経営者にいまおすすめの本6冊 「ESG経営」編

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目次

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉。これらの要素を考慮したESG経営の推進には以前から懐疑論もあり、トランプ米大統領の再選でさらなる逆風が吹き始めています。とはいえ、世界に根付いたESGの考え方が、すべて否定されることはないだろう、という見方が一般的です。そこで今回は、ESGの基礎と最新動向を知り、経営に取り入れるためのヒントとなる6冊を紹介します。

①『ESG入門 新版 経営、投資での実装』

アムンディ・ジャパン編 日本経済新聞出版 1,650円

ESG経営を企業が理解し、実装するために必要なこと

本書の編者は、欧州を代表する資産運用会社で、長年にわたり積極的にESG投資を行うアムンディです。本書は、ESGの歴史や経済・社会的な背景、そして経営や投資におけるESGの実装方法について、アムンディの実務経験やデータとともに解説しています。

「ESGを知るために」と題された第1章では、はじめに企業活動を俯瞰し、ビジネス=事業とは何かを定義。企業は活動を通じて価値を創造し続けることで存続し、その活動には6つの資本(財務資本、製造資本、知的資本、人的資本、社会・関係資本、自然資本)が関わっていると説明します。

また、混同されやすいSDGsとESGの違いについても言及。SDGsはあくまでゴール(目的)であり、ESGはその達成のための手段です。企業はSDGsに代表される社会課題を「機会」ととらえ、価値創造を行うためのプロセスとしてESGを実践すべきであると述べています。

第2章の「ESGとは何か」では、E、S、Gの意味を深掘りします。ESGという言葉が最初に使われたのは、2006年に当時のアナン国連事務総長が「責任投資」を提唱したときでした。責任投資とは、投資アプローチの1つであり、ESGを判断要素に入れてリスク管理しながら長期的な運用成果を目指すものです。本章では、アムンディにおけるESG評価基準も紹介しています。

第3章は「ESGを経営に実装する」をテーマに、本業とESGを両立することの重要性を説きます。ソニーグループや塩野義製薬などの事例も挙げながら、企業がどのようにESGに取り組むべきかを考察。自社におけるESGの重要課題を適切に選定し、ESGの取り組みを価値創造につなげるためのストーリーを明確にするべきだと提言します。

第4章の「ESGを投資に実装する」では、機関投資家の運用においてESGの要素を投資プロセスに組み入れることでリターンにどのような影響があるかを分析。株式や債券などのデータに基づいて詳細に解説します。

そして、ESGの未来に目を向けた「おわりに」で、投資評価の時間軸を長く設定し、将来の社会のプラスを「自分ごと」として評価することで、目先の期待リターンが下がったとしても、長期の視点から投資を継続することもありうることを示唆して締めくくります。

②『ESGが生み出す選ばれるビジネス』

水野雅弘著 インプレス 1,980円

取引先から「選ばれるための」ESG経営

本書の著者である水野雅弘氏は、「ESG経営が投資家や顧客、取引先などのステークホルダーから企業が選ばれるための重要な要素になりつつある」と主張します。本書は、そんな「選ばれるビジネス」を実現するために、ESGの基礎知識やフレームワーク、具体的事例などをまとめたESGの入門・実践書です。

本書の前半は、ESGの重要性が高まっている社会的背景や、ESGが作り出す新しい企業価値について解説します。そして後半では、ESG経営の具体的な取り組みを考察します。さらに、自社のESG推進度や課題を可視化するための指標として、オリジナルのESG思考ワークシートやアクションチェック、自己診断シートなども紹介。経営者はもちろん、あらゆる立場、部門で活用できる実務的な内容となっています。

また、多数のESG経営事例が紹介されているのも本書の特徴です。製薬会社のエーザイ、再生可能エネルギーのグローバルリーダー企業であるオーステッド、地域資本を生かしたワイン生産などを展開する南三陸ワイナリー、高知県の山間部に位置する自治体である梼原町など、組織の規模や分野を問わず、多様な取り組みを知ることができます。

