「2025年の崖」まであと4年…中小企業に求められるDX
〜中小企業経営者のための注目の経営トピックス[第11回]

ここ数年、ビジネスシーンで「DX」という言葉がよく聞かれるようになりました。しかしその推進のためには、DX本来の意義をしっかりと理解しておく必要があります。

メディアでも注目されている企業経営に関するトピックスを解説する本連載。今回は中小企業においても急務と言われている「DXの推進」について考えていきます。

新たなビジネスモデル創出に必要!DXの基礎知識

DXとは、デジタルトランスフォーメーション「Dijital Transformaition(デジタルトランスフォーメーション)」の略称で、TransをXと省略する英語圏の慣例からきています。

経済産業省ではDXを以下の通り定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

簡単にいうと「ITの活用を通じて、製品・サービス、手法、企業の活動やあり方などをより良くし、企業の競争優位性を確立すること」を意味します。

最近、よく耳にするようになったDXですが、その概念は2004年にスウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマン氏が「ICT(情報通信技術)の浸透が、世界中の人々の生活を、より良い方向に変化させる」と提唱したことから始まっています。

「IT化=DX」ではなく、IT化は「業務効率化などのために情報化やデジタル化を進めること」だったのに対し、DXは「IT化を手段として活用し、変革を進めること」という違いがあります。

経済産業省が懸念する「2025年の崖」とは

経済産業省は2018年に『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』を発表しました。

同省は「2025年までに国内企業のDXがスムーズに進まないと、国際的競争力の低下や経済停滞が生まれ、2025年~2030年の間に最大12兆円の経済損失が生じる」と推定しています。これが「2025年の崖」です。

同レポートでは、DXを推進しなければ、既存の基幹システムやソフトウェアなどが時代遅れの「レガシーシステム」となり、古い技術を扱える人材の不足から、保守費が高額になると指摘しています。

また既存システムは古いプログラミング言語で書かれていることがあり、そのプログラミング言語を扱えるエンジニアの多くは、2025年までに定年を迎えます。そうなると既存システム全体を把握できなくなり、データの喪失やブラックボックス化など、自社の財産を失うリスクも出てきます。創業年数が長い企業のほうが既存システムを使い続けているケースが多く、DXの推進にも時間がかかると指摘されています。

中小企業もDXに乗り遅れられないワケ

中小企業経営者もDXを自社の課題として真剣に検討する必要があります。その理由を以下に紹介していきましょう。

■技術革新から取り残される

今後、多くの企業が労力と費用をかけ、システム刷新を実現させていくでしょう。その流れに取り残されてしまうと「大手取引先との連携がスムーズに行えない」など、中小企業の存続に関わる問題が発生します。また人力に頼る非効率的な業務は、長期的に見て中小企業の生産性を、大きく低下させます。

■優秀な人材が確保できなくなる

自社システムの刷新を怠ると、最新のIT技術を学んだ人材の採用はどんどん難しくなっていきます。DXは人材確保の点においても大きなターニングポイントになるのです。

■セキュリティ対策が機能不全に

ウイルスなどの脅威は、ITの技術革新とイタチごっこの進化を遂げています。旧態依然のシステムを使用し続けていると、いずれ最新のセキュリティ対策が導入できなくなるため、取引先まで被害の及ぶトラブルを招きやすくなります。

DX推進が中小企業にもたらすメリット

DXは中小企業に非常に大きなメリットをもたらします。

まず最新システムを活用することで人手のかかる煩雑な作業が減少し、業務効率や人材不足の問題が改善されます。そこで浮いた時間をビッグデータ分析に充てることで、新たなビジネスモデル創出の可能性は高まっていくでしょう。

また製造・物流業界では、DXを前倒しし、AIを活用した自動化による工場のオペレーション変革を推進する動きが出ています。コロナ禍においては感染リスクの低減になるうえ、災害などの緊急事態時にリモートアクセスにより、事業継続や復旧を図ることにもつながるでしょう。

中小企業がDXを推進するには

ここまでの内容を一読し「DXを推進するにはどのくらいの費用がかかるのだろう……」と不安を感じる中小企業経営者は多いでしょう。以下にその流れについて、紹介していきます。

■低コストの実現を目指す

サーバーや通信回線など、必要な環境を自社施設内に備えてシステムを構築・運用している場合、DXを進めるためには多くの費用がかかります。

そこで注目したいのが、IT関連のベンダー企業が提供しているクラウドシステムです。クラウドはデータベース、ストレージ、アプリケーションなどの機能を利用できるため、蓄積したビッグデータなどの重要情報を、一元管理することが可能。また最新のセキュリティ機能も備えているので、安心感が高くなっています。

利用料金は機能や契約内容などで変わりますが、従量課金もあり、月額数万円からでも導入可能なので、旧システムから顧客データなどの移行を検討すると良いでしょう。

■推進の流れ

中小企業がDXを推進する際は、上記のようにクラウドなどを活用し、業務に必要な情報、データのペーパーレス化を定着させます。そのうえで、社内の各部門が常時共有可能な基盤として、機能させていくことになります。

スタッフはデータを分析し、各部門での新たな事業や施策創出に役立てます。担当業務を可能な限り共有することで、一人ひとりの負担軽減に繋げていくと良いでしょう。

実践の過程において問題が生じた場合は改善を重ね、一連のワークフローをブラッシュアップしていきます。

■活用したい助成金

業種によっては、DXの推進にあたり多額の設備投資を必要とする中小企業もあります。そうしたケースでは、国が提供する補助金や助成金を活用すると、活路が開けることもあります。

・IT導入補助金
独立行政法人中小企業基盤整備機構と経済産業省監督のもとに運用されており、中小企業と小規模事業者が対象。ITツール導入に必要な費用の1/2(最大450万円)を補助。
・ものづくり補助金
中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施。中小企業・小規模事業者が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援。
・キャリアアップ助成金
厚生労働省が提供。非正規雇用労働者を正規雇用労働者として処遇改善した際、支給対象となる。企業内のDX推進で人事に影響があった場合も対象となる。

 

経済産業省が指摘する「2025年の壁」を回避するためにも、企業のDX推進は欠かせません。それは中小企業においても同様。コロナ後のニューノーマルに対応していくためにも、上記の助成金などを活用しながら、DXを推進していきましょう。

 

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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