100年企業レポート vol.42 岐阜編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

岐阜県の100年企業に関する分析

岐阜の街並み

日本のほぼ真ん中に位置し、山と川に囲まれた岐阜県は、気候をはじめ南北で大きく特徴が異なる。北部に位置する飛騨地方では、3,000m級の北アルプスに囲まれ、冬は氷点下になるほど寒い。世界遺産にも登録された「白川郷」、古い町並みを堪能できる「さんまち通り」など、歴史的建造物が多く現存する。南部に位置する美濃地方では、長良川がもたらす清らかな水と水運に恵まれている。古くから水を活かした繊維業をはじめ、美濃焼、和紙などの伝統産業など多彩なジャンルのものづくりが盛んである。

岐阜県の100年企業数は、652社であり、全国20位である。

織田信長は安土城に移るまで、岐阜を拠点にしていたことからゆかりがあるものが多い。「岐阜」と命名したのは信長である。中国の「周の文王、岐山より起り、天下を定む」という故事にならって地名を考えたといい、天下統一を目指す信長は「岐阜」の名称を選んで、稲葉山城下付近の「井口」を「岐阜」に改めたとされている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、岐阜県の特性を分析した。

大都市へのアクセスがよく地価が高いため
『相続税課税割合』も高い

岐阜県は日本のほぼ中央に位置しており、日本の人口重心(人口の1人1人が同じ体重と仮定して、日本の人口が全体として平衡を保つことのできる点)は岐阜県関市にある。古くからものづくりが盛んで、製造業が中心的な産業であるが、最近では建設業やサービス業などで人手不足の状況が続き、『有効求人倍率』が高くなっている。
東海道線で名古屋へ約20 分で行くことができ、新幹線で大阪や東京などの三大都市へのアクセスがよい岐阜市などのエリアは、地価も高い傾向にある。地域差はあるものの、『相続税課税割合』が高い要因であると考えられる。

2.岐阜県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比41.9%であった。次いで『大正以降』の26.8%、『明治前期』の22.0%、『江戸時代』の8.9%の順である。
現在の岐阜市である岐阜町は、江戸時代に幕府の直轄地として管理され、傘や絹織物などの特産品や酒屋、米屋などが立ち並ぶ商工業の中心地であった。明治時代になると、水運で栄えた木曽川流域などで、都市部に電力を供給するための発電所やダムの建設のため、建設業が発展した。

②創業年TOP5

岐阜県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の鍋屋バイテック株式会社は、全国で55位となっている。

③市町村別は『岐阜市』が最多

市町村別100年企業数では岐阜市が136社で最多であった。
1位の岐阜市では、『土木工事業』、『木造建築工事業』、『他に分類されないその他の卸売業』、『貸家業』の4業種がそれぞれ4社と最も多い。
2位の大垣市は、100年企業数65社であり、業種別に見ると『呉服・服地小売業』が4社と最も多く、次いで『土木工事業』、『石灰製造業』の2業種がそれぞれ3社である。
3位の多治見市は、100年企業数45社であり、業種別に見ると『陶磁器・ガラス器卸売業』が6社と最も多く、次いで『食卓用・厨房用陶磁器製造業』、『その他の建築材料卸売業』、『日本料理店』の3業種がそれぞれ3社である。

④産業は『製造業』が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が303社(構成比46.5%)と最も多かった。次いで、『製造業』182社(同27.9%)、『建設業』82社(同12.6%)の順である。
古くからものづくりが盛んな岐阜県は、刃物、紙、陶磁器など、日本を代表する伝統工芸を数多く生み出してきた。さらに現在では、伝統的な地場産業に加え、輸送用機械や電気機械、一般機械などの機械関連産業を中心とした独自の技術を誇る製造業が集積し、発展している。

⑤業種は『清酒製造』が最多

業種別では、『清酒製造』が25社で最多であった。山々に囲まれた岐阜県は、「木曽三川」と称される木曽川、長良川、揖斐川、さらには飛騨川などの多くの河川があり、良質な水に恵まれている。古くからその良質な伏流水を利用した酒造りが盛んに行われてきた。『清酒製造』25社は全国8位であり、全国的に見ても多い。
2位は『呉服・服地小売』が20社であった。江戸時代に京都西陣から桟留縞織りの技術が伝わり、「美濃縞(みのじま)」がつくられ代表的な織物となった。その後明治時代の産業振興により、大垣市には数多くの繊維工場が建設され、「繊維の街」となった。戦後には、岐阜市に軍服や古着を売る繊維問屋街ができたことを背景に、アパレル産業が盛んになったのである。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比64.1%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が16.8%、『5千万円以上~1億円未満』が4.3%の順である。
資本金トップはイビデン株式会社(業種:電子回路基板製造業)が641億円。以下、国立大学法人岐阜大学(業種:大学)が529億円、神岡鉱業株式会社(業種:鉛・亜鉛鉱業)が46億円の順であった。
上位10社のうち製造業と建設業がそれぞれ2社である。

⑦従業員数は『10人未満』が5割超え

従業員別では、『10~49人』が構成比36.1%と最も多かった。次いで、『4人以下』が34.7%、『5~9人』が19.4%の順である。10人未満で5割を超える。
岐阜県の100年企業の多くは小規模企業であるが、イビデン株式会社は従業員3,000人を超え、国立大学法人岐阜大学を含む4社が従業員1,000人を超える。

⑧売上高は『1億円以上~10億円未満』が最多

売上高別では、『1億円以上~10億円未満』が構成比47.1%と最も多かった。次いで、『1億円未満』が38.3%、『10億円以上~100億円未満』が11.7%の順である。
売上高上位10社のうち建設業が3社、製造業と医療・福祉業がそれぞれ2社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は8社

岐阜県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は42社であり、構成比では全国15位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は8社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは、卸売・小売業が4社と最も多い。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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