100年企業レポート vol.07 香川編
目次
はじめに
日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。
1.香川県の100年企業に関する分析
うどんの生産量、消費量ともに日本一を誇り、うどん県として知られる香川県。気候や土壌が小麦の栽培に適していたことに加え、うどんの出汁に使用される塩としょう油の生産が盛んだったことから、うどんが香川県に根差したと考えられている。
香川県の100年企業数は、414社であり、全国30位である。
香川県は、うどんだけでなく工芸文化も根強い。国の伝統的工芸品となっている「香川漆器」や 「丸亀うちわ」をはじめ、数多くの伝統的工芸品があり、現在37品目に渡る。いずれも生活の必需品となる道具を職人が手作業で作っており、時代の変化に合わせて長く愛され続けるための工夫を行っている。
本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、香川県の特性を分析した。
働き世代や働き先が少ないものの、
100年企業輩出率は平均を上回る
日本一面積が小さい香川県は、四国の玄関口として政治・経済の中枢を担っている。人口減少が進み、働き世代(生産年齢人口数)や働き先(事業所数)が少ないものの、ひたむきに事業を継続する企業が多く、『100年企業輩出率』が高い。人口減少対策として、雇用の創出や若者の定住促進に県として取り組んでおり、雇用環境は良好である。
相続税課税割合が四国4県の中では圧倒的に多く、もう少しで大阪に匹敵するくらいの割合となっている。
2.香川県の100年企業データ
①創業年は『明治後期』が最多
創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比43.2%であった。次いで『大正以降』の22.7%、『明治前期』の20.7%、『江戸時代』の13.1%の順である。
江戸時代は塩・綿・砂糖(和三盆)の生産で栄え、原料の塩が豊富であった事からしょう油製造が盛んであった。明治になると製糖業や製塩業が衰退し、その救済策として行った手袋製造をきっかけに繊維業が栄えていく。大正以降に貸事務所業が多いのは、時代の変化に対応して本業から業態変化をしてきたためと考えられる。
②創業年TOP5
香川県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の波多野塗料株式会社は、全国で82位となっている。
③市町村別は『高松市』が最多
市町村別100年企業数では高松市が157社で最多であった。
1位の高松市では、『貸事務所業』が7社と最も多く、次いで『石工品製造業』が6社、『漆器製造業』が5社の順である。
2位の丸亀市は、100年企業数39社であり、業種別に見ると『オフセット印刷業(紙)』、『その他の産業機械器具卸売業』、『他に分類されないその他の卸売業』の3業種がそれぞれ3社である。
3位の観音寺市は、100年企業数37社であり、業種別に見ると『水産練製品製造業』が3社と最も多く、次いで『めん類製造業』、『金属プレス製品製造業』、『生鮮魚介卸売業』、『石油卸売業』の4業種がそれぞれ3社である。
④産業は『卸売・小売業、飲食店』が最多
産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が204社(構成比49.3%)と最も多かった。次いで、『製造業』107社(同25.8%)、『サービス業』30社(同7.2%)の順である。
香川県では、食料品関連産業の歴史は古く、長期に渡り蓄積された発酵技術や品質・鮮度保持技術等はトップレベルとされており、食料品関連の100年企業も多い。
⑤業種は『貸事務所業』が最多
業種別では、『貸事務所業』が16社で最多であった。本業が好調時に不動産を取得し、その後本業が縮小したケースがほとんどである。『貸事務所業』は東京をはじめとする大都市で多い傾向があり、四国では香川県のみ『貸事務所業』がトップであった。
2位は『しょう油等製造』が12社であった。香川県では温暖で降雨量が少ない気候を生かし、製糖業や製塩業が盛んであり、しょう油の原料となる塩が豊富であったことから、しょう油製造が多い。
「うどん県」としてすっかり定着した香川県、もちろん『めん類製造』も7位に入っている。
⑥資本金は『5千万円未満』が約8割
資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比55.1%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が27.0%、『5千万円以上~1億円未満』が4.8%の順である。
資本金トップは株式会社百十四銀行(業種:普通銀行)が373億円。以下、株式会社タダノ(業種:建設機械・鉱山機械製造業)が130億円、株式会社穴吹工務店(業種:建物売買業)が25億円の順であった。
上位10社のうち製造業が4社、金融業と運輸業が各2社であった。
⑦従業員数は『10人未満』が6割超え
従業員別では、『4人以下』が構成比38.1%と最も多かった。次いで、『10~49人』が26.3%、『5~9人』が23.0%の順である。10人未満で6割を超える。
香川県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社百十四銀行、株式会社タダノの2社が従業員1,000人を超える。
⑧売上高は『1億円未満』が最多
売上高別では、『1億円未満』が構成比49.5%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が35.9%、『10億円以上~100億円未満』が11.6%の順である。
売上高上位10社のうち、卸売・小売業が5社と最も多く、次いで製造業が3社であった。
⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は5社
香川県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は28社であり、構成比では全国13位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は5社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは倉庫業や鉄道業、製造業など様々であるが、本業以外で貸事務所業を行っている企業は少ない。これは本業で貸事務所業を行っている企業が多いことも理由としてあげられる。
データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。
※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。
※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。
※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。
※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
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著者
株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所
1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。