50代の転職が倍増、シニア人材の流動化進む
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※百計オンラインの過去記事(2019/05/15公開)より転載
年金の支給年齢引き上げや定年後の再雇用が広まる中、シニア人材の流動化が進んでいます。その中でも人材市場では、50代の転職が倍増しているといいます。少子高齢化が進行する中で、大手企業が抱え込んできたシニア人材の流動性がますます高まりそうです。
人員整理で狙い撃ちになる「45歳の壁」
先ごろ、富士通が45歳以上の社員をリストラ対象にする件が耳目を集めました。同社とグループ企業の間接・支援部門に所属する45歳以上の正社員と再雇用社員を対象に、早期退職希望者を募集するというものです。
同社は2018年10月から、「成長に向けたリソースシフト」として5,000人規模での人員再編を開始しました。1月末までに2,850人が早期退職に応じたといいます。
「45歳以上」を狙った人員整理を実施するのは富士通だけではありません。この45歳が一区切りとされるのは、団塊ジュニア世代で母数が多いことと、就職氷河期に直面してビジネスやマネジメントに必要な経験を十分に積めなかった点があるとの指摘があります。
また、45歳であれば他のフィールドでも活躍できるという見立てもあるようです。
ただ、30歳で結婚・子どもを持った人であれば、45歳はちょうど子どもが高校生になろうかという年頃でしょう。これから本格的に教育費が必要になるのに、そのタイミングで長年勤めた企業を出ていかなくてはならないとなると、生活設計に狂いが生じるのは間違いありません。また、彼らに続く下の世代にも、勤め先への危機感を感じさせるのではないでしょうか。
大手企業から中小・スタートアップに移る50代が増加
一方、長年勤め上げたスキルを武器に、転職市場が活況になっているのが50代の求職者です。建設特需で需要が増加している現場監督などの技術者のほか、経理などのスキルを持つ人材が大企業からベンチャー企業に移るケースがみられるといいます。定年延長が当たり前となった現在、50代で転職したとしてもあと10年は現役として働くことができます。人材不足に悩むスタートアップや中小企業の中で、大手企業を退職したシニア人材への需要が高まっているのです。
リクルートワークス研究所などが2019年3月に実施した「“定年前後の転職者”の採用・受け入れ実態調査」では、定年前後(55歳~64歳)の転職者を受け入れたことがある企業の採用担当者のうち、今後も採用意向がある人は約6割に上りました。「新しい知識や物の見方を得られた」「周囲のメンバーへのスキルアップに繋がっている」といった好意的な意見が見られる一方で、「健康状態や体力面に不安がある」「仕事を覚えるのに時間がかかる」「これまでの仕事のやり方を改められない」「目標の設定が難しい」「仕事を覚えてもすぐに定年を迎えてしまう」などの点が課題として指摘されています。
また、“定年前後の転職者”に対する印象について、転職者を受け入れる意向をもつ同僚や上司の多くは「人柄が良い」「礼儀正しい」「人当たりが良い」という印象を抱いています。しかし、「職場にすぐなじんでいる」「話しかけやすい」という点については、シニア世代の転職者に対する受け入れ意向によって差がついており、スキルとともに人柄もシニア転職を左右するファクターのひとつでもあるようです。
採用担当者は、転職者と周囲のコミュニケーションをケアしたり、本人と定期的に面談したりといったバックアップが必要でしょう。
一方、転職者本人に対する調査では、転職先が未経験職種だったという人が約48%と半数近いにも関わらず、「転職してよかった」と答えた人が約6割に上っています。
シニア転職でリタイア前に「アウエー」を経験
長年勤め上げた会社から離れ、一からやり直すというのは容易ではありません。とくに年齢が上がってくればくるほど、難しさは増すでしょう。
しかし、どれだけ愛着がある組織や企業であっても、いつかは離れなくてはならない日がきます。ならば、なるべく早い時期から立場や所属を離れ、年代の違う人たちに入り混じって「アウエー」を経験するのも悪くないはずです。
著者
株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所
1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。