不動産投資の魅力
1-2. 不動産とは

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目次

不動産投資を行うのであれば、まず「不動産とは何か」を理解しなければなりません。不動産といえば、誰もがイメージするように、住宅もあれば、オフィス、商業施設、ホテルなどさまざまなものがあります。

最初に覚えてほしい不動産に関する公式・考え方は「割引現在価値」です。不動産のように時間を超えて存在し続けるモノ(耐久消費財)の価値をどう測定したらよいのか。いくらで買うのかという価格Pを決めなければなりません。

それにはゴードン・グロース・モデル(Gordon Growth Model)という投資するときに価値を決める有名なモデルがあります。レオン・ワルラス(Léon Walras)という新古典派の経済学者が最初に整理した概念で、これを現在価値と言います。

投資対象の不動産を保有すると、家賃が継続的に発生し、不動産が存在する期間だけ収益を得られます。その収益が将来いくら発生するかは誰も分かりませんが、予測は可能です。現時点でいくら収益が上がっているか、過去にどれぐらいの収益が上がっていたのか、それを記録した「トラックレコード」を見れば、将来の収益(純収益Y)を予測できます。しかし、予測はさまざまな要因によってブレが生じ、外れることも想定しなければなりません。

投資対象には、不動産だけでなく、株式も国債もあるので、比較するには現在価値に割り戻す必要があります。公式の分母にくるのが割引率です。これを計算するには、まず最もリスクの少ないリスクフリーレート(安全資産の利回りRf)を基準に考えます。もし同じリターンであればリスクが低いほうがよいことは、誰もが納得するでしょう。

では、日本の国債と、目の前にある銀座や日本橋の不動産、どちらに投資するか。リターンがまったく一緒であるなら、きっと国債を買うでしょう。なぜなら、不動産は地震があれば建物が倒壊するかもしれない。家賃も下がって、現在の収益も減るかもしれない。不動産のリスクが国に比べて大きいことを、誰もが知っているからです。

投資を始める時に、日本国債(JGB, ジャパン・ガバメント・ボンド)の10年物の価格をベースに考えると、これよりも不動産のリスクが高いはずなので、リスクプレミアム(リスクの上乗せ分Rp)が分母に加わります。さらに、家賃の成長が今後見込めるかどうかの成長率Gを織り込んだものが割引率になります。

不動産の収益Yは、これによって割り引かれるので、国債より高くないと魅力がありません。割り引いた後の「割引現在価値」で比較して、不動産のほうが高くなるはずと思う人は不動産を買うし、国債のほうが高いと思えば国債を買えばよいわけです。

不動産投資において、リスクをどう見ればよいのか。今後、不動産市場は成長していくのか縮小してくのか。こうした見通しを考えることが、不動産投資をするときに重要になります。

「不動産とは何なのか?」の問いに戻りましょう。不動産は、英国ではプロパティ(Property)、米国ではリアルエステート(Real Estate)と、違う言葉が使われています。不動産向けデジタル技術も、欧州ではProp Tech、米国ではRE Techと言われます。

ドイツ・フランクフルトにある欧州中央銀行(European Central Bank)で、不動産を測定する国際指針のガイドラインを作成するために、2014年に欧州中央銀行、IMF(国際通貨基金)、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)が中心となった会議が行われました。この時に有識者として招かれたのが、マサチューセッツ工科大学のデイビッド・ゲルトナー教授、アムステルダム大学のマルク・フランク教授、そして私、清水千弘でした。この時に、私は「What is Property?(不動産とは何か)」の部分の執筆を依頼されたのですが、非常に難しい問題でした。

ゲルトナー教授は、米国のビジネススクールでよく使われている『Commercial Real Estate Analysis and Investment』という有名な教科書を執筆し、不動産を定義しています。この定義に基づいて議論したのですが、なかなか国際的な合意を得ることができずに、夜中まで議論が続いたという辛い思い出があります。

不動産の特性を考えるうえで「スペースマーケット(空間市場)」と「アセットマーケット(資産市場)」の2つがあることを理解する必要があります。空間市場とは、不動産を貸す人と借りる人がいて、賃貸料が成立する市場です。テナント(借主)とオーナー(貸主)とのリース契約で取引するレンタルマーケットであり、地代や家賃などの賃貸料は需要と供給で決まります。これからの空間市場を考えると、人口が減り、就業者数も減っていくと、需要は減ることになります。それに対して空間ストック(供給)がどういう状況になるかで賃貸料も決まっていくでしょう。

