100年企業レポート vol.01 全国編 

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

全国版(本レポート)では選抜された6指標についてクラスター分析を行い、各クラスターについての特性や傾向を明らかにする。その後、都道府県別レポートにて、各都道府県のクラスターと構成している要素について、より詳しく考察することとする。

1.100年企業数に関する統計的分析

100年企業数は『事業所数』、『商業地平均価格』、『生産年齢人口数』と相関が高い

全国の100年企業数を目的としたステップワイズ法に沿った研究を行い、6つの指標グループから最も相関が高い指標を選抜し、100年企業数に影響を与える要因を明らかにした。

①『100年企業輩出率』は100年企業数と相関が低い
100年企業に関するデータである『100年企業輩出率』、『直近売上高(各都道府県平均)』、『不動産業割合』、『上場企業割合』の4指標で重回帰分析をそれぞれ行った結果、最も相関が高いといえる指標は『100年企業輩出率』であった。
しかし散布図を見ると『100年企業数』と『100年企業輩出率』の相関は高いとはいえない。

【図表1】100年企業輩出率と100年企業数

【図表1】100年企業輩出率と100年企業数

②『生産年齢人口数』は100年企業数と相関が高い
人口に関するデータである『生産年齢人口数』、『生産年齢人口割合』の2指標で重回帰分析をそれぞれ行った結果、最も相関が高いといえる指標は『生産年齢人口数』であった。
散布図を見ると『100年企業数』と『生産年齢人口数』の相関は高い。

【図表2】生産年齢人口数と100年企業数

【図表2】生産年齢人口数と100年企業数

③『有効求人倍率』は100年企業数と相関が高い
雇用に関するデータである『有効求人倍率』、『完全失業率』の2指標で重回帰分析をそれぞれ行った結果、最も相関が高いと言える指標は『有効求人倍率』であった。
散布図を見ると『100年企業数』と『有効求人倍率』の相関は高い。

【図表3】有効求人倍率と100年企業数

【図表3】有効求人倍率と100年企業数

④『商業地平均価格』は100年企業数と極めて相関が高い
土地・住宅に関するデータである『住宅地平均価格』、『商業地平均価格』、『工業地平均価格』、『住宅着工件数』の4指標で重回帰分析をそれぞれ行った結果、最も相関が高いといえる指標は『商業地平均価格』であった。
散布図を見ると『100年企業数』と『商業地平均価格』の相関は極めて高い。

【図表4】商業地平均価格と100年企業数

【図表4】商業地平均価格と100年企業数

⑤『事業所数』は100年企業数と極めて相関が高い
産業に関するデータである『事業所数』、『企業倒産件数』の2指標で重回帰分析をそれぞれ行った結果、最も相関が高いと言える指標は『事業所数』であった。
散布図を見ると『100年企業数』と『事業所数』の相関は極めて高い。

【図表5】事業所数と100年企業数

【図表5】事業所数と100年企業数

⑥『相続税課税割合』は100年企業数と相関が高い
相続税に関するデータである『相続税課税割合』、『被相続人一人当たりの相続税額』の2指標で重回帰分析をそれぞれ行った結果、最も相関が高いと言える指標は『相続税課税割合』であった。
散布図を見ると『100年企業数』と『相続税課税割合』の相関は高い。

【図表6】相続税課税割合と100年企業数

【図表6】相続税課税割合と100年企業数

2.クラスター分析

クラスター分類
選抜された6指標にもとづき、クラスター分析を行い下記7クラスターに分類し、指標別偏差値と100年企業の業種・貸事務所業の状況の観点から特徴をまとめた。

【図表7】クラスター分類

クラスター 都道府県
1 1 東京都
2 4 神奈川県・愛知県・京都府・大阪府
3 4 埼玉県・千葉県・兵庫県・福岡県
4 10 宮城県・富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・奈良県・岡山県・広島県・香川県
5 10 福島県・茨城県・栃木県・群馬県・新潟県・長野県・三重県・山口県・愛媛県・熊本県
6 8 山形県・山梨県・滋賀県・和歌山県・鳥取県・島根県・徳島県・大分県
7 10 北海道・青森県・岩手県・秋田県・高知県・佐賀県・長崎県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県

