CSV(共有価値創造)の重要性。経営戦略・事業戦略にも重要な視点

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※百計オンラインの過去記事(2016/03/26公開)より転載

これまで多くの企業がCSR(企業の社会的責任)に取り組んできました。CSRとは、企業が社会に与えた影響に対応し、社会とともに発展をしていく活動を意味します。具体的には、環境への取り組みや安心・安全なサービスの提供、コンプライアンスの実施、コーポレートガバナンスの向上、寄付などが挙げられます。

しかしながら、ここ数年でCSRにとって代わる新たな概念が提唱されるようになってきました。それは「CSV(共通価値創造)」と呼ばれるものです。

共通価値の創造とは?

CSVとは、従来のCSRが抱えた限界を克服し、経済的価値を創造しながら、社会的な課題の解決を図り社会的価値も創造するアプローチを指します。従来のCSRでは、寄付や社会貢献活動(フィランソロピー)を通して社会的な問題の解決を図り、自社のイメージを向上させることを行ってきました。しかし、これは企業が本来目指すべき利潤追求とは相関関係がほとんどなく、大きな隔たりがありました。結果として、企業は自社のイメージ向上のみに関心をもつようになり、新たな価値創造や社会変革へとつながるような行動にうつすまでには至りませんでした。

そこで、2011年に米ハーバード大学教授で企業戦略の大家であるマイケル・ポーター氏が「CSV」を提唱しました。従来のCSRから一歩踏み込み、事業戦略の視点で捉えた戦略的CSRともいえ、競争力強化にも焦点をあてています。価値創造を図り、経済・社会における付加価値そのものを大きくし、企業が経済的にも社会的にも付加価値を共有できる体制を構築すべきだとしています。こうした考え方が今や大企業を中心に浸透するようになってきました。

CSVによる成功事例-自動車メーカーなど

さて、利益も得ながら社会貢献を行うというCSV活動で成功している事例はあるのでしょうか。実は日本の場合、企業風土的にもCSVへの親和性が高いケースが多く見られます。

マイケル・ポーター氏はCSV実現のためには3つの方法があると述べています。その3つとは、製品と市場を見直す、バリューチェーンの再定義、企業が拠点を置く地域を支援する産業クラスターをつくることです。これらの観点から、日本企業や外資系企業で成功している事例を紹介いたします。製品と市場を見直すという観点では、トヨタ自動車株式会社など大手自動車メーカーによるハイブリッド車の開発の例が挙げられます。環境に配慮した自動車をつくり販売することで、新しい市場をつくることに成功しました。

バリューチェーンの再定義は、物流の効率化やサプライヤー育成が該当します。この成功事例としてはユニリーバの例が挙げられます。ユニリーバ(実際にはヒンドゥスタンリーバ)はインド市場でのシェアを拡大させるため、農村部で自社製品の販売員トレーニングを実施しました。そして販売員を養成して自社製品を農村部で販売してもらい、製品販売網を急激に拡大させています。これは雇用拡大にもつながる好事例で、産業クラスターの観点でもあてはまる事例といえます。

他にも、建設機械メーカーが海外で販売店を育成することによって販売網を拡充したケースや、原材料を供給する農家の支援を行うことで農村地域に経済的安定をもたらしたケースなど、CSVの成功事例は意外に多く存在しています。

世界を相手にする競争力とは?

このように、CSVでは自社のイメージ創出や宣伝だけではなく、経済的な結果を出すことが重要になります。CSVにより新たな市場を創造するためには、企業は事業活動に関連する社会問題の解決に取り組むべきです。こうした取り組みは、最終的に社会と共有できる価値創造として、ノウハウやスキルの構築につながると考えられます。

企業は拠点を置く地域において、ボランティアなど従業員による社会運動を許容、支援すべきでしょう。そして、事業戦略と社会との間に強い関係が構築できるような仕組みづくりに力をいれなければなりません。こうした仕組みは模倣が難しい場合が多く、いかに先手を打つかが企業にとって重要になるといえるでしょう。

今やどの企業も世界を相手にしなければなりません。そのための競争力をつけることを目的に、社会と共有できる価値の創造を追求していきます。これは従来のCSRのような資金提供ではなく、スキルや人脈、専門知識を提供し、企業側と支援側が共にwin-winの関係を構築していくことです。これにより世界的な競争力強化につながると言えるでしょう。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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