ユニコーン企業が注目を集めているが…日本発「ゼブラ企業」が世界を変える⁉〜中小企業経営者のための注目の経営トピックス[第1回]

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テクノロジーの進化により、経営環境は加速度的に変化する時代になっています。企業規模に関わらず、経営者は最新の情報を手に入れ、経営に取り入れていくことの重要性がさらに高まっているといえるでしょう。

本連載では、メディアでも注目されている企業経営に関するトピックスを解説していきます。今回は、世界が注目する「ユニコーン企業」と、それに相対するワードとして取り上げられ始めた「ゼブラ企業」についてみていきます。

世界を席巻する「ユニコーン企業」…称賛の裏側

創業年数が浅いながらも多額の評価額を得ている「ユニコーン企業」。この名称が初めて使われたのは2013年ごろ、米国のベンチャーキャピタリストのアイリーン・リー氏が発案したといわれています。

ユニコーン企業といわれるには、以下の4つの条件があります。

1.企業価値(評価額)が10億ドル以上であること。
2.起業10年以内であること。
3.非上場であること
4.テクノロジー企業であること

4つ目の条件は絶対的なものではありませんが、昨今、急成長を遂げるベンチャー企業がテクノロジー分野の企業であることから、ユニコーン企業の条件に含まれることが多いようです。

米国のCBインサイツ社の調べによると、世界にあるユニコーン企業は394社(2019年9月調査時点)となります。内訳を見ると、米国151社、中国82社、イギリス16社の順です。近々上場の予定もあるので条件から外れる可能性がありますが、宿泊シェアサイトのAirbnb社やタクシー配車サービスのUber社はユニコーン企業の代表格です。

ユニコーン企業は、資金調達を繰り返し、急成長を実現させることを最優先します。そうして圧倒的な存在感を放つようになったユニコーン企業に対しては、既存の大企業も投資や協業を追い求めるようになり、世界的にユニコーン企業を称賛する方向に進んでいきました。

一方で、ユニコーン企業に対して疑問を投げかける動きも出始めています。ユニコーン企業は事業拡大を優先するため、赤字であろうと、さらなる資金調達を行います。また社会的意義、社会的責任よりも、自社の成長や利益を優先させる傾向にあります。こうした経営姿勢は、社会的・倫理的に負の影響を社会に与えかねないと懸念されています。

このようなユニコーン企業至上主義に対し、いま一度冷静になり、企業が社会に対して果たす役割を見つめ直そうという動きが生まれ始めています。そこで登場したのが「ゼブラ企業」です。

永続的な成長を目指す「ゼブラ企業」の誕生

ユニコーン企業のアンチテーゼとして、最近では急成長を優先としないスタートアップ企業が注目されています。企業として利益追求をしながらも、他社との共存を重視する――。その経営姿勢を、白と黒、対極するものを合わせ持つ「ゼブラ(=シマウマ)」と重ねて「ゼブラ企業」と呼ばれるようになりました。

ゼブラ企業とはどのような企業を指すのでしょうか。ユニコーン企業と比べてみるとわかりやすいでしょう。

ユニコーン企業は、短期間で会社を成長させ、上場や企業・事業売却によって利益をあげることをゴールとします。そのため市場を独占し、自社の利益を優先します。事業拡大のために、多額の資金調達を繰り返し、あらゆる機会を活用し、リスクをとって投資を行っていきます。

一方ゼブラ企業は、自社の成長だけでなく、社会貢献も踏まえた持続的な成長を重視します。持続的という観点では一定規模で成長が止まることも良しとしますし、事業は独占的ではなく、他社と協力、共存をもって進めていきます。社会的な使命や企業として在るべき姿を追求することを目的に、必要な範囲で利益の創出と成長を目指すのです。

[図表1]キーワードで見る「ユニコーン企業」と「ゼブラ企業」

Zebras Unite資料を基に株式会社ボルテックス100年企業戦略研究所が作成

最近では、スタートアップのなかでも 「ユニコーン」ではなく「ゼブラ」を目指す企業が出始めています。クラウドファンディングのIndiegogo社や、手作りマーケットプレイスのEtsy社は、その代表格として知られています。

日本はユニコーン企業が少なく、育ちにくいと土壌であると言われてきました。先ほどお話しした世界にあるユニコーン企業394社(2019年9月調査時点)のうち、日本はわずか6社にとどまっています。そのため、いかに国内発のユニコーン企業を創出するかが課題とされています。

一方で、より良い社会を作り維持していくには、ゼブラ企業の存在も必須だという声も聞かれるようになりました。そもそも経営の本質は、会社を倒産させることなく経営を続けることです。持続的な成長企業であれば、会社は100年、200年と続いていきます。

ここで注目されるのが、日本の中小企業です。日本は世界的にみても老舗企業が多く、創業200年以上の企業は5,000社以上、創業1,000年以上を数える企業が21社もあります。日本の老舗企業で右肩上がりの成長を実現している企業は少なく、多くは一定の規模を保ち続けています。

一般的に、企業における顧客は、サービスや商品の競争力の低下などにより離脱していきます。その割合は、固定客が20%、残りは流動的な顧客と言われています。新規顧客を獲得し固定客にしていく努力を続けていかなければ、企業は消滅してしまうのです。つまり日本の老舗企業は、顧客を獲得し続ける企業努力や工夫をし続け、持続的成長を叶えてきたと言えるでしょう。

日本にはゼブラ企業が目標とする「持続的成長を実現している企業」がすでに数多く存在しています。最近はSDGsなども重視されてきていることから、ゼブラ企業の成長もますます重視されると思われます。今後、日本の中小企業がゼブラ企業の代表格となる可能性もあるかもしれません。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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