倒産企業数は10年連続で減少しています。しかし回復傾向にあるものの、楽観はできない状況です。

本連載では企業の倒産原因に注目し、企業が存続し続けるためのポイントを紹介していきます。今回は、企業倒産の原因となる「人手不足倒産」について考えています。

人手不足による倒産の現状

企業の倒産と聞いてまず思い浮かぶ理由は、販売不振や連鎖倒産です。しかし近年は、人手不足も大きな脅威のひとつとなっています。

2008年のリーマンショックを経て、2013年ごろには経済回復の兆しが見えてきました。ところが受注の向上に連れ内部の人手不足が深刻となり、業績が悪化して倒産へ追い込まれていく中小企業が増加したのです。

帝国データバンクが2020年の1月に発表したデータによると、2019年に人手不足倒産に追い込まれた企業は185件。この数字は前年に比べ20.9%増となり、4年連続で過去最多を更新しています。

少子高齢化の進む日本は、2007年に65歳以上の人口割合が全体の21%以上を占める「超高齢化社会」へ突入しています。2025年には高齢者の人口割合が30%の大台に乗る見通しですから、今後も人手不足により倒産する企業の数は、増加していくに違いありません。

進む労働力の流動

帝国データバンクの調査によると、人手不足による倒産が多かったのは建設業や、道路運送貨物業。またソフトウェアなどの受託開発を行う小規模企業の倒産は、前年に比べ倍以上の数値となったようです。もちろん飲食業や小売業、そして老人福祉事業などにおける人手不足も続いていますので、どの業界も決して気を抜くことはできません。

少子高齢化に伴う採用難が、人手不足に大きな影響を及ぼしているのは明らかです。しかし中小企業の経営者は、人材の定着難にも目を向ける必要があります。近年の日本では「転職は当たり前」と考えられるようになりました。

また経団連の中西宏明会長が、2019年5月7日の定例会見で「終身雇用を前提にすることが限界になっている」と発言するなど、大企業の間でも終身雇用制度が瓦解する兆しがあります。こうした流れが推し進められていくと、より良い条件を求める労働力の流動に、拍車がかかっていくでしょう。「大企業×優秀な人材」という中途採用が増加していくことも考えられますので、中小企業はいよいよ深刻な人材不足に悩まされるのではないでしょうか。

中小企業が人手不足倒産を回避するには

中小企業が人手不足による倒産を回避するためには、どのような点に留意していくべきなのでしょうか。以下に見ていきましょう。

■労働条件の整備をしっかりと

充分な人員が揃えられていないうちに新規の案件を受注すると、既存スタッフにしわ寄せが及びます。こうした状況下で残業や休日出勤を強制し、労働に見合う支払いを怠る企業には、当然ながら人員が定着しません。ただでさえ人が少ないのに、離職希望者が続出してしまうという、悪循環が生まれてしまうのです。経営者は、もはや「代わりはいくらでもいる」という時代ではないことを、しっかりと認識しなくてはなりません。

2019年に始まった「働き方改革」は、2020年4月から中小企業も施行対象としています。「上限時間以上の残業はしない」、「年5日は有給を取得できる」などは、スタッフにとって当然の権利となったわけです。これらを最低限遵守するのはもちろん、給与や労働形態などに関してより良い条件を整備していかなければ、人手不足倒産が現実のものになってしまうでしょう。

また人手不足倒産とは少し異なりますが、優秀な営業スタッフの定着には、特に心を砕く必要があります。魅力ある人材は取引先だけでなく、同部署の部下をも惹き付けます。その働きを正当に評価しないと離職を招いてしまうばかりか、直属スタッフの連鎖退職を引き起こす可能性があります。

■管理職の働きぶりにも注意を

経営者は、スタッフを束ねる管理職の働きぶりにも目を光らせなくてはなりません。中間管理職に問題があると「現場スタッフの声が経営者に届かない」、「セクションごとの連携がスムーズに進まない」などの問題が生まれ、現場スタッフに「経営が不透明な企業だ」と見限られてしまう恐れが高まります。

人事権を持つ経営者は、管理スタッフにすべてを一任してしまうのではなく、定期的に現場の声に耳を傾け、その働きぶりに目を配るようにして下さい。こうした努力が企業全体のチームワークを高め、定着力を向上させることにも繋がっていきます。

■新しい人材層に注目

中小企業が人手不足を補填する意味で新規採用を検討する際、優秀な人材を獲得することは、年々難しくなってきました。そこでこれまで対象としてこなかった層の雇用を、積極的に検討する必要があります。具体的には女性(男性)、主婦、そして外国人や障碍者などが挙げられるでしょう。さらに「60歳定年制度」が、いよいよ引き上げられる時代が到来しており、定年制度そのものを廃止する企業も登場しています。これまでは高齢者と考えられてきたシニア世代の活躍にも、頼らなければならない時代なのです。

■ITの力を活用する

これまでは「初期費用が高額」などの問題を抱えていたIoTやAIなどの最新技術は、クラウドなどを活用することでより一般的になり、普及のスピードを加速させています。業種によって「ウチにはまだ関係なさそうだ」と考える経営者がいるかもしれませんが、例えば経理業務ひとつを取っても、システムのIT化を推進することで効率がグンと高まります。スタッフ1人あたりの作業量を軽減させられるので、人手不足の解消には大いに役立つのです。経営者自身にIT知識が不足しているようであれば、周囲のスタッフや外部の助言者の声へ積極的に耳を傾け、導入を前向きに検討していきましょう。

 

倒産という最悪の事態を招く前に、できるだけの対策は講じておきたいもの。そのためには経営者自身が、これまで経験したことがない規模の人手不足という問題へ、正面から向かい合う必要があります。

何よりも大切なのは「人材こそが企業の財産である」という認識。スタッフひとり一人を尊重し、全員が気持ちよく働ける環境づくりを目指していくことで、中小企業を襲う人手不足問題を乗り越えていきましょう。

 

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

100年企業戦略研究所 ロゴ