100年企業レポート vol.09 鹿児島編

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

1.鹿児島県の100年企業に関する分析

鹿児島県 街の風景
日本の南の玄関口だった鹿児島県。特にそれが際立っていたのが、16世紀である。ポルトガル人やスペインの宣教師が鹿児島県に上陸したことで鉄砲やキリスト教が伝来し、日本全国へ普及した。日本の鎖国体制が崩壊した19世紀後半には、積極的に西洋文化を取り入れ、当時の日本をリードしてきたのである。

鹿児島県の100年企業数は、235社であり、全国43位である。

また、鹿児島県は黒豚や地鶏、サツマイモ、マンゴーなど温暖な気候を活かした特産品が多い。特に、サツマイモを原料とした芋焼酎が有名で、鹿児島県内でも多くのブランドがあり、多くの人に親しまれている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、鹿児島県の特性を分析した。

働き世代や働き先を含む6指標全て平均を下回る

古くから日本の南の玄関口として様々な国との交易が盛んに行われ、明治維新を成功させた西郷隆盛や大久保利通などの偉人も多く輩出している鹿児島県だが、現状は6指標全て平均を下回っている。温暖な気候を利用した農業が盛んであるものの、働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)が少なく、雇用環境も厳しい状況である。他県と比べても人口減少のスピードが早いと言われている鹿児島県では、移住募集や産業創出などの施策に取り組んでいる。

【図表1】鹿児島県の指標別偏差値と順位

鹿児島県の指標別偏差値と順位

指標 偏差値 平均との差 順位
100年企業輩出率 35.7 -14.3 45
生産年齢人口数 45.9 -4.1 24
有効求人倍率 38.8 -11.2 41
商業地平均価格 46.8 -3.2 23
事業所数 46.5 -3.5 23
相続税課税割合 37.7 -12.3 45
合計スコア 251.5 -48.5 46

2.鹿児島県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比48.0%であった。次いで『大正以降』の28.2%、『明治前期』の16.1%、『江戸時代』の7.7%の順である。
芋焼酎に代表される酒造業が古くから盛んであり、鹿児島県の産業を支えてきた。合わせて酢やしょう油などの調味料製造も多かった。一般病院の割合が高いのも鹿児島県の特徴である。

【図表2】創業時期別構成比

創業時期別構成比

【図表3】創業時期別TOP業種

江戸時代 明治前期 明治後期 大正以降
1位 蒸留酒・混成酒
製造業
蒸留酒・混成酒
製造業
蒸留酒・混成酒
製造業
旅館・ホテル
2位 食酢製造業 酒小売業
他5業種
一般病院 一般病院
3位 百貨店・総合スーパー 旅館・ホテル 土木工事業
※同数2位

②創業年TOP5

鹿児島県の創業年TOP5は下記の6社である。
第1位の若松酒造株式会社は、全国で733位となっている

【図表4】 創業年TOP5

順位 企業名 業種 創業年
1 若松酒造株式会社 蒸留酒・混成酒製造業 1719
2 相良酒造株式会社 蒸留酒・混成酒製造業 1730
2 白露酒蔵株式会社 蒸留酒・混成酒製造業 1730
4 株式会社山形屋 百貨店・総合スーパー 1751
5 坂元醸造株式会社 食酢製造業 1805
5 有限会社重久盛一酢醸造場 食酢製造業 1805

③市町村別は『鹿児島市』が最多

市町村別100年企業数では鹿児島市が102社で最多であった。
1位の鹿児島市では、『その他の食料・飲料卸売業』が4社と最も多く、次いで『蒸留酒・混成酒製造業』、『貸事務所業』、『旅館・ホテル』、『幼稚園』、『一般病院』の5業種がそれぞれ3社である。
2位の霧島市は、100年企業数16社であり、業種別に見ると『蒸留酒・混成酒製造業』が3社と最も多く、次いで『食酢製造業』が2社である。
3位のいちき串木野市は、100年企業数12社であり、業種別に見ると『蒸留酒・混成酒製造業』が3社と最も多く、次いで『土木工事業』が2社である。

【図表5】市町村別100年企業数TOP9

市区別100年企業数TOP9

④産業は『卸売・小売業、飲食店』が最多

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が101社(構成比43.0%)と最も多かった。次いで、『製造業』78社(同33.2%)、『サービス業』33社(同14.0%)の順である。
鹿児島県は農業が盛んであり、平成29年の農業産出額は、九州地方ではトップ、全国でも2位であった。2次産業においても、工業製品出荷額の5割以上を食品関連産業が占めている。牛・豚・鶏などの畜産加工品、水産加工品などが代表的な品目である。
100年企業においては、すべての産業が全国平均と比べると少ない状況であるが、6次産業化などの産業振興施策に堅実に取り組んでいる。

【図表6】産業別件数

産業別件数

⑤業種は『蒸留酒・混成酒製造業』が最多

業種別では、『蒸留酒・混成酒製造業』が32社で最多であった。
薩摩の伝統、文化として継承されてきた芋焼酎がWTO世界貿易機関の協定に基づく産地指定を受けており、古くから酒造業が盛んであった。
豊富な温泉や屋久島などの世界自然遺産があり、観光業も盛んであるため『旅館・ホテル』も多い。
また、鹿児島県では人口10万人当たりの病院数が全国2位であり、医療・福祉の就業者比率が高い。(2016年「医療施設調査」データ)そのため100年企業においても『一般病院』が上位である。

【図表7】業種別企業数TOP10

業種別企業数TOP10

⑥資本金は『金融・保険業』が上位独占

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比39.9%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が30.6%の順である。
資本金トップは株式会社鹿児島銀行(業種:普通銀行)が181億円。以下、株式会社南日本銀行(業種:普通銀行)が166億円、鹿児島県経済農業(業種:農業協同組合)が54億円の順である。
上位4社を金融・保険業の企業が独占した。

【図表8】資本金別構成比

資本金別構成比

※2018年10月時点データを使用

⑦従業員数も『金融・保険業』が上位独占

従業員別では、『10~49人』が構成比31.9%と最も多かった。次いで、『4人以下』が25.4%、『5~9人』が21.4%の順である。
従業員数も金融・保険業が上位を独占した。従業員1,000人を超えるのは、株式会社鹿児島銀行であり、次いで、株式会社南日本銀行、鹿児島相互信用金庫、株式会社山形屋の3社が従業員500人を超える。百貨店である株式会社山形屋以外は金融・保険業である。

【図表9】従業員規模別構成比

従業員規模別構成比

※2018年10月時点データを使用

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比38.7%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が38.3%、『10億円以上~100億円未満』が18.5%の順である。
売上高上位10社のうち、卸売・小売業が5社、金融・保険業が4社である。

【図表10】売上高規模別構成比

売上高規模別構成比

※売上高は直前3期分の平均値データを仕様(2018年10月時点データ)

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は2社

鹿児島県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は13社であり、構成比では全国19位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は2社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは、『その他の畜産農業』と『集配利用運送業』がそれぞれ1社であり、貸事務所業は少ない。

【図表11】 本業以外で『貸事務所業』を行っている主な企業

No 企業名 業種
1 株式会社南国養蜂園 その他の畜産農業、貸事務所業、貸家業
2 株式会社大坪運送店 集配利用運送業、旅行業者代理店業、貸事務所業

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。
※創業年について
創業年が「○○年間」などのように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。
※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。
さつま揚げ(鹿児島県)
※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

 
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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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