【図表8】地図上におけるクラスター分類

【図表8】地図上におけるクラスター分類

【クラスター1】~日本最多の貸事務所業により戦略的に事業を継続させる首都-東京~

クラスター1:東京都

東京都 景色
すべての指標が飛び抜けている東京は単独でクラスターとした。働き世代(生産年齢人口数)、働き先(事業所数)がずば抜けて多く、雇用環境も良好である。オフィス需要も多く商業地価格も上昇が続いている。そんなスーパービジネスエリア東京の100年企業で最も多い業種は、ダントツで貸事務所業である。相続件数も多いが、事業承継を戦略的に行っていることがうかがえる。

【図表9】クラスター1の指標別偏差値

【図表9】クラスター1の指標別偏差値

【図表10】クラスター1の業種TOP5と産業割合

【図表10】クラスター1の業種TOP5と産業割合

【クラスター2】 ~不動産業と建設業で発展を続ける準首都エリア~

クラスター2:神奈川県・愛知県・京都府・大阪府

神奈川県 京都府 大阪府 愛知県 観光地
働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)が非常に多く、それに伴い商業地価も上昇しているエリアである。東京に次ぐ大都市圏で構成されており、100年企業についても、東京同様に貸事務所業が最も多く、続いて貸家業と不動産業が盛んである。次いで木造建築や道路工事などの工事業が多い。

【図表11】クラスター2の指標別偏差値

【図表11】クラスター2の指標別偏差値

【図表12】クラスター2の業種TOP5と産業割合

【図表12】クラスター2の業種TOP5と産業割合

【クラスター3】~3産業のバランスが取れた準大都市エリア~

クラスター3:埼玉県・千葉県・兵庫県・福岡県

埼玉県 千葉県 兵庫県 福岡県 風景
働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)が多く、総合3位グループエリアである。商業地価も上昇しており、どの県も100年企業の業種は貸事務所業がTOP3に入っている。上位の業種はTOP3産業である卸売業・製造業・建設業がバランスよく存在している。周辺に大都市があるためか雇用環境は厳しいようである。

【図表13】クラスター3の指標別偏差値

【図表13】クラスター3の指標別偏差値

【図表14】クラスター3の業種TOP5と産業割合

【図表14】クラスター3の業種TOP5と産業割合

【クラスター4】~地場産業が今なお盛んな小売業エリア~

クラスター4:宮城県・富山県・石川県・福井県・岐阜県・静岡県・奈良県・岡山県・広島県・香川県

呉服
地場産業が盛んで、雇用環境が良いエリアである。高齢化が進んでおり相続割合が高いのも特徴。100年企業の業種は呉服などの服関係の小売りが多い。北陸地方や瀬戸内海周辺地域で構成されている。北陸を除けば貸事務所業が多いといえる。

【図表15】クラスター4の指標別偏差値

【図表15】クラスター4の指標別偏差値

【図表16】クラスター4の業種TOP5と産業割合

【図表16】クラスター4の業種TOP5と産業割合

【クラスター5】~建築工事業が多い職人エリア~

クラスター5:福島県・茨城県・栃木県・群馬県・新潟県・長野県・三重県・山口県・愛媛県・熊本県

伝統工芸
働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)は平均をわずかに下回っているが、順位では上位エリアに入る。相続割合も同様であり、雇用環境はやや良いといえる。100年企業の業種は建築業が多く、貸事務所業は少ない。北関東や信越地方で構成されている。

