コロナ禍で広がる「電子決済」中小企業の導入メリットは?
〜中小企業経営者のための注目の経営トピックス[第8回]

コロナ禍によって、キャッシュレス化の進展、マイナポイントの導入、デジタル庁の創設などにより、消費者の間でいっそう「電子決済」が拡大する機運が高まっています。特に卸売業や小売業、飲食サービス業、サービス業を営む経営者にとっては、電子決済の導入は最も緊要な課題といえるでしょう。

メディアでも注目されている企業経営に関するトピックスを解説する本連載。今回は「電子決済」の現状や導入メリット、導入時に留意すべき点などを解説していきます。

「電子決済」の種類とサービス

まずは電子決済の種類をみていきましょう。

【図表1】電子決済の種類と加盟店手数料

【図表1】電子決済の種類と加盟店手数料

上記の中でも近年、普及が進んでいるのは、QRコード・バーコード決済です。「スマートフォンを活用できる」、「ポイント還元率が高い」などの理由から、若年層の間で急速に一般化しました。以下は、主要なQRコード・バーコード決済のサービス名称です。

【QRコード/バーコード電子決済の代表例】
PayPay
LINE Pay
d払い
楽天ペイ

またスマートフォンを使用する電子マネーは、何ら操作せず専用端末にタッチするだけで決済することができ、より手軽で人気です。

【スマートフォンを使用する電子マネーの代表例】
モバイルSuica/PASMO
WAON
nanaco
GoogleApple/ Pay

広がる「電子決済」…どれくらい普及しているのか?

話題を集める電子決済ですが、実際にはどの程度普及しているのでしょうか。

コイニー株式会社が運営する「STORESターミナル」は、2019年11月に「キャッシュレス決済に関する利用状況調査」を実施しました。対象となったのは、国内の10~70代の男女722人。その結果によると、10人中9人が何らかのキャッシュレス決済利用者で、全体の約70%は週1回以上の頻度でキャッシュレス決済を利用しているそうです。

その内訳はクレジットカードが約53%、次いで電子マネーが約25%、そしてQRコード/バーコード決済が約11%となっています。

中小企業が「電子決済」を導入するメリットとは?

前述の通り、キャッシュレス決済は急激に広がっていますが、その流れに拍車をかけたのが、ポイント還元事業(キャッシュレス・消費者還元事業)です。昨年の消費税増税の際、景気刺激策として導入されました。電子決済によりポイントが還元されるという消費者メリットが訴求されてきましたが、民間企業の調査によると、電子決済導入によって4割の企業が売上が伸びたと回答しました。電子決済の導入による集客効果は、今後も期待できるところです。

また経済産業省は電子決済導入に伴う中小企業の負担軽減のために、日本政策金融公庫による低金利融資を実施しています。電子決済に対応するための運転資金を貸し出す制度で、卸売業や小売業、サービス業、飲食業を営む中小事業者に対し、2.5億円を限度額に、基準利率0.4%で融資を行っています。

さらに現金決済では、「レジの入力内容と現金有高の確認」「金融機関への預入と引出」など、物理的な作業が多くありますが、電子決済にすればその手間が解消され、業務の効率化を図れます。またお釣り用の硬貨や紙幣の用意が少なくなるので、セキュリティ面でもメリットがあるといえるでしょう。

「電子決済」導入の留意点

「電子決済」の導入メリットは大きいですが、リスクもあることを知っておかなければなりません。

まず電子決済では、実際の入金は遅れるうえ、手数料もかかります。実際、キャッシュレス推進協議会の調査では「入金サイクルの変化により資金繰りに苦労した」という回答が2割にも及びました。導入前に入金と支払いサイクルの調整、前述の融資制度の活用など、工夫が必要といえるでしょう。

また電子決済では導入時はもちろん、手数料やセキュリティ費用など運営コストもかかります。現状の決済システムと比較してコストアップになる可能性もあるので、導入前に運営コストもきちんと把握しておくことが肝心です。

さらに電子決済はインターネットを基盤としたものなので、災害や事故などによってシステム障害が生じると機能しなくなります。実際に、熊本地震や千葉県を襲った台風の際には、停電により電子決済も使えなくなりました。現金決済の余地を残しておくことで、リスク回避ができるでしょう。

 

中小企業における電子決済の導入には、大きなメリットがある一方で、少なからずデメリットもあります。しかしコロナ禍による新しい生活様式の拡充によって、電子決済が当たり前になりつつあります。

導入は面倒だと片付けるのではなく、新たなビジネスチャンスと捉え、電子決済の導入を検討してみてはどうでしょうか。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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