コロナ禍を乗り越えて「100年企業」を目指すために~アフターコロナを見据え、中小企業経営者は何をすべきか【第4回】

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コロナ禍の出口が見えない中、持続化給付金の申請は2021 年 2 月 15 日に締め切られました。このままでは、危機に直面する中小企業がさらに増えると見込まれています。しかし廃業を踏みとどまり、再生の道を模索する企業も数多くあります。

アフターコロナを見越して、いま中小企業経営者ができることとは?そして100年企業を目指すためには?企業再生のスペシャリストとして活躍する坂本利秋氏に伺いました。

前回までの連載はこちら
第1回「2021年、中小企業経営者に求められる資質が激変する」
第2回「コロナ禍で危機に直面する中小企業…「企業再生」を実現するには?」
第3回「維持するのか、手放すべきか…中小企業と不動産の関係」

コロナ禍以降の中小企業経営の見通し

新型コロナウイルスの猛威が吹き荒れた、2020年。年明け早々に2度目の緊急事態宣言が発令されるなど、その影響は2021年も続いています。この事態の収束後、果たして日本経済や中小企業の状態は元に戻るのでしょうか?

坂本 「コロナ禍以前の状態に戻すのは、非常に大変。相当な年数を要すると思います。持ちこたえられずに経営の継続を断念する会社も、増えるでしょうね。ですから中小企業の経営者たちは経営環境が元に戻ることを期待するのでなく、『自分たちから変わろう』という姿勢を持たなくてはなりません」

政府による手厚い資金繰り政策も終わり、中小企業の経営者は事業存続に向けシリアスな決断を迫られていると、坂本氏は言います。

坂本 「繰り返しになりますが、コロナ禍で苦しむ中小企業の資金繰り支援を目的とした給付金は終わりを告げました。2021年以降は、そのような支援策は期待できません。その代わり創設されたのが『事業再構築補助金』です。予算は約1兆1,000億円と超大型の補助金と言えます。『事業を立て直し、黒字化できる企業は生き残っても良い。もしそれができないのであれば、退場してください』という、いわば政府からの最後通告なのです。赤字が続く中小企業への支援は絶たれ、追加融資を受けることもできません。政府は、ダメな企業には退場してもらうという厳しい姿勢の一方で、経営者個人に関しては自宅を守る方法の整備が進んでいます。これまでは、会社破綻時には連帯保証を負う経営者の自宅も人手に渡るのが一般的でしたから、経営者にとっては朗報でしょう。

旧態依然のビジネスモデルでは、アフターコロナの社会を生き残れない……坂本氏の厳しい予測は続きます。

坂本 「リモートワークやZoom会議などの浸透ひとつを取ってみてもわかることですが、ビジネスマンの行動様式は新型コロナを経て、変化しています。それが固定化されていくと、以前の行動様式に基づいたビジネスが成立しづらくなっていくのです。環境への順応はマスト。変わらなければ、後がありません。コロナ以前から苦しい経営を続けてきた中小企業にとっては、2021年が最後のチャンスとなるでしょう」

いま中小企業経営者ができること、すべきことは

「今後も経営を続けていきたい」。そんな明確な意志を持つ中小企業の経営者は、いま何をすべきなのでしょうか。

坂本 「政府が中小企業の支援策として給付する『事業再構築補助金』への申請を行う過程でビジネスモデルの変革に着手し、計画を実行すること。これに尽きると思います。現在の事業の中から黒字化できるポイントを探し、赤字経営からの脱却を図らなくてはなりません」

さらに坂本氏は、M&Aの可能性についても言及します。

坂本 「新型コロナの影響で『M&Aの件数が少なくなり、価格も下がっている』という声を聞きますが、実際はそうでもありません。一時期、大企業や中堅企業に見られた『何でも買いたい』という動きこそ減りましたが、依然として買収に積極的な企業は多く、売買価格も低下していないのです。株価や不動産が高止まりしていることからもわかるように、『金余り』の状態が続いています。また政府も、M&Aを後押しする補助金を用意していますので、もし自力での経営に行き詰まりを感じているのであれば、このタイミングのM&Aは選択肢として有効だと思われます」

とは言え、どうやっても黒字化が見込めない企業は再生できないし、M&Aもできない……、厳しいですがその前提は揺るがないと、坂本氏は言います。

坂本 「例外として赤字経営の企業でも、価値のある特許を保有するなど特別な強みを持っていれば、M&Aが成立する可能性はあります。しかしそうでなければ、何とかして現在の業務の中に黒字化できる領域を探すしかありません。黒字化した上であれば、資本性ローンや債務カットの適用の可能性が高まります。

コロナ禍を教訓に、100年企業を目指すには

最後に「この苦境を乗り越え、100年企業を目指すにはどうすべきなのか」という質問をぶつけてみました。

坂本 「強みを磨きつつ環境変化に順応する……それに尽きます。コロナ禍に見舞われ大きく変化した日本の社会には、もはや『中小企業は赤字経営でも、何とか大丈夫と』という暗黙の了解が、通用しなくなってしまいました。しかし我々は10年に1回程度の割合で、それまでの常識を覆すような大きな出来事に、直面してきています。東日本大震災のような自然災害、そしてテクノロジーの大改革といった出来事はその最たる例ですが、現在まで存続している中小企業は『変化を乗り越えるだけの強さを持っていた』ということになるのではないでしょうか。

今後もそうした出来事は必ず訪れると理解したうえで自社の強みを磨き、変化に柔軟に対応しながら方向調整していく。そのたゆまぬ努力こそ、100年企業に繋がる道のりとなるはずです。100年は1年1年の積み重ね。恐らく今後2~3年のうちに、相当数の中小企業は淘汰されていくことになるでしょう。『まず、ここ数年を生き残る』という強い気持ちで、活路を見出していってほしいと思います」

お話を聞いた方

坂本 利秋 氏

認定事業再生士(CTP)/合同会社スラッシュ 代表

東京大学大学院工学系研究科卒業。日商岩井(現双日)にて、数千億円の資産運用を経験。その後、ITベンチャー企業に転身。国内初SNS企業の財務執行役員に就任し、その後上場企業に売却、30代で三井物産子会社の取締役に就任し企業成長に貢献、グループ売上高1,000億円の上場IT企業の経営管理部長として企業再生を行う。 中小企業の経営者のためだけに徹底的に支援したいという思いから、2009年より中小企業の売却、事業再生支援を行う。中小企業の再生人材不足が危機的な状況にあることから、2020年より企業再生人材の養成講座を開講する。

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