経営者にとっての1つの目標!会社をIPO(新規株式公開)させるメリット/デメリット
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※百計オンラインの過去記事(2018/08/13公開)より転載
2018年6月19日、話題の「ユニコーン企業」メルカリが東証マザーズに上場しました。起業した人間にとって、上場は目指すべきゴールの一つといえるでしょう。今回は、日本語では「新規公開株」や「新規上場株式」と呼ばれるIPO(Initial Public Offering)のメリットやデメリットについて見ていきましょう。
会社を上場させるメリット
会社を上場させるメリットとしては、主に以下の点が挙げられます。
・会社の知名度、社会的信用が向上する
上場が決まると、新聞や雑誌を始めとするさまざまなメディアへの露出が増え、会社の知名度向上につながります。また、上場できるということは会社の財務状況や業績、将来性について社会的なお墨付きが得られていることです。したがって、上場企業になることは、会社の社会的信用を高めることにもつながるのです。
・資金の調達がしやすくなる
社会的な信用が高いということは、それだけ資金の調達をしやすくなるということです。また、株式を一般に公開することで資金調達のソースを多様化させ、経営基盤を安定させることにもつながります。
・経営体制の健全化
社会的に信用ある企業であるためには、法令遵守や内部統制を実現し、コーポレート・ガバナンスに務める必要があります。上場を目指す過程で改善プロセスを実行することで、経営体制の健全化につながるのです。
・従業員のモチベーションが向上する
スタートアップとしてともに会社を率いてきた仲間も、「上場」という一つのゴールを達成することで、事業や業務に対するモチベーションがアップするでしょう。さらに、従業員持ち株会の結成や、従業員や取締役に対してあらかじめ決まった価格で将来株式を買い取る権利を与える「ストックオプション」の導入で、働く意欲も高まります。また、「上場」というブランドステータスを手に入れることで、優秀な人材の確保にもつながるでしょう。
・創業者の利益が確保できる
上場後、創業者が保有している自社株式を売り出すことで利益を得ることができます。これまで会社を引っ張ってきた苦労の報奨でもあるのです。
会社を上場させるデメリット
株式の上場にも、メリットがあればデメリットもあります。
・株式公開の準備に時間やコストがかかる
上場にあたっては、下記の費用など多大なコストがかかります。
・証券取引所に対する上場審査料・手数料
・有価証券届出書・目論見書などの作成・印刷費用
・証券事務代行手数料
・主幹事証券会社への手数料(コンサルティングフィー、引受け手数料)
・監査報酬(直前前期、直前期の2期間)
・外部コンサルタントに対する報酬など
このほか、常勤監査役や内部監査人の選任、取締役会や監査役会の設置、管理部門の強化などにもコストが発生します。小規模な会社でも、上場までに最短でも3年前後、コストは数千万円かかるともいわれています。
・上場維持費用・管理コストがかかる
上場すればすべて終わりではなく、その後も上場企業として社会的信用を担保するために、さまざまなコストを支払っていかなくてはなりません。上場後にかかる費用としては、証券取引所に対する年間上場料、監査報酬、株主名簿の管理料、株主総会の運営費用などがあります。
・業績や企業価値の向上、社会的責任など、会社経営へのプレッシャーが大きくなる
上場企業は、有価証券報告書や事業報告書などで、会社の経営や業績に対する事実を公表する義務があります。時には不都合な事実も公表しなくてはならず、会社経営へのプレッシャーが大きくなります。業績・企業価値アップへの圧力が強まり、長期的な視野での経営がしにくくなる可能性もあるでしょう。
・敵対的買収のリスクが増える
株式を自由に売買できるということは、敵対的な買収のリスクが増えるということでもあります。オーナーの発言権が希薄になる株式公開でより多くの株主を得るということは、多くの株主から広く意見を聞かなくてはならないということでもあります。結果、経営に対するオーナーの発言権が希薄になることもあるでしょう。
上場を目指すことは、長期的な経営にプラス
株式上場はメリットばかりではなく、さまざまなコストやデメリットも発生します。しかし、上場を目指す過程でコーポレート・ガバナンスが充実し、効率的な内部管理体制を確立することは、長い目で見たら会社にプラスとなることは間違いありません。
著者
株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所
1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。