【研究員コラム】GDPはどう増減する?~経営者のためのマクロ経済学

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【研究員コラム】GDPはどう決まる?~経営者のためのマクロ経済学

【研究員コラム】GDPはどう決まる?~経営者のためのマクロ経済学では、総需要によってGDP(国内総生産)が決まることを説明しました。今回は、マクロ経済学でGDPがどのように増減するのかについて解説します。

1国全体の需要である「総需要」は、「民間消費」「民間投資」「政府支出」「純輸出」の4つの項目からなります。これら項目の額が大きくなればGDPは増加し、小さくなればGDPは減少します。

民間消費

(所得から租税を引いた)可処分所得が増えたとき、家計(世帯)は消費を増やします。前回、家計が可処分所得の一定割合を消費にあてることを解説しました。家計の消費を増減させる別の要因として、今回5つあげることにします。1つめは、先行きの可処分所得に対する見通しです。来年の可処分所得が増える見込みがある場合、それを見越して今年の消費を増やす行動を取るようになります。2つめは、資産価格の予想です。地価(土地の価格)が上昇すれば、保有する不動産の価値が上がることから、所得が上がったときと同じように消費を増やそうとするでしょう。3つめは、家計の年齢です。一般的に所得は、中年をピークとした山なりのカーブを描きますが、多くの家計は生涯を通じて可能な限りフラットに消費をしようとします。中年世代が多い国では、所得に占める消費の割合が低くなる傾向があり、高齢化が進んだ国では、所得に占める消費の割合が高くなる傾向があります。4つめは、将来の不確実性です。不確実性の度合いは、「失業によって所得が下がってしまうリスクは、正社員よりも非正規社員のほうが高い」といったように、個々人の置かれた状況や経済状況によって異なります。5つめは、政府による減税です。家計が稼いだ所得から引かれる租税が少ないほど、消費にあてられる額は大きくなります。

民間投資

ここでは、民間投資のなかで金額規模の大きい「企業の設備投資(機械など新たな生産設備を購入すること)」を取り上げます。マクロ経済学において投資とは、「現在の儲けを犠牲にして、将来の儲けを増やす行為」を指し、「現在支払う費用」と「将来得る利潤」が各々どれくらい増えるかを比較する必要があります。投資の規模を決める要因を、4つあげることにします。1つめは、生産するモノやサービスの価格の先行き予想です。将来、高く売れる見込みがあるほど、企業は現在の投資を増やそうとします。2つめは、生産設備の価格です。効率化を図るために機械を購入したいと考えても、生産するモノやサービスの価格と比較してその機械の価格が相対的に高い場合は、機械の購入を控えてしまうかもしれません。3つめは、将来機械を売却するときの価格です。欲しいと考えている機械が、購入時の価格とさほど変わりなく将来売却できる見込みがあれば、購入する判断にいたる可能性は高くなります。4つめは、資本減耗率(1年の間に機械が壊れて使えなくなってしまう確率)です。仮に1年後に機械を高く売却できると分かっていたとしても、途中で壊れてしまえば売却できなくなってしまいます。つまり、資本減耗率が高い場合は、投資の費用が高くなり、投資に対する需要が減ってしまいます。

政府支出

財政政策は、政府支出にかかわる政策と、さきほど民間消費のところで登場した租税にかかわる政策の2種類に区別されます。国際連合が定める国民経済計算(SNA, System of National Accounts)という会計基準では、一般政府(中央政府と地方政府と社会保障給付を行うことを目的とする組織である社会保障基金)の機能を「一般公共サービス」「防衛」「公共の秩序・安全」「経済業務」「環境保護」「住宅・地域アメニティ」「保健」「娯楽・文化・宗教」「教育」「社会保護」の10分類と定義していますが、これらさまざまな目的で、政府は支出を行っています。

純支出

純輸出(国外への輸出額から、国内への輸入額を引いた額)が増える要因を、2つあげることにします。1つめは、「家計の嗜好」や「企業の方針」の変化です。「米国で日本製の乗用車の人気が高まれば」あるいは「中国のスマホメーカーが日本の半導体に対するニーズを高めれば」日本からの輸出が増え、「日本で米国製の乗用車の人気が高まれば」あるいは「日本のスマホメーカーが中国の半導体に対するニーズを高めれば」日本への輸入が増えることになります。2つめは、国家間におけるモノやサービスの相対的な価格です。どれだけ日本車の人気が高くても、その価格が相対的に高いものであれば、需要は減ってしまいます。

乗数効果

ここまで、総需要を構成する項目の額が増えれば、それを満たすようにGDPが増えることを示ししました。マクロ経済学では、総需要を満たすように総取引量が決まると仮定しますので、民間消費などの総需要を構成する項目が1単位増えると、総生産であるGDPは1単位増えることになります。そして、GDPが1単位増えることで、新たな所得が1単位生まれ、所得の一部である可処分所得の一定割合分だけ民間消費が創出されます。この民間消費の創出分を満たすように、GDPがまた新たに増えることになりますが、このような無限の繰り返しによって総需要の増加分よりも多いGDPが創出される効果を、乗数効果と呼びます。

【参考文献】
塩路悦朗(2019)『やさしいマクロ経済学』日本経済新聞出版社
内閣府ホームページ 国民経済計算(GDP統計)
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html(2021年11月5日閲覧)

著者

安田 憲治

一般社団法人 100年企業戦略研究所 上席研究員

一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。塩路悦朗ゼミで、経済成長に関する研究を行う。 大手総合アミューズメントメント企業で、統計学を活用した最適営業計画自動算出システムを開発し、業績に貢献。データサイエンスの経営戦略への反映や人材育成に取り組む。
現在、株式会社ボルテックスにて、財務戦略や社内データコンサルティング、コラムの執筆に携わる。多摩大学社会的投資研究所客員研究員 。麗澤大学都市不動産科学研究センター客員研究員。
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