【図表17】クラスター5の指標別偏差値

【図表17】クラスター5の指標別偏差値

【図表18】クラスター5の業種TOP5と産業割合

【図表18】クラスター5の業種TOP5と産業割合

【クラスター6】~ひたむきに伝統ある事業に取り組む100年企業高輩出エリア~

クラスター6:山形県・山梨県・滋賀県・和歌山県・鳥取県・島根県・徳島県・大分県

旅館風景
働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)が少なく、商業地価も低いものの、ひたむきに創業以来の暖簾を守り続ける企業が多く、100年企業輩出率が高いエリアである。旅館運営やお酒やお菓子といった古くから定着している業種が多く、貸事務所業は少ない。

【図表19】クラスター6の指標別偏差値

【図表19】クラスター6の指標別偏差値

【図表20】クラスター6の業種TOP5と産業割合

【図表20】クラスター6の業種TOP5と産業割合

【クラスター7】~酒が支える日本の最北最南エリア~

クラスター7:北海道・青森県・岩手県・秋田県・高知県・佐賀県・長崎県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県

地酒
働き世代(生産年齢人口数)が少なく、雇用環境も厳しいエリアである。人が少ないことも影響してか、相続割合も少ない。100年企業の業種は酒関連が非常に多く、貸事務所業は少ない。北は日本酒、南は焼酎といった地酒が日本の最北最南エリアを支えている。

【図表21】クラスター7の指標別偏差値

【図表21】クラスター7の指標別偏差値

【図表22】クラスター7の業種TOP5と産業割合

【図表22】クラスター7の業種TOP5と産業割合

3. 100年企業データ

①件数・不動産業割合は東京都が1位

全国の100年企業数都道府県別では、件数・不動産業割合ともに東京都が1位となっている。

【図表23】 全国の100年企業数

都道府県 100年企業数 不動産業数 不動産業割合
01 北海道 1,168 65 5.6%
02 青森県 332 18 5.4%
03 岩手県 391 23 5.9%
04 宮城県 521 49 9.4%
05 秋田県 400 19 4.8%
06 山形県 766 24 3.1%
07 福島県 708 50 7.1%
08 茨城県 709 21 3.0%
09 栃木県 541 24 4.4%
10 群馬県 577 25 4.3%
11 埼玉県 953 78 8.2%
12 千葉県 782 41 5.2%
13 東京都 3,363 396 11.8%
14 神奈川県 902 88 9.8%
15 新潟県 1,379 39 2.8%
16 富山県 559 10 1.8%
17 石川県 501 12 2.4%
18 福井県 578 19 3.3%
19 山梨県 356 16 4.5%
20 長野県 958 67 7.0%
21 岐阜県 652 42 6.4%
22 静岡県 1,176 81 6.9%
23 愛知県 1,758 148 8.4%
24 三重県 678 34 5.0%
25 滋賀県 540 22 4.1%
26 京都府 1,403 65 4.6%
27 大阪府 1,909 165 8.6%
28 兵庫県 1,225 83 6.8%
29 奈良県 372 18 4.8%
30 和歌山県 373 17 4.6%
31 鳥取県 229 11 8.6%
32 島根県 375 8 3.5%
33 岡山県 659 46 2.9%
34 広島県 860 72 6.5%
35 山口県 405 22 3.5%
36 徳島県 309 15 4.9%
37 香川県 414 28 6.8%
38 愛媛県 430 15 3.5%
39 高知県 203 6 2.9%
40 福岡県 847 55 6.5%
41 佐賀県 366 6 1.6%
42 長崎県 374 22 5.9%
43 熊本県 438 23 5.3%
44 大分県 357 6 1.7%
45 宮崎県 203 7 3.4%
46 鹿児島県 235 13 5.5%
47 沖縄県 21 0 0.0%
全国 33,259 2,114 6.4%

②創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の1万3,000社(構成比41.7%)であった。次いで『大正以降』の9,100社(同28.0%)、『明治前期』6,300社(同19.5%)、『江戸時代』3,300社の順である。
江戸時代は、『清酒製造業』、『旅館・ホテル』、『呉服・服地小売業』が最も多かった。明治後期以降『建築工事業』や『土木工事業』が増え、『貸事務所業』もこの頃から増えてきている。

