コロナによる中小の飲食・宿泊業の資金繰り悪化と負債増
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日本経済新聞が中小企業の信用情報を管理する日本リスク・データ・バンク(RDB)(注1)の協力を得て、中小企業2万社の資金繰りを調査したところ、新型コロナウイルス禍で中小の飲食・宿泊業の資金繰りが悪化しているという記事が2021年3月30日の日本経済新聞に掲載されました。
「銀行の口座情報から資金の流れを調べたところ、収入が不動産賃料などの支出より少ない支出超過の飲食・宿泊業は1月時点で6割と1年前に比べて倍増した」とあり、運転資金を賄えず、銀行借り入れなどに頼っている状況が明らかになりました。
中小企業全体で見ると、コロナ後とコロナ前で、支出超過は4割程度でほぼ安定的に推移しています。娯楽サービス業が3割前後から4割半ばまで悪化していますが、これに対して、飲食・宿泊業の悪化が顕著で、過去一年で3割半ばから6割超のレベルにまで急速に悪化しています。
足元、中小企業の景況感や業況は、宿泊・飲食サービス、小売、生活関連サービス・娯楽、医療・福祉といった業種で悪化していますが、政府や金融機関の積極的な資金繰り支援策(注2)が機能している結果として、バブル崩壊やリーマンショック時のような過去に資金繰りがひっ迫した時期に比べて、目立った倒産の増加は見られていません。
このため、法人向け貸出残高はここ20年で最大の伸びを見せていますが、今後、新型コロナ禍の収束の見込みがまったく立っていない中で、企業のバランスシートがどこまで負債増に耐えられるかという点も要注意です。
(注1)
日本リスク・データ・バンク
https://www.riskdatabank.co.jp/
(注2)
政府や金融機関の積極的な資金繰り支援策
https://www.meti.go.jp/covid-19/index.html
【参考】
坂口純也「コロナ禍での中小企業の資金繰り動向 資金繰りとバランスシートの頑健性を点検」(2021/01/19), 大和総研 https://www.dir.co.jp/report/research/capital-mkt/securities/20210119_022025.html(2021/04/11検索)
谷口栄治「コロナ対応の中小企業向け資金繰り支援策の効果と今後の課題」(2020/10/19) ,
日本総研 https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=37456(2021/04/11検索)
「今使える!新型コロナ関連の資金繰り支援策まとめ【2021年1月版】」(2021/01/12),
補助金ポータル https://hojyokin-portal.jp/columns/corona-shikinguri-matome(2021/04/11検索)
著者
堀内 勉
一般社団法人100年企業戦略研究所 所長/多摩大学大学院経営情報学研究科教授、多摩大学サステナビリティ経営研究所所長
多摩大学大学院経営情報学研究科教授、多摩大学サステナビリティ経営研究所所長。東京大学法学部卒業、ハーバード大学法律大学院修士課程修了、Institute for Strategic Leadership(ISL)修了、東京大学 Executive Management Program(EMP)修了。日本興業銀行、ゴールドマンサックス証券、森ビル・インベストメントマネジメント社長、森ビル取締役専務執行役員CFO、アクアイグニス取締役会長などを歴任。
現在、アジアソサエティ・ジャパンセンター理事・アート委員会共同委員長、川村文化芸術振興財団理事、田村学園理事・評議員、麻布学園評議員、社会変革推進財団評議員、READYFOR財団評議員、立命館大学稲盛経営哲学研究センター「人の資本主義」研究プロジェクト・ステアリングコミッティー委員、上智大学「知のエグゼクティブサロン」プログラムコーディネーター、日本CFO協会主任研究委員 他。
主たる研究テーマはソーシャルファイナンス、企業のサステナビリティ、資本主義。趣味は料理、ワイン、アート鑑賞、工芸品収集と読書。読書のジャンルは経済から哲学・思想、歴史、科学、芸術、料理まで多岐にわたり、プロの書評家でもある。著書に、『コーポレートファイナンス実践講座』(中央経済社)、『ファイナンスの哲学』(ダイヤモンド社)、『資本主義はどこに向かうのか』(日本評論社)、『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』(日経BP)
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