都市政策の第一人者であり、明治大学名誉教授の市川 宏雄氏が執筆したコラムを定期的に掲載していきます。日本国内における「東京」の位置づけと役割、世界の主要都市との比較など、さまざまな角度から東京の魅力を発信していきます。
「都市と五輪」をコラム全体のメインテーマとしてとらえ、各回にてサブテーマを設定しています。全10回にわたりお届けします。
さて首都直下地震については、ご存じのように、この東京では1703年元禄関東地震、そしてその200年後の1923年の関東大地震が有名です。いま分かっていることは、大体この規模の地震は200年位がインターバルであるということです。すると次は2100年ですから、これは当分来ないだろうと思われます。
では何があるのかというと、その間はマグニチュード7~7.5程度の地震が数多く発生しています。天明小田原地震や安政江戸地震など、過去には多く発生していましたが、最近はないわけです。これはきっと起こるだろうと言うことで、中央防災会議は巨大地震よりもM7クラスの地震が起きる可能性を指摘しています。
では一体どこが危ないのかという話ですが、実は東京全体が危ないというわけではありません。東京都の示す資料によると、p5下図の青い部分は、焼失する場所が一番少ない地域です。ですから東京は木賃(木造賃貸)ベルト地帯周辺、つまり山手線外側から環七辺りまでが一番危なく、燃えやすいわけです。もちろん全部が燃えるわけではありませんが、この辺りが特に危ないと言われています。今回の東京オリンピックゾーンは、このエリアから外れています。
それから次は地盤です。やっぱり地盤が弱いのは、川の方ですとか、北側ですけれども、この観点からオリンピックを考えると、その開催自体それほど問題はないだろうということが分かっています。
また首都直下地震の被害想定シミュレーションがありますが、夏は比較的冬よりも被害が少なめと言われていますが、それでもやはり入念に想定すべきかと思われます。
【東京都区部の地震時等に著しく危険な密集市街地】
区名 | 地区数 | 面積(ha) |
文京区 | 1 | 13 |
台東区 | 3 | 29 |
墨田区 | 19 | 389 |
品川区 | 23 | 257 |
目黒区 | 3 | 47 |
大田区 | 4 | 61 |
世田谷区 | 6 | 104 |
渋谷区 | 3 | 45 |
中野区 | 9 | 152 |
豊島区 | 5 | 84 |
北区 | 21 | 270 |
荒川区 | 8 | 126 |
足立区 | 8 | 107 |
合計 | 113 | 1,683 |
これはどこが極めて危ないのかを表しています。木造密集地域、これは不動産を買う人にとっては重要な情報で、一体どこが危ないのかということは知っておく必要があります。ただし全部について危ないということではなくて、ここは燃えやすいわけです。こうしたエリアは延焼しやすいことです。
東京都の危険度判定(総合危険度)
(東京都都市整備局HPより引用)
あとは最も有名な、東京都による危険度判定データです。これは総合危険度で、4種類を全部合体させたものですが、これは町丁目別でどこが危ないのかということが全て分かっています。ただしこれはだいぶ以前のデータなので、その後に不燃化が進むなどして状況は変化していますが、やはりこれは要注意の部分です。これを良く見てもらうと、都心は極めて安全なことが分かります。つまり深刻な事態はあまり起きない場所であると言えるわけです。
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