経営者にいまおすすめの本6冊 「レジリエンス」編

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目次

「レジリエンス」とは、「逆境や困難を柔軟に乗り越える力」のことを指します。もともとは心理学やメンタルヘルスの分野で使用されてきた言葉ですが、近年はレジリエンスの強化が持続的なビジネスの成功に不可欠な要素の一つとして注目されています。そこで今回は、個人やチーム、組織がレジリエンスを高めるために読んでおきたい本6冊を紹介します。

① 『レジリエンスの教科書 逆境をはね返す世界最強トレーニング』

カレン・ライビッチ、アンドリュー・シャテー著、宇野カオリ訳 草思社 2,090円

レジリエンスを高める7つの能力

本書は、レジリエンスを高めるための実践的なトレーニング方法を解説した一冊です。

50年以上に及ぶ科学的研究により、レジリエンスが職場での成功や人生の満足度を左右する重要な要素であることが明らかになりました。長年にわたりレジリエンスのトレーニングプログラムの研究・開発および指導を行ってきた2人の著者は、レジリエンスの高さは、逆境に対してどう考えるかという「思考スタイル」によって決まると述べています。

著者らの研究によると、レジリエンスの本質は「感情調整力」「衝動調整力」「共感力」「楽観力」「原因分析力」「自己効力感」「リーチアウト力」という7つの能力から構成されます。この能力は測定可能であり、トレーニングによって向上させることができるというのが著者らの考えです。そこで本書のパート1では、読者がどの能力に優れ、どの能力が不足しているかを分析するためのチェックテストが掲載されています。

パート2では、この7つの能力を高めるための具体的なレジリエンス・スキルを紹介。このスキルは、以下の7つに分類されます。

①自分をABC分析する:A(逆境)、B(思考)、C(結果)を整理し、自分の思い込みがもたらす感情的な影響を理解する
②思考のワナを避ける:早とちりや視野狭窄など、陥りやすい思考のエラーを事前に防ぐ
③氷山を見つける:無意識に根ざした深い思い込みを自覚する
④思い込みに挑む:自分の思い込みを検証し、逆境の原因を正確に捉え、柔軟な思考に導く
⑤大局的に捉える:逆境後の不安を引き起こす思考を変化させ、現実に即した問題解決を考え出す
⑥心を静めてフォーカシングする:呼吸コントロールやエクササイズなどで集中力を高める
⑦リアルタイム・レジリエンス:心の中で対話を行い、非生産的思考を追い払う

本パートではそれぞれのスキルを習得するための方法論やワークシートも添えられ、実践的な内容になっています。これらのスキルはすべてを完璧にマスターする必要はなく、一部を習得するだけでも仕事や実生活に大きな変化をもたらすと著者らは解説します。

最終章のパート3では、職場の人間関係、リーダーシップ、家庭や育児といったさまざまな場面でどのようにレジリエンス・スキルを実践するかという具体的な手法が紹介されます。身近な事例や実際の対話が盛り込まれており、読者自身の状況に重ねながら理解できます。

②『チームレジリエンス 困難と不確実性に強いチームのつくり方』

池田めぐみ、安斎勇樹著 日本能率協会マネジメントセンター 1,980円

チーム、組織としてのレジリエンスとは

ビジネスの現場では、売上不振や人手不足、SNSの炎上、社内コミュニケーションの停滞など、常にさまざまな「困難」に直面します。本書はそのような困難をチームで乗り越え、成長するための能力やプロセスである「チームレジリエンス」の考え方と実践方法を、最新の学術研究に基づいて紹介します。

本書では、困難を「個人やチームの存在価値、信念、目標達成を脅かすストレス要因」と定義しています。第1章では、まずチームが乗り越えるべき困難の性質について整理します。困難には、突如として発生する「急性的な困難」と、常に身近に潜んでいる「慢性的な困難」があります。そして、VUCAと呼ばれる時代の不確実性が、そうした困難から受けるストレスを助長していると著者は述べています。

第2章では、本書の核となるチームレジリエンスの概要と、それを発揮するための3つの基本ステップを紹介します。そのステップとは、①課題を定めて対処する、②困難から学ぶ、③被害を最小化する、というアプローチです。これらはすべて実行するのが理想ですが、業界や職種によって優先すべき順序は異なると著者は補足します。

また、チームレジリエンスを実践するためには、土台としてチームの「基礎力」を整えておく必要があります。その基礎力とは、チームの一体感、心理的安全性、適度な自信、状況に適応する力、ポジティブな風土の5つです。

