ケースで変わる…未上場中小企業の適正価格
~経営者が理解しておきたい事業承継[第2回]

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中小企業庁が発表した「中小企業・小規模事業者における M&Aの現状と課題」によると、2025年までに70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は、約245万人に上ります。その約半数が後継者未定の状態にあり、現状を放置すれば中小企業・小規模事業者の廃業が急増することになるでしょう。このような未来を前に、事業承継に不安を抱える経営者は多いのではないでしょうか。

そこで、日々事業承継に関する相談に対応する円満相続税理士法人の税理士・桑田悠子氏へのインタビューを3回にわたってお届けします。第2回は、未上場企業の価格算定方法と事業承継において重要な役割を果たす不動産の扱いについて詳しく見ていきます。

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未上場の中小企業の価格はどう決まる?

当所に相談にいらっしゃる中小企業経営者は、すでに事業承継を視野に入れています。中でももっとも多いのは親族承継ですが、具体的な作業へ移行する前に「自社の資産価値は、どのぐらいの額なのか」を知りたくなるのは当然のことです。しかし、正確な数値を把握している経営者は実はそれほど多くありません。

「出資したときは○○円だったから、いまも同じぐらいだろう」とおっしゃられるので「いえいえ、そんなことはないはずです」とお答えするところから、やり取りが始まります。

株価をしっかり算定することで、初めて事業承継のスタートラインに立てるのです。

企業の株価を算定するには3つの方法があります。1つめは上場している同業他社の株価に比準させて算定する「類似業種比準価額方式」です。2つめは「純資産価額方式」で、「この会社をいま解散させたらいくら残るか」を、財産と債務から算定します。そして3つめは「折衷」で、先に述べた2つの方法を混ぜ合わせながら算定していきます。

相談者の中には、節税のため「もっとも低い株価を算出できる方法を」と希望される方もいれば、「親族間のバランスを図るため、できるだけ現状を正確に反映させた株価を」と希望される方もいらっしゃいます。このためケースバイケースで、お客様の目的に応じた最適な算定方法を選択することになります。

株価が算定できれば「もしいまあなたが亡くなったら、このぐらいの相続税がかかります」「いま生前贈与したいのであれば、このぐらいの贈与税かかります」といった見通しが立ってきます。

その上で現状を分析すると「株価の上昇」だけでなく、「株式の分散」など、さまざまな問題が浮き彫りになってくるのです。

不動産は事業承継においてどのような役割を果たすのか?

事業承継にあたっては、会社に関係する株式などの資産だけでなく、不動産の処遇についても併せて考えましょう。

経営者の中には、不動産の所有が個人になっているのか、法人になっているのかをあまり意識されずに過ごしている方もいます。そのような場合には、まず不動産の所有者の整理を行い、どの不動産をどの相続人へ引継ぐのかを、決めることになります。

事業承継と不動産の関係と聞くと、まず「節税のため」と考える方が多く、実際に節税になるケースもあることも事実です。しかし私は、不動産の価格自体が今後下がる可能性や、税制が変わる可能性も鑑みたうえで、本当にその不動産が資産価値として高いのかどうかを検証してから購入するべきだと考えています。その点をクリアすれば、現行の税制では、お得に不動産を承継することができるので、選択肢の1つとしては、良いと思います。なぜなら、相続税評価額が数千万円でも、時価は1億円や2億円というようなケースがあるためです。

事業用宅地の場合は「小規模宅地の特例」で、相続税を減額できるケースがあります。また経営者が個人で賃貸物件の経営などを行っている場合、承継を機に資産構成を見直した結果、法人化を検討することも。所得税は累進課税なので、法人税の方が安く抑えられるというケースがあるのです。ただし個人から法人へ動かす場合に課税される「譲渡所得税」や「登録免許税」等の流通税など、移転に際して発生するコストをきちんと回収できるモデルかどうか、シミュレートする必要はあります。

スムーズな承継に必要不可欠なのは「タイミング」

ここまで紹介してきたように、事業承継は、経営陣や家族の共同作業だけでは、スムーズに進まない可能性があります。とくに親族内の事業承継を検討している人にとっては、相続に関する専門知識やノウハウをきちんと保有している税理士のサポートが重要です。

先程もお話しした通り、事業承継は税務面から見ると、自社の株価を正確に算定することからスタートします。

「将来的に事業承継を考えているなら、まず現状分析を急ぐ」という意識を持っていただくと良いのではないでしょうか。そして、承継にあたり想定より多くの税金が生じそうな場合には、その解決を進めていくことで、具体的な承継プランが見えてきます。

事業承継には「人」「資産」「知的財産」という3つの要素があります。そのすべてをバランスよく承継させることが大切です。経営者自身の健康状態の変化や、社会状況を機に承継を急ぐことにならないよう、後継者を見定めたタイミングで、前倒しのスタートを検討されることをオススメします。

最終回のテーマ「事業承継を考え始めた経営者は一体誰に相談するべきか?」
事業承継を含む相続を専門とする円満相続税理士法人・桑田氏にお話を伺う本連載。最終回となる次回は、事業承継を安心して任せられるパートナーの見極め方について解説します。

お話を聞いた方

桑田 悠子

円満相続税理士法人 代表社員税理士

学生時代にアパレル・化粧品事業を開業した後、祖父の死をきっかけに相続のプロになることを決めて税理士業界に飛び込む。税理士法人山田&パートナーズを経て、円満相続税理士法人のパートナーに就任。相続や事業承継を手掛けるほかに、弁護士法人・税理士法人・一般企業などを対象とした相続税研修会や、事業承継研究会などを開催。「難しいことを、分かりやすく、穏やかに話す」ことが特徴。生前対策・事業承継対策・相続税申告を数多く手掛け、SNS での発信も人気の相続専門税理士。
円満相続税理士法人:https://osd-souzoku.jp/
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