100年企業レポート vol.36 福井編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

福井県の100年企業に関する分析

福井の街並み

粘り強い、抜け目がない、効率よく利益を追求するタイプが多く、商人の才があったことから「越前商人」と呼ばれた福井県民。この県民性により、社長輩出率が高い県として知られている。また、日本総合研究所が分析したデータによると2014年から3年連続で「幸福度が日本一高い県」の実績を持ち、全国のなかでも充実度の高い県といえるだろう。

福井県の100年企業数は、578社であり、全国21位である。

海と山に囲まれた豊かな自然が魅力である。なかでも砂流が細かく、きらめく白い砂が特徴的なことから名付けられた若狭湾に面する「水晶浜」は、日本の砂浜八十八選にも選出されており、日本海側随一の美しさを誇る海といわれている。また、波の侵食で切り取られた断崖絶壁が約1㎞も続く「東尋坊」は、輝石安山岩の柱状節理でこの規模のものは世界に3カ所だけであり希少価値が高く、国の天然記念物にも指定されている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、福井県の特性を分析した。

地場産業が盛んなため「100年企業創出率」が高く
女性の就業率や共働き率も全国トップ

福井県は、眼鏡などの古くから続く地場産業が盛んであり、『100年企業輩出率』が高い。世界や国内でのシェアが高い製品を扱う企業が多く、これらの企業が地域の雇用を生み出しているため『有効求人倍率』も全国トップクラスである。一方、人口減少が進んでいることから『生産年齢人口数』は下位であるものの、いち早く人口問題に取り組んだ結果、女性の就業率や共働き率も全国トップである。こうした安定雇用や共働きの環境が整っていることが、「全47都道府県幸福度ランキング」で日本一という評価にもつながっているのであろう。

2.福井県の100年企業データ

① 創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比41.6%であった。次いで『大正以降』の26.0%、『明治前期』の17.3%、『江戸時代』の14.6%の順である。
福井県は、江戸時代に北前船の寄港地であったため、商業が盛んであった。古くから定着している業種である『清酒製造』のほか、商業では『呉服・服地小売業』や『酒小売業』といった代表的な老舗業種が多い。その他、明治時代に開湯したあらわ温泉もあることから、『旅館・ホテル』や伝統工芸品である『漆器製造』も入っている。

② 創業年TOP5

福井県の創業年TOP5は下記の6社である。
第1位の有限会社越前製紙工場は、全国で28位となっている。

③ 市町村別は『福井市』が最多

市町村別100年企業数では福井市が162社で最多であった。
1位の福井市では、『清酒製造業』が7社と最も多く、次いで『生菓子製造業』、『呉服・服地小売業』、『酒小売業』の3業種がそれぞれ5社である。
2位の越前市は、100年企業数71社であり、業種別に見ると『機械すき和紙製造業』が7社と最も多く、次いで『金物卸売業』、『酒小売業』、『紙・文房具小売業』の3業種がそれぞれ3社である。
3位の鯖江市は、100年企業数42社であり、業種別に見ると『漆器製造業』が7社と最も多く、次いで『呉服・服地小売業』が4社である。

④ 産業は『製造業』が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が297社(構成比51.4%)と最も多かった。次いで、『製造業』173社(同29.9%)、『建設業』59社(同10.2%)の順である。
福井県では、全国平均と比較すると製造業の占める割合が高くなっている。全国の生産額の約90%を占める鯖江市の眼鏡産業や、明治時代から昭和初期にかけて発展した繊維産業などの地場産業が福井の経済を支えてきたのである。そして近年では化学工業、電子部品・デバイス・電子回路製造業なども発展してきている。

⑤ 業種は『酒小売』が最多

業種別では、『酒小売』が23社で最多であった。次いで『清酒製造』も22社で2位であり、福井県は酒造りに最適な米とミネラル豊富な白山水系の上質な水に恵まれており、古くから酒どころとして発展してきた。現在も、それぞれの蔵元に専属の杜氏を置いて、昔ながらの製法を受け継ぎながら、酒造りを行っている。
同数2位は『呉服・服地小売』であった。温暖多湿な気候の福井県は、古くから繊維の産地として発展した。明治期には海外からの需要も高まり、日本最大規模の羽二重産地となった。大正~昭和期にかけては、生産品種の多様化・高度化が進んだ。このように福井の繊維産業は常に進化をしながら、日本の繊維産業をリードしていったのである。 越前漆器や若狭塗などの伝統工芸品も多く、『漆器製造』も上位に入っている。

⑥ 資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比52.9%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が22.6%、『5千万円以上~1億円未満』が3.2%の順である。
資本金トップは株式会社福井銀行(業種:普通銀行)が179億円。以下、三谷商事株式会社(業種:その他の建築材料卸売業)が50億円、サカイオーベックス株式会社(業種:絹・人絹織物機械染色業)が46億円の順であった。
上位12社のうち製造業が6社である。

⑦ 従業員数は『10人未満』が6割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比45.0%と最も多かった。次いで、『10~49人』が24.5%、『5~9人』が24.1%の順である。10人未満で6割を超える。 福井県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社福井銀行は従業員1,000人を超え、サカイオーベックス株式会社は従業員500人を超える。

⑧ 売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比58.8%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が33.2%、『10億円以上~100億円未満』が6.3%の順である。
売上高上位10社のうち製造業が4社、卸売・小売業が3社である。

⑨ 本業以外に貸事務所業を行っている企業は6社

福井県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は19社であり、構成比では全国37位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は6社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは製造業などであり、本業以外に貸事務所業を行っている企業は少ない。北陸3県は、本業で貸事務所業を行っている企業も少ないという特徴がある。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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