例えば、北海道札幌市に本社を置くコンビニエンスストアチェーン「セイコーマート」は、「生活を支えるパートナーであり続ける」というビジョンのもと、生産・物流・小売を一貫した自社サプライチェーンを構築しています。そしてフードマイレージ※やコスト、食品ロスを削減し、さらに災害時にも店舗運営できるような防災対策を実施。コンビニエンスストアの枠を超え、地域社会の暮らしを支える存在としての役割を担います。この結果、高い顧客満足度を維持し、地域に必要とされるサステナブルな企業となっています。

このようなESGに対する積極的な取り組みは、企業の競争優位性を生み出し、新しい経営視点やビジネスチャンスにもつながります。ESG経営は大企業が取り組むべき課題と思われがちですが、中小企業こそが採り入れていくべきだと水野氏は述べています。

※食料の輸送量と距離を掛け合わせたもの。数値が大きいほど、環境負荷が高い。

③『環境投資のジレンマ 反ESGの流れはどこに向かうのか』

山下真一著 日本経済新聞出版社 2,420円

世界の潮流を捉えながらESG経営を見つめ直す

本書は第2次トランプ政権が始まる前に、すでに推進派と懐疑派とで分かれていた世界情勢をまとめたものです。具体的には、世界のESGが加速した「疾風怒濤の2021年」と、その反動でさまざまな問題が発生した「反動と反省の2022年」を振り返りながら、環境投資の現状や課題をまとめています。

2021年、世界の投資家がESGに焦点を当てた商品へ資金を投じ始めました。しかし、そのまま前進するかと思われたESGファンドへの投資は、2022年に入り大きく変化します。ロシアによるウクライナ侵略の影響による燃料価格の高騰、欧米主要国の金利引き上げ、欧州の投資信託を巡るルール変更など、複合的な要因から縮小に向かったのです。

環境問題に取り組むことの重要性は広く認識されつつも、投資家は投資パフォーマンス向上という重い責任を背負っています。環境関連の株価が苦戦し、石油株が再び選好され始めると、株主や経営者は、経営の優先順位や方法論についてさまざまな葛藤を抱えました。そして米国では2022年以降、反ESG投資を推進する州法制化の動きが強まり、ESG派、反ESG派で州によって政策が分かれる形で政治的分断が生じています。

さらに、環境のためと称賛された仕組みの中に潜む欠陥も次第に明らかになりました。例えば、企業や組織が実態以上に環境に配慮しているように装う「グリーンウォッシング」の問題です。また、企業が途上国などの環境事業に資金を拠出し、その対価として「クレジット」を受け取って自社の温暖化ガス排出量と相殺する「カーボンオフセット市場」に関しても、効果の不透明性から不信感が高まっています。

ESG投資が多くの問題に直面しているのと同様に、グリーン鉄鋼やグリーン水素、再生可能エネルギーといった環境ビジネスも、将来的に高い成長が期待される一方で、目先のコストという大きな壁に直面しています。

とはいえ、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向けて、残された時間は限られています。世界の潮流を理解し、投資と環境の関係について改めて考えるために、今こそ読んでおきたい1冊です。

④『経営者が語る 成長の源泉 ESG経営』

日経ESG経営フォーラム編著 日経BP 2,860円

アサヒグループHD、花王、住友化学、パソナグループなど、企業のトップ約70人にインタビューを行い、それぞれのESG経営戦略についてリアルな声をまとめた1冊。各企業の最新事例から、自社のビジネス戦略や新たな事業創出のためのヒントが得られる。

⑤『図解ポケット ESGがよくわかる本』

森尚樹、粟生木千佳、鮫島弘光、松尾茜、清水規子、森下麻衣子、渡部厚志著 秀和システム 1,210円

著者は、気候変動や生物多様性、循環経済と資源効率などに関する調査研究を行う公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)の有志メンバー。ESGの基礎知識やESG投資の実態、地球環境問題などを事例やデータ、科学的視点を交えながらわかりやすく解説する。

⑥『自然再生をビジネスに活かすネイチャーポジティブ 企業成長につなげる環境世界目標』

松木喬著 日刊工業新聞社 1,650円

本書は生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せるための取り組み「ネイチャーポジティブ」がテーマ。ビジネスにおける生物多様性の重要性や、専門家の知見、ネイチャーポジティブ実践企業の事例などを紹介する。

[編集] 一般社団法人100年企業戦略研究所
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