マイナス金利政策下で、銀行に「この会社ならお金を貸したい」と思わせるには?~会社の「資金繰り」完全ガイド[第4回]

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経営者であれば、突然、資金が必要になる場面に遭遇することは珍しくありません。しかし資金繰りの正しい知識がないと、思わぬトラブルに巻き込まれ、大きな損失に繋がってしまうこともあります。健全な企業経営のためにも、資金繰りの基本を学びましょう。

第4回目の今回は、資金計画の中枢にあるべき「資金繰り表」に焦点をあてて、解説していきます。

マイナス金利を受け、借り手市場が続く

今現在、日本銀行が2016年からスタートさせたマイナス金利政策が続いています。

マイナス金利は主に「銀行などの金融機関が日本銀行へ預けるお金」に対して適用されます。すると金融機関は「日銀に預金をしていると、お金が減ってしまう。企業からの借入れを増やし、運用をしていかなければ大損だ!」と考えるようになり、近年は「借り手市場」と言える状況になっています。

とは言え、金融機関は「返済が滞りそうな相手」にはお金を貸しません。面談を含む審査を通過した相手だけに融資を行います。金融機関にとって「貸したい会社、貸したくない会社」の違いはどこにあるのでしょうか。

融資可否の要となる決算書

金融機関に融資を申し込むにあたっては、以下の書類提出が求められます。

・決算書
・試算表
・月次資金繰り表
・経営計画書
・会社案内、パンフレットなど

中でも最も重要なのが決算書であり、その内容如何で融資の可否が決まるといっても過言ではありません。

決算書とは、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書など財務の諸表をまとめたもので、4月~3月の1年毎に作成します。融資の際は、確定申告書(顧問税理士の署名捺印がないと、信頼性を疑われる)や勘定科目内訳書なども、併せて提出することが求められます。

では決算書に目を通した金融機関の担当者は、どの部分で「この会社には貸せない」と判断するのでしょうか。

■純資産がマイナスの会社

貸借対照表の中で重要となるは純資産です。純資産は総資産から総負債を引いた値ですが、マイナスの値になっていると融資の可能性は下がります。また、プラスの値になっていても「実質債務超過である」「自己資本比率が低い」と判断されると不利になってしまいます。

さらに、借入金の総額にもシビアな目が注がれます。「借入金が水準より多い」と判断された場合、融資が見送られることもあり得ます。

■損益計算書の売上利益が赤字の会社

売上利益とは、直接の原価を控除した売上の数字です。給料や地代、そして販売促進に費やした経費などが差し引かれていないので、こちらがマイナスの値となっている企業は金融機関から相手にしてもらえません。

■損益計算書の営業利益や経常利益が赤字の会社

営業利益は売上から人件費、地代、販促費などを控除したもの、また経常利益は売上から利息などの財務費用を控除したものです。そのどちらもプラスであれば、経営がうまくいっている証拠となり、金融機関から高く評価されます。

しかし、赤字でも「次の決算では、必ず黒字になる」という根拠がある場合は、面談の際にきちんと説明することで突破口が開ける可能性も十分にあります。

■現在の経常利益が黒字でも、以前は赤字の会社

金融機関は直近の決算書だけでなく、数年分の提出を要求します。黒字が3年以上続いているようなら問題ありませんが、前年の決算書の経常利益などに赤字が見られた場合「今は黒字でも、また赤字に戻るのでは?」という疑念を持たれ易くなります。

そうしたケースでは「新機軸が軌道に乗り、黒字に転換した」など、今後は好調であることをしっかりと説明する必要があります。そして金融機関に「この会社には融資したい」と思わせなくてはなりません。

経営計画書も審査に大きな影響を及ぼす

上記のように、決算書の内容は融資の可否を決める条件の中で最も大きな比重を占めています。不安を感じる経営者は、あらかじめ財務担当者や提携の税理士と話し合い、きちんと準備を整えておかなくてはなりません。

しかし、決算書の内容がいまひとつの企業でも、経営計画書で大きく挽回できることがあります。

経営計画書とは、「企業が短期的(1年)/長期的(5~10年)にどのような経営計画を立てているのか」「どのように行動して損益を管理していくつもりなのか」をまとめた書類です。金融機関の担当者に熱意を理解してもらうためには、経営者が率先して作成にあたるべきです。財務担当者の力を借りつつ、勘定科目の細かな数字を埋める努力を行って下さい。この努力を怠り、税理士などの専門家に丸投げしてしまうと「精度は高いが、人任せで誠意が感じられない書類」と判断されてしまいます。

具体的には「年次の損益計算書(5~10年分)」「月次の損益計算書(直近1年)」そして将来の方針を具体的な戦略と共にまとめた「経営計画書」が揃っていれば十分です。中には何も用意しないまま審査に臨む企業もありますので、金融機関の担当者も「経営計画書を用意してくるこの会社は、きちんとしているな」と良い印象を抱くはずです。

決算書の内容に自信がないのであれば「今後に期待してください」とアピールするしかありません。融資の有無で企業の未来は大きく変わりますので、意欲を見せましょう。

まだある!金融機関のチェックポイント

上記以外にも、金融機関が融資の可否を判断する際に、チェックの目を光らせるポイントがあります。

ひとつめは、背景。業種はもちろん「反社会的な勢力との関りはないか」「過去に社会的な問題を起こしたことはないか」などまで調べられます。企業そのものだけでなく、経営者の背景も、同様に調べられることとなるでしょう。

ふたつめは、資金使途。融資を受けた資金を、どのように使うのかは必ず確認されます。運転資金、つなぎ資金、季節資金、納税資金、設備資金、投資資金など、使い道は多岐に渡ります。

企業の業種や現在の状況などと照合したうえで「使途が不明瞭」と判断されると、いくら決算書の内容が良好でも融資が見送られる可能性があります。

また、銀行などの金融機関は、融資後も使途通りに資金が使われているかをチェックします。たとえば設備資金として融資を受けたのに、別の使途に資金を回していたことが露見すると資金使途違反になるので、注意が必要です。罰則として全額の即返却を求められるほか、二度と融資が受けられなくなります。

ただし資金使途に関しては、審査前に金融機関の担当者に相談することも可能で、「資金をこんな風に使いたいのだが、使途はどのようにまとめるべきか」などを相談しながら、合意点を模索していくことが可能です。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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