【図表24】創業時期別構成比

【図表24】創業時期別構成比

【図表25】 創業時期別TOP業種

江戸時代 明治前期 明治後期 大正以降
1位 清酒製造業 酒小売業 酒小売業 土木工事業
2位 旅館・ホテル 建築工事業 建築工事業 建築工事業
3位 呉服・服地小売業 呉服・服地小売業 貸事務所業 貸事務所業

③産業は『卸売・小売業、飲食店』が最多

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が15,665社(構成比47.1%)と最も多かった。次いで、『製造業』8,305社(同25.0%)、『建設業』3,559社(同10.7%)と続き、この3産業で全体の8割を占めた。
最も少ないのは『林業、狩猟業』で24社(同0.1%)であった。

【図表26】産業別件数

【図表26】産業別件数

④業種は『貸事務所業』が最多

業種別では、『貸事務所業』が894社で2019年に初めてトップとなった。創業時は別事業を主業としており、賃料収入を得るために副業として『貸事務所業』を行っていたが、そのうちに『貸事務所業』の方が本業へと変わっていったケースが多い。
2位は『清酒製造』で801社であった。清酒は1,000年以上も前から日本に存在しているといわれており、ほとんどの都道府県で上位の業種であり、全国でも昨年までトップであった。
3位の『旅館・ホテル』(618社)も多くの都道府県で古くから定着している業種である。その他は『酒小売』(611社)、『呉服・服地小売』(568社)、『婦人・子供服小売』(535社)の小売業が上位を占めた。

【図表27】業種別TOP10

【図表27】業種別TOP10

⑤資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が17,000社(構成比53.4%)と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が6,800社(同20.8%)となり、5千万円未満で約7割を占めた。
資本金トップは、株式会社三井住友フィナンシャルグループ(東京都)が2兆3387億円。以下、株式会社みずほフィナンシャルグループ(東京都)が2兆2567億円、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(東京都)が2兆1415億円の順であり、3大メガバンクの持ち株会社がトップ3を占めた。上位10社のうち8社が東京都であった。

【図表28】資本金別構成比

【図表28】資本金別構成比

※2018年10月時点データを使用

⑥従業員数は『4人以下』が最多

従業員別では、『4人以下』が11,000社(構成比35.7%)と最も多かった。次いで、『10~49人』が9,400社(同28.9%)、『5~9人』が6,700社(同20.6%)の順である。10人未満で約5割強を占め、100年企業の多くは小規模企業であるといえる。

【図表29】従業員規模別構成比

【図表29】従業員規模別構成比

※2018年10月時点データを使用

⑦売上高は『1億円未満』が約4割

売上高別では、『1億円未満』が13,800社(構成比42.3%)と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が12,500社(同38.4%)、『10億円以上~100億円未満』が4,600社(同14.2%)の順である。

【図表30】売上高規模別構成比

【図表30】売上高規模別構成比

※売上高は直前3期分の平均値データを使用(2018年10月時点データ)

 

 

 

本稿の分析は下記データを用いて行った。


【図表31】本レポートのデータ分類と出典

指標グループ 指標(変数) 出典
1 100年企業データ 100年企業数 100年企業戦略研究所データ
100年企業輩出率 同上 ・ 経済センサス/総務省
直近売上高(県平均) 100年企業戦略研究所データ
不動産業割合 100年企業戦略研究所データ
上場企業割合 同上 ・ 上場企業数/上場企業サーチ
2 人口データ 生産年齢人口 人口推計/総務省
生産年齢人口割合 同上
3 雇用データ 有効求人倍率 一般職業紹介状況/厚生労働省
完全失業率 労働力調査/総務省
4 土地・住宅データ 地価 地価調査資料/国土交通省
住宅着工件数 建築着工統計調査/国土交通省
5 産業データ 事業所数 経済センサス 事業所に関する集計/総務省
企業倒産件数 全国企業倒産状況/東京商工リサーチ
6 相続税データ 課税割合 国税庁公表資料
一人当たり税額 同上

 

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。
※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

 
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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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