成長する音声コンテンツ…中小企業はどう活用すべきか? ~経営者こそ知っておくべき、マーケティングのトレンド[第1回]

「成長する音声コンテンツ…中小企業はどう活用すべきか? ~経営者こそ知っておくべき、マーケティングのトレンド[第1回]」のアイキャッチ画像

目次

企業活動においてマーケティングの重要性は誰もが知るところです。しかしその手法は日進月歩であり、時流にあわせ常に進化させなければなりません。

本連載では、経営者だからこそ知っておきたい、最新のマーケティング事情について焦点をあてていきます。今回は昨今、マーケティング手法として存在感が増している「音声コンテンツ」に焦点を当てていきます。

意外な成長を見せ始めた「新時代の音声メディア」

メディアのなかで、テレビは長らく圧倒的な存在感を誇示してきましたが、近年はインターネットに押され、衰退の気配が濃厚に表れています。

一方、テレビの前は音声だけを発信するラジオがメディアの主役でした。「現在もオフィス内でラジオを流している」という中小企業は意外に多く、現場スタッフはニュースや音楽、企業広告など、さまざまな情報を無意識に受け取っています。その強みは「何かをしながらでも耳を傾けられる」こと。テレビやネット動画のように、視覚を集中させる必要がありません。このため音声メディアは、さまざまなシーンで根強い需要を保ち続けています。

とはいえラジオは、テレビ同様、限られたプログラムしか用意していません。しかし昨今、広告主を気にせず自由に制作された番組を配信し、ユーザーに広範囲な選択権を与える音声メディアが続々と登場しています。その代表例を見ていきましょう。

[図表1]主な音声メディア

株式会社ICT総研の調査をもとにした推計によると、国内の定額制音楽配信サービス利用者数は約1,980万人(2018年末)。また2021年末には2,370万人に拡大する見通しのようです。

音声メディアの盛り上がりを受け、ワイヤレスイヤホンやスマートスピーカーなどの関連グッズの売上が上昇の一途を辿っている点も見逃せません。

デジタルオーディオアドの特徴と効果

定額制を中心に豊富なコンテンツを提供するデジタル音声メディアは、従来の音声メディアであるラジオにはない、新たなビジネスモデルを確立しました。コンテンツ内容や聴収選択はユーザー主導で、広告主に左右されない創造性を保っています。

しかしデジタル音声メディアにも、企業広告の入り込む余地はあります。たとえば定額制音楽配信サービスのなかには、曲と曲の再生の間に、数十秒の音声広告を挿入しているサービスも見られます。これらの広告は、新しいメディアの特性にちなみ「デジタルオーディオアド」と命名されました。ラジオで番組の途中に挿入される従来の音声広告との違いは、どこにあるのでしょうか。

■的確なターゲティング
SNSに表示される広告と同じく、デジタル音声メディアはあらかじめプラットフォームを通じ、ユーザーの年齢や性別、居住地域、そして嗜好などの属性情報を取得しています。このためラジオのように全視聴者へ同じ広告を届けるのではなく、クライアントが狙うターゲット層へ、的確に広告を届けることができます。

■完全再生率が高い
先述のように、音声は「ながら視聴」が可能です。このためユーザーは、視覚と聴覚を集中させて視聴する動画ほど、広告への抵抗を感じません。「90%以上」という説もあるほど、音声広告は完全再生率が高いのです。わざわざスキップボタンを押す面倒を選ぶより、甘んじて内容に耳を傾けてくれるのでしょう。
一方で「ながら視聴」が可能ということはデメリットにもなります。特に引っかかりもない内容だと、単に聞き流されてしまうリスクがあるからです。思わず耳を傾けてしまうようなフレーズや音楽を入れ込むなどの工夫が必要です。

■聴覚への訴求という挑戦
テレビ、雑誌、そして販促物と、広告にビジュアルはつきものです。しかしユーザーの聴覚にのみ訴えていくのが、デジタルオーディオアドの特性です。届けたい内容を音声のみでどのように表現するのか、その狙いが正しく機能した時、大きな効果を得られる可能性があります。
一方で、具体的なイメージは訴求しにくく、聴覚だけというのはデメリットにもなります。自社のホームページに誘導するよう工夫をしたり、動画と連動させたプロモーションを展開するなどすれば、イメージを明確化させることができるでしょう。

中小企業が音声メディアをマーケティングに活用するには

このようにデジタル音声メディアは、新しい広告出稿先として多くの企業から注目を集めています。株式会社デジタルインファクトが2020年3月に発表した市場調査によれば「2020年のデジタル音声広告市場は16億円の見通し、2022年以降は急速な市場拡大が進み、2025年には420億円規模になる」という予測が立っているほどです。

ポッドキャストの展開例

■株式会社リクルート
スタッフが仕事探しや学び方、食や美容といった、それぞれの専門分野について最新情報を語る『トレンドランナー』を配信中

■株式会社ECC
英語レッスン番組を配信

■サイボーズ株式会社
自己啓発に繋がるビジネス系番組を配信

日本ではまだまだ大企業での展開が中心ですが、海外では「自社でラジオ番組を持つ」という感覚で、企業の規模に関わらず採用されています。

ここで注目なのが、ポッドキャストは直接的に利益につなげるものではなく、事業や商品の認知拡大、ブランディング手法として活用されているという点です。自社のホームページや動画、パンフレットでは伝えられない細かいディテールを伝える手段として、音声だけという、逆にイメージをかきたてる方法が選択されているのです。価値ある情報を提供し、将来的に商品やサービスの購入へと繋げていくことを念頭においています。

ポッドキャストのコンテンツは、動画のように機材、撮影場所などに悩むことがないのもメリットです。予算的にも非常に安価で、無料アプリなどを駆使すれば、機材費等をかけることなく制作することも可能です。

テレビやラジオ、そして雑誌などのメディアへの出稿を前提とし、広告宣伝を考えてきた世代は、ポッドキャストの活用に対して「そんな地道な方法で効果があるのだろうか」と考えるかもしれません。しかし日常的にデジタル音声メディアを親しんでいる世代に対して、効果的な訴求方法として一考する価値はあるでしょう。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

経営戦略から不動産マーケット展望まで 各分野の第一人者を招いたセミナーを開催中!

ボルテックス グループサイト

ボルテックス
東京オフィス検索
駐マップ
Vターンシップ
VRサポート
ボルテックス投資顧問
ボルテックスデジタル

登録料・年会費無料!経営に役立つ情報を配信
100年企業戦略
メンバーズ