これから中小企業に求められる経営戦略とは?

国内の人口減少と高齢化、経済のグローバル化など、中小企業を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。従来の常識は通用せず、これまでのように「売上」だけにこだわる姿勢では、経営は立ち行かなくなるでしょう。

これからの時代、中小企業には、売上重視から「利益の確保」に方向転換する経営戦略が求められます。

1.市場が変化するなか、売上追求では経営が悪化

1945年に約7,215万人だった日本の人口は、1970年に1億人を突破。その後も緩やかに人口は増え続けましたが、2008年、1億2,808万人をピークに人口減少に転じました。

国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口」(平成 29 年推計) によると、総人口は2053年に1億人を割り込み9,924 万人、2065年には8,808万人になると推計されています。また老年人口割合は、2036年で33.3%、2065年には38.4%、すなわち 2.6 人に1人が老年人口になるとされています。

人口が増加する社会では自然と市場は拡大していくので、企業にとって「売上追求」が合理的な経営戦略でした。そのためこれまでの日本企業の多くは、新規顧客獲得を重視してきたのです。

しかし人口が減少する社会では、一人当たりの消費量が増えない限り、市場は縮小していきます。そのような中で売上を追求していくと、人件費をはじめとしたコストの増大を招き、経営が悪化してしまいます。これまでの経営戦略では、人口減少時代は生き残れないのです。

2.求められるのはリピート顧客の育成と利益の確保

前述のような人口減少の社会では、一度獲得した顧客に、いかにリピートしてもらうか、そして、いかに囲い込むかが基本的な経営戦略となります。顧客の満足度を向上させ、購入頻度や購入価格を引き上げることができれば、売上は拡大し、経営も安定していくのです。

ベンチャーや新規事業の立ち上げにあたっては、新規顧客の開拓がまず必要ですが、その場合でも最初から新規顧客をいかにリピート顧客へと誘導するかを考えておくべきでしょう。

もうひとつ、これからの経営戦略で重要となるのが、「利益」の確保です。たとえ売上が横ばいであっても、あるいは少々減ったとしても、きちんと利益が確保でき、キャッシュフローが回っているのであれば、経営的には問題ありません。内部留保を積み増し、資産を分散していけば、事業を続けていくことができ、100年企業への道も見えてくるでしょう。

3.リピート顧客育成のために必要なこと

リピート顧客を育成するためにやるべきことは明確です。顧客にとって自社の商品やサービスの付加価値を高め、満足度をキープすることに尽きます。それが新規顧客の開拓にもつながっていきます。

それでは、顧客にとって自社の商品やサービスの付加価値を高めるにはどうすればいいのでしょうか。

「付加価値」というと何か新しいものを付け加えなければいけないと考えがちですが、最も重要なことは自社の強みを磨くことです。決して新しいことに手を出すことではありません。

もし、強みと弱みがあった場合は、強みを徹底的に磨くことを最優先するほうがよいでしょう。

「うちにはこれといった強みがない」という場合も、簡単にあきらめてはいけません。中小企業の場合、自社の強みを見逃していたり、強みを見誤ったりしているケースが多くあります。

会社の強みを見つける方法としてよく使われるのがSWOT(スウォット分析)です。これは外部環境や内部環境を強み、弱み、機会、脅威の4つのカテゴリーで要因分析する、経営戦略策定方法のひとつです。

内部環境のプラス要因が「強み」、マイナス要因が「弱み」、外部環境のプラス要因が「機会」、マイナス要因が「脅威」です。単純に自社の「強み」「弱み」を探るのではなく、外部環境の「機会」「脅威」と照らし合わせながら考えてみることで、より多角的な視点で「強み」を浮き彫りにできます。

SWOTで客観的に会社を分析すると、思いもよらぬ強みが見えてくることがあるでしょう。

図表1 スウォット分析のフレーム

プラス要因 マイナス要因
内部環境 強み
(Strength)
弱み
(Weakness)
外部環境 機会
(Opportunity)
脅威
(Threat)

なお、自社の強みという点で注意したいのは、世の中で流行している商品やサービスの捉え方です。流行はビジネスの規模拡大に役立つ一方で、ビジネスの寿命を短くする危険があります。

流行は、瞬間的には大きな売上と利益をもたらしますが、一方でこれまでのリピート顧客を失ったり、不良在庫や高コスト体質につながったり、長い目でみるとデメリットのほうが大きい場合もあるので注意が必要です。

特に近年、流行のスピードはどんどん加速しています。自社の強みとの関連性が強い場合は流行を利用しても良いでしょうが、単に流行だからといって飛びつくのは危険です。

4.利益確保のためのポイント

利益の確保のためには、売上目標ではなく、利益目標を明確に設定すること重要です。自社にとって適切な利益目標を掲げ、その達成に向けて事業計画を組み立て、日々のオペレーションを改善していくのです。

利益目標とは具体的には「利益額」(絶対額)です。

人件費(福利厚生費などを含む)や借入金の返済予定額、固定資産税など、経営上最低限これだけは必要という金額をベースとし、そこに配当やボーナスなどを上乗せして年度開始前に設定します。これを部門や拠点ごとに割り振り、逐次(基本的には毎月)達成状況を確認します。

「利益額」は、製品やサービスごとに確認することも重要です。たとえば、金額としては非常に大きな製品やサービスでも、利益額ではそれほどでもないケースが少なくありません。大事なのは利益の絶対額です。

もうひとつ、利益目標でもうひとつ重要なのが「キャッシュ」です。

利益とキャッシュは比例しません。利益が出ても、売掛金や在庫が積み上がっているような状況では、資金繰りが行き詰まる可能性もあります。したがって「利益額」と「キャッシュ」はセットで考える必要があります。

さらに利益目標に関連して、製品やサービスごとの「利益率」をチェックするとよいでしょう。

同じ企業でも、製品やサービスによって利益率は異なるのが一般的です。しかし「これくらいでいいか」という先入観に捉われ、利益率を自ら低く抑えているケースがあります。また利益率がマイナスで採算割れになっている製品やサービスもあるでしょう。そうした製品やサービスは値上げするか、取り扱いをやめるか、他の方法を考えるかすべきです。

5.まとめ

企業会計は、ゴーイングコンサーン(継続企業の前提)といって、会社は将来に渡ってずっと事業を継続していくという仮定をもとに様々な制度がつくられています。ゴーイングコンサーンという仮定を現実化する経営戦略として、これからの時代の中小企業には「売上重視」から「利益の確保」への舵取りの転換がより強く求められ、スタンダードとなってくることでしょう。

 
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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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