これに対して、アセットマーケットは、不動産のインカム収益によって価格が決まる市場です。価格が上がったか下がったかで需要が変化する点が、スペースマーケットとは違います。インカム収益Yとして家賃が決まったとしても、価格を決定するには割引率がどうなるのかを見なければなりません。リスクフリーレート、リスクプレミアム、成長率がどう変わるのか。それらは金融政策によっても変わりますから、そのことを理解する必要があります。

不動産市場には、さまざまなセグメンテーションがあります。地理的条件としては、東京都心部なのか、23区内か、大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台なのか、小さい町なのかなど、どこの不動産に投資をするのか。まったく同じ建物でも、立地によってリターンもリスクも変わります。物件(プロパティ)タイプも、住宅、オフィス、倉庫・物流施設、商業施設、ホテル、病院・ヘルスケアなどで、それぞれリターンもリスクも違います。

欧州中央銀行で「不動産とは何か?」を議論する中で、不動産は最も重要なノンファイナンシャルアセット(非金融資産)であると、全員が合意しました。公的統計として測定されている重要な資産であることは確かです。しかし、株式や債券のようなファイナンシャルアセット(金融資産)は、誰がどの場所で保有しても価値は変わりませんが、不動産は、誰が保有して使用するのか、どの場所で保有するのかによって、経済的な役割や価値が変化していきます。

さらに、不動産であっても「マーケットが無い」場合もあります。オーナーに完全に支配(occupied)されている不動産には誰も投資できません。ここでは不動産投資について考えていますので、投資できないマーケットは対象外になります。オーナーが自ら保有し続けている住宅をいくら売ってほしいと言っても手放さないでしょう。

不動産の分類には、住宅、オフィス、商業施設(リテール)、工場のほかに農地もありますが、投資市場が存在することが重要です。投資家の関心は、投資可能な投資市場が存在すること、都市部であって流動性があることです。

Classification in Official Statistics(公的統計における分類)
不動産は、国民経済計算(SNA)という世界各国が公表している公的統計の中にさまざまな形で位置付けられています。国民経済計算として不動産を測定する考え方の中には、投資対象として不動産の価値を測定するための多くのヒントがあります。国民経済計算では不動産がどのように減価していくのかに着目しています。これは投資をしていくうえでも重要な役割・機能を持ちます。ビッグデータの解析によって、不動産の価値がどのように減価するのかも明らかになってきています。

Classification in Building(建物における分類)
不動産は、建設市場とも深い関係があります。建設経済に関するさまざまな統計の中で、最も重要なのは建築費がこれからどうなるのかでしょう。将来の不動産投資を考えるうえで不可欠な要素です。これらの統計も国民経済計算の中で世界的に比較できる状態で定義されているので、現状がどうか、今後がどうなるのかを比較しながら見ることができます。

Product Classification(製品の分類)
不動産は、用途別に、住宅(Residential)、ビジネス(Business)、工業(Industrial)と倉庫(Warehouses)、農業(Agricultural)に分類されていますが、投資の中心であるビジネスと住宅の部分を注目する必要があります。

不動産投資を考えるときには、オフィスか、商業施設か、住宅かなどの「投資分野」、東京か、地方の中核都市かなどの「地理的条件」が重要になりますが、不動産投資市場として十分な「品質と規模」を有しているかを注視する必要があります。

スピーカー

清水 千弘

一橋大学教授・麗澤大学学長補佐(特任教授)

1967年岐阜県大垣市生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科博士後期課程中退、東京大学大学院新領域創成科学研究科博士(環境学)。麗澤大学教授、日本大学教授、東京大学特任教授を経て現職。また、財団法人日本不動産研究所研究員、株式会社リクルート住宅総合研究所主任研究員、キャノングローバル戦略研究所主席研究員、金融庁金融研究センター特別研究官などの研究機関にも従事。専門は指数理論、ビッグデータ解析、不動産経済学。主な著書に『不動産市場分析』(単著)、『市場分析のための統計学入門』(単著)、『不動産市場の計量経済分析』(共著)、『不動産テック』(編著)、『Property Price Index』(共著)など。 マサチューセッツ工科大学不動産研究センター研究員、総務省統計委員会臨時委員を務める。米国不動産カウンセラー協会メンバー。

【コラム制作協力】有限会社エフプランニング 取締役 千葉利宏

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