以降の章では、前述の3ステップの実践方法について、具体的に解説していきます。第3章では、最初のステップである「①課題を定めて対処する」に焦点を当て、困難を解決可能な課題として整理し、プロジェクト化して取り組むための進行方法や、メンバーのストレスケアについて説明します。

第4章では、「②困難から学ぶ」をテーマに、困難をしっかりと振り返り、チーム内で教訓として言語化し、再現可能な対応策を共有するためのポイントが紹介されます。

そして第5章は「③被害を最小化する」ための対策として、チームのビジネスを取り巻く環境の変化に関する情報を常に収集しておくことや、チームに生じる困難の予兆を早期に察知する重要性などが語られます。

③『リーダーのための「レジリエンス」入門』

久世浩司著 PHP研究所 1,100円

「レジリエンス・リーダー」の3つの共通点

本書の著者は、レジリエンスを活用した人材育成に取り組む久世浩司氏です。久世氏は、グローバル化や働き方の変化などを背景に、日本には新しいリーダー像である「打たれ強いリーダー」、すなわち「レジリエンス・リーダー」が必要と考えるようになりました。そこでリーダーたちへの取材と心理学的な知見をもとに、レジリエンス・リーダーについて解説する本書を執筆しました。

久世氏は、レジリエンス・リーダーには3つの共通点があることに気がつきました。1つ目は、「自己認識力が高い」こと、2つ目は「どん底を経験している」こと、3つ目は、自分より他者を優先させる「ピープルファースト」であることです。

さらに取材を重ねる中で、久世氏はレジリエンス・リーダーには5つの強みが備わっていることを見いだしました。それは、①肝の据わった「楽観力」、②持続可能な熱意、③聖人君子ではない「利他性」、④根拠ある自信、⑤意思の力が支える「勇気」の5つです。これらに優劣や序列はなく、すべてが備わっている必要もありません。また、特別なものではなく、誰しもが1つまたはいくつか持っているものであると久世氏は語ります。

本書ではこれら5つの強みをそれぞれ章立てて、実在するリーダーたちの具体的な事例とともに解説していきます。例えば「楽観力」の章では、飲食店経営を行う株式会社湯佐和の湯澤剛氏を取り上げます。湯澤氏はエリートサラリーマンとして活躍していましたが、父の急逝により、莫大な負債を抱えた倒産寸前の会社を継承するという大きな逆境を経験。経営者として数々の修羅場をくぐり抜けたその根本には、「楽観力」という強みがあったと久世氏は分析します。

巻末には、読了後すぐに実践できる「今日からできる!レジリエンス・リーダーの7つの習慣」を付録として収録。「気持ちのクールダウンを行う」「ストレスの宵越しをしない」「ときおり立ち止まって半生を振り返る」など、シンプルかつ取り入れやすい項目が並んでいます。

④『レジリエンス:人生の危機を乗り越えるための科学と10の処方箋』

スティーブン・M・サウスウィック、デニス・S・チャーニー著、森下愛訳、西大輔、森下博文監訳 岩崎学術出版社 3,300円

精神科医で長年レジリエンスを研究している著者らが、ストレスや困難な状況に対処するための方法を、その裏付けとなるトラウマの心理学的、生物学的、社会的影響などの最新研究成果と併せて解説する。退役軍人やがん患者、虐待や誘拐などの被害者が、いかに過酷な状況を生き抜いてきたか、取材を基にした具体的なストーリーが紹介される。

⑤『レジリエンスが身につく 自己効力感の教科書』

工藤紀子著 総合法令出版 1,760円

自己効力感とは、自分の能力やスキルに対して、「自分ならできる」「自分ならきっとうまくいく」と信じられる認知状態のことを指す。AIの導入が本格化し、人間にしか持ち得ない能力が必要とされる今、未知の技術や状況に前向きに取り組む自己効力感が必要とされている。本書は、4つのアプローチから自己効力感を高める方法を解説する。

⑥『自分らしいレジリエンスに気づくワーク 潜在的な回復力を引き出す心理学のアプローチ』

平野真理著 金子書房 2,640円

自分が潜在的に持っているレジリエンスに気づき、発揮させることを目的にしたワークブック。①レジリエンスを捉え直す、②自分のリソースを確認する、③潜在的なレジリエンスに気づく、④自分のレジリエンスの価値を知る、という4つのステップを、12のワークで実践する。お茶の水女子大学准教授で、臨床心理学とパーソナリティを専門にする著者の調査研究を基にしている。

[編集] 一般社団法人100年企業戦略研究所
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