Bコープ企業が切り拓く新しい資本主義の姿
~認証取得の経験から語る

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目次

Bコープとは、「すべてのステークホルダーに有益な組織」を認証するものだ。ヨーロッパで広く認知され、消費者のブランド選択の基準にもなる。日本で20番目の認定企業となったピープルフォーカス・コンサルティングの黒田由貴子が、認証の意義と展望を語る。

著者

黒田 由貴子氏くろだ ゆきこ

株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング 顧問・ファウンダー

株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング(PFC)の創業者。1994年から2012年まで代表取締役を務めた。組織開発やリーダーシップ開発に関する企業内研修やコンサルティングを展開。経営層向けにエグゼクティブコーチングも数多く手がける。
PFC創業前は米国系大手経営コンサルティング会社でシニア・コンサルタントを務め、ソニー(株)では海外マーケティング業務に従事した。在職中、フルブライト奨学生として米国ハーバードビジネススクール経営学修士号(MBA)を取得。 慶應義塾大学経済学部卒業。
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我が社、ピープルフォーカス・コンサルティングは、2023年2月に、国内では20社目となるBコープ認証企業となりました。「Bコープ認証」とは、米国の非営利組織であるBラボが社会や環境に配慮した企業に与える認証で、2007年に認証制度が開始されて以来、世界中に拡がりを見せています。2023年3月現在、全世界で6,165社が認証されていますが、Bラボ創業者の一人であるバート・ホウラハン氏は「新型コロナ禍以降、認定を申請する企業が急増している」と述べておられ、1万社を超す日も遠くないことと思われます。

Bコープとは

Bコープに馴染みのない方のために少し解説しましょう。BコープのBとはBenefit for Allを意味しており、Bコープとは「すべてのステークホルダーに有益な組織」ということです。現在、株主至上主義による資本主義が地球や社会の持続可能性を脅かしたことで、ステークホルダー資本主義という概念に代表される新しい資本主義の在り方が模索されていますが、その先鞭にいるのがBコープ認証企業といえます。実際、「新しい資本主義実現会議」の事務局を担う内閣官房の方々が、認証取得後の弊社にヒアリングにいらっしゃいました。

Bコープ認証の知名度が高いヨーロッパでは、Bコープ認証企業が店舗の入り口にロゴを掲示したり、スーパーの商品陳列棚に「これはBコープ認証企業の商品です」という表示があったりします。多くの消費者のブランド選択の基準になっているのです。

Bコープ認証企業になるには、Bラボが定める200点満点の基準のうち80点以上を獲得する必要があります。認定基準はインターネット上で公開されており、誰でも自己アセスメントできます。200点のうちの80点と聞くとさほど難しくないように思うかもしれませんが、ある企業経営者の方が試しにやってみたところ「10点しか取れなかった」と言っていたほど、基準は厳格です。

自己アセスメントを経て、80点以上の見込みがたったら、Bラボに審査の申請を行います。その際には、基準を満たしていることを示す証拠となる資料原本などの提示が求められ、審査委員によるインタビューもあります。

審査項目は、「従業員」「コミュニティ」「環境」「ガバナンス」「カスタマー」の5つの分野です。アセスメントは大変精緻に作り込まれていて、審査対象企業の業種や規模などに応じて、質問項目や評価基準が変わってきます。弊社のようなプロフェッショナル・サービス会社の場合、従業員の占めるウェイトが大きく、弊社の各分野における獲得スコアは以下のとおりでした。

Bコープを目指した訳

弊社がBコープ認証の取得を目指したのは、自分の個人的な体験が強く影響しています。今から30年ほど前、イギリス滞在中に「ザ・ボディショップ」という会社を知り、ビジネスと社会貢献は対立するのではなく、両輪として共存しうることに衝撃を受けました。

その後、1994年に株式会社ピープルフォーカス・コンサルティングを創業し、ビジネスを通じた社会貢献という新しい経営の在り方を模索してきました。具体的には、社会課題解決型事業リーダー育成プログラムを提供したり、2003年以降は毎年、売上の1%を社会貢献活動に寄付したりしてきました。

近年はSDGsやESG投資、サスティナビリティ経営などの考え方が浸透し、どこの企業も社会への貢献を標榜するようになっています。そこで、弊社の取り組みが、他社と比べても誇れるレベルにあるのかを検証したいと思うようになりました。また様々な企業の取組みに対して「言っているだけ」「やっているふり」という批判の声が世間から挙がるのも目にし、我々も外部機関からお墨付きをもらうことが必要だと考えました。

そのような考えのもと、2021年の年初に、Bコープ認証企業を目指すことを社内に提案し、認証に向けた取組みが始動しました。

全員参加で勝ち取った認証

Bコープ認証の自己アセスメントの結果、合格基準の80点を超えるために必要な改善項目が30個ほど洗い出されました。それらをテーマごとに分類し、7つの分科会が立ち上がりました。社員のみなさんからの提案で、全員がいずれかの分科会に参画することとなりましたが、それが本当に良かったと思います。自分の会社がどうあるべきかを一人ひとりが考え、その実現に向けて動いたからです。まさに全員経営の実践といえるものでした。合格の通知が来たときの社員の喜びもひとしおでした。

先述のとおり、もともとBコープに近い考え方で弊社を経営していたつもりでしたが、認証を得るには慣習的に行っているだけでは不十分で、制度やルールなどに落とし込まれていなければいけません。というのも、業績悪化や経営者の交代などで状況が変化しても、変わらず継続していく仕組みが必要というのがBコープの考え方だからです。なので、分科会活動の多くは、そうした制度化、仕組み化の作業でした。

また、これを機に新たに取り入れた指針や活動もあります。たとえば、電力を再生エネルギーに変えたり、契約講師陣の男女比率目標を設定したり、今まで行っていなかった従業員エンゲージメント調査を定期的に実施したりといったようなことです。

改善活動は1年近くにおよびました。その後、認証の申請をしたのが2021年11月、ここから待つこと10カ月。認証を申請する企業が大変多いために、順番がまわってくるまでに長いこと待たされました。そして、約4カ月間の審査期間を経て認証に辿り着きました。

Bコープとはムーブメント

Bコープ認証は取得がゴールではありません。むしろスタートだといえます。認証を維持するためには、3年ごとに再審査を受ける必要があります。さらに、この認証に関して印象的だったのは、「Bコープはムーブメント」だというBラボの考えです。たとえば、当社が合格した際に送られてきたメッセージには、「ムーブメントへの仲間入りです!」と書かれていました。

ムーブメントの標語としてBラボが掲げているのが、「Make Business a Force For Good」(ビジネスを、社会をより良くする力にする)。つまり、企業活動によって環境や社会が劣化していくのではなく、良くなるような経営をするということです。そんな企業を増やしていくことがBコープ企業の使命なのです。弊社も、事業活動を通じて、そして今回のような広報活動を通じて、ムーブメントの一貫を担う所存です。

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