新時代のリーダーは奉仕して導く!? 「サーバントリーダーシップ」
〜中小企業経営者のための注目の経営トピックス[第14回]

従業員の価値観が多様化する中で、リーダーに求められる資質も変化しています。

部下がイキイキと仕事に向き合うためには、部下自身の自主性を引き出すことが重要だと考えられるようになっており、「奉仕するリーダー」を意味する「サーバントリーダーシップ」という考え方が注目を集めています。

メディアでも注目されている企業経営に関するトピックスを解説する本連載。今回は、支配型リーダーとの違いや、サーバントリーダーに求められる資質について解説します。

サーバントリーダーシップとは?

「サーバント」とは「奉仕する人」という意味を持つ言葉です。

そして、サーバントリーダーシップとは「奉仕を前提に、組織やその構成員を導いていく」というリーダーシップのあり方を指します。もちろんこれは、「会社に奉仕する」という意味合いではありません。体制や福利厚生の見直しなども含め、組織全体の改善を前提に発揮すべきリーダーシップのことを指します。

サーバントリーダーシップの概念は、いまから50年以上も前の1969年に、アメリカのロバート・K・グリーンリーフ氏が提唱しました。グリーンリーフ氏は米国最大手の電話会社「AT&T」において、長らく人材マネジメントについての研究開発、教育に携わり、後年はそのノウハウを活かすべく、教育コンサルタントに転身した人物です。

彼は「自分自身がサーバントリーダーかどうか」を見極めるために、以下のポイントを確認すべきと助言しています。

・自分が奉仕している人々は、人間として成長しているか?
・奉仕されることで彼らはより健康になり、 賢く自由で、自立した存在となっているか?
・彼ら自身がサーバントリーダーシップを受け継ぎ、発揮しているか?
・社会的弱者に恩恵を与えているか?

参考:NPO法人日本サーバントリーダーシップ協会「提唱者について」
https://www.servantleader.jp/about/greenleaf

サーバントリーダーシップが求められるようになった背景

グリーンリーフ氏がサーバントリーダーシップを提唱した当時のアメリカでは、ベトナム戦争の泥沼化やウォーターゲート事件の発生など、政治面での迷走が目立ち始めていました。

国のリーダーである大統領への国民の不信感が高まり、新たなリーダー像を模索する中で、サーバントリーダーが求められるようになったのです。

それから50年もの月日が経過した今日、世の中では企業のダイバーシティやグローバル化が進み、多彩な人材を適切に束ねる必要性が高まる中で、またしてもリーダーシップに関する議論が活発化しています。

さらに、ビジネスを取り巻く環境が急速に変化を続けるいま、変化への順応力を高めるため、より現場に近いメンバ―が迅速に意思決定を行える組織づくりが重視されるようになっています。そうした流れを受け、メンバーの自律性を育むサーバントリーダーシップに白羽の矢が立ったのです。

少子高齢化が進み、終身雇用制度が瓦解した日本においても、こうしたリーダーシップの重要性は高まっていくと予想されます。もはや「長時間労働が可能な日本人男性」というような画一的なメンバーのみで企業を構成することは、できなくなっているためです。

「支配型リーダーシップ」との違い

これまで主流だったリーダーシップは、従来のトップダウン型経営において発揮されていた「支配型リーダーシップ」です。リーダー自らが先頭に立って命令を下し、メンバーはリーダーの指示に忠実に従うことを求めるものです。

支配型リーダーシップの下では、リーダーの独断で今後の方針が決められるため、迅速に経営判断や軌道修正を行うことができます。一定の品質を備えた製品やサービスを大量かつ迅速に世に送り出していく高度経済成長期には大いに機能してきました。

しかし、現在は消費者のニーズが多様化し、多様な商品やサービスに対応していく必要があります。ビジネスの環境変化が激しくなり、リーダーがベストな解決策を一人で考え、指示し続けることは難しくなっているのです。

サーバントリーダーは、一人ひとりの意見に耳を傾けて理解を共有することで相手の将来性・可能性を引き出すため、組織全体の成長にもつながり、より革新的な、これまでにない業務や課題の解決方法を見つけ出しやすくなります。

また、働く人の価値観が多様化する中で、「こうであらねばならない」から「みんな違って、みんないい」へと変わり、「個」として受け入れ合うことが重要視されています。支配型に偏ってしまえば、組織はリーダーの能力に左右されることとなり、多様性は発揮されません。

サーバントリーダーシップでは、メンバーの意見を傾聴し、自主性を尊重するため、自律性が育まれます。信頼関係が構築されれば、リーダーが示す方向性に基づき、皆がそれぞれの考えを元に動くようになります。

サーバントリーダーの10の特徴

それでは、サーバントリーダーとは具体的にどんなリーダーなのでしょうか。ここからは、サーバントリーダーの10の特徴を紹介していきます。自分自身のリーダーとしての振る舞いを振り返りながら読み進めてみましょう。

共感
相手の立場に立ちながら、部下の気持ちを理解し、共感する。

傾聴
部下の望みを意図的に聞き出す。同時に自分の内なる声にも耳を傾け、その両面からリーダーの存在意義を考える。

説得
権力に依拠することなく、また服従を強要することなく、部下を説得する。

癒し
組織やチーム内の欠点、弱みを責めるのではなく、癒やすことで改善を目指す。

人々の成長に関わる
働き手として成果や貢献を超え、部下一人ひとりの存在そのものに内在的価値があると信じる。そしてその成長に深く関わる。

コミュニティづくり
同じ制度内に従事する人たちの間に、コミュニティを創り出す。

気づき
リーダーの立場におごらず、倫理観や価値観を高めながら、自己検閲に努める。

概念化
目先の目標だけでなく、大局的に物事を見る。自身のチームだけでなく、組織全体の目標を考えた上で、部下を導く。

先見力
過去の教訓や現在の状況を鑑みつつ、将来の方向性を見定める。

管理力
部下から「あの人のようなリーダーになりたい」という信頼を得る。

参考:NPO法人日本サーバントリーダーシップ協会「スピアーズによるサーバントリーダーの属性」
https://www.servantleader.jp/about/10s

これからの新しいリーダーシップ

新たな理想のリーダー像は部下の話に耳を傾け、能力を肯定し、協力しながら組織としての目標達成を促していくリーダーです。

メンバーの多様化が進む昨今、どんなカリスマであっても、リーダー一人で社会の変化に対応していくことは困難でしょう。今後は日本企業の経営者も、「時代が求める新しいリーダー像」への理解を深めていく必要がありそうです。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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