100年企業になるための最強の「ランチェスター戦略」
〜差別化・集中・接近戦の3つのカギで強くなる〜

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目次

コロナ禍がようやく収束に向かいつつあるものの、依然として不確実性の高い経済・社会情勢は続いています。厳しい経営環境でも企業が着実に成長していくためには何が必要か。そのヒントを与えてくれる経営理論の一つに、「ランチェスター戦略」があります。ランチェスター戦略の基本的な考え方、取り組む上での留意点などを、この分野の第一人者である福永雅文氏に語っていただきました。

差別化・集中・接近戦の「ランチェスター戦略」

日本には約367万社もの企業があり、中小企業はその99.7%を占めるといわれます。大企業に比べて“ヒト・モノ・カネ”といった経営資源が限られるにもかかわらず、特徴ある技術やビジネスモデルによって特定市場で高いシェアを獲得し、着実な成長を続けている中小企業は少なくありません。

企業間競争において弱者であるはずの中小企業が、なぜ勝ち残ることができるのでしょうか。この疑問に答えてくれるのが「ランチェスター戦略」です。第一次世界大戦中に生まれた戦争理論を応用し、企業間競争に置き換えた経営戦略論として知られています。

ランチェスター戦略では経営資源の乏しい企業であっても、局地戦、つまり特定市場で明確な優位性をつくれれば、企業間競争を勝ち抜いていくことが可能だといいます。また、ビジネスにおける勝ち負けは、その当該市場におけるマーケットシェア(市場占有率)で判定します。シェア首位の企業は強者、それ以外(2位以下)はすべて弱者と2つに区分。これはランチェスター戦略の特徴的な考え方であると福永氏は指摘します。

「例えば、ホンダは日本を代表する優良企業ですが、国内の普通乗用車市場においてはトヨタ自動車が首位で、ホンダは日産と二位争いをしている状況です。従って、ランチェスター戦略ではホンダはこの市場で弱者と定義されます。他方で、ホンダは二輪車市場では世界最大のシェアを占めていますから、その市場では強者ということになります。強者・弱者は企業の経営規模で判断するものではなく、市場ごとに捉えるべきものだということです」

では、弱者である企業が局地戦を制するにはどう戦えばいいのでしょう。重要なキーワードとして、福永氏は「差別化・集中・接近戦」の3つをあげます。

差別化とは、顧客から他社ではなく自社を選んでもらう理由をつくること。戦争においては「武器の性能を上げること」に相当します。弱者が強者をしのぐには、独自性・優位性のある「選ばれる理由」をつくることが重要になります。

2つ目の集中とは、経営資源を集中投入すること。限られた経営資源を複数の市場に分散投入すると、ますます勝てなくなってしまいます。強みの発揮できる市場を見極め、そこに経営資源をしっかり投入することが重要になります。

最後の接近戦とは、顧客と直接的なコミュニケーションを図り、関係性の量・質を高めて他社との優位性を生み出していくことを指します。

ランチェスター戦略の徹底でニッチトップメーカーに

この3つを実践して成功した一例として、福永氏は、東京・板橋区に本社を置く包装機械メーカーD社をあげます。同社は1980年、「立ち読み客が多く、マンガ本が汚れて困っている」という書店の悩みをきっかけに、マンガの単行本をフィルム包装する機械を独自に開発しました。極めてニッチな市場ですが、当時の世にはないものを生み出したわけですから、この時点で明確に差別化できていました。いくつかの書店に無料試用してもらうと非常に評判がよく、同社はこの市場に経営資源を「集中」させることを決意。出版社や卸業者を介さずに、書店に直接営業する「接近戦」を実践しました。まさに「差別化・集中・接近戦」を行った結果、見事に新市場の創出に成功し、シェアを拡げていったのです。

その後、新市場の存在に気づいた大手が参入を試みるようになると、同社は接近戦(顧客との直接コミュニケーション)をこれまで以上に徹底。顧客のニーズを把握し、他社に真似できないきめ細かいサービスを提供し続けた結果、D社は高シェアをしっかりと維持することができました。

もう一つ、同社の事例が興味深いのは、弱者の戦略を続けながら、新分野への進出にも成功したことです。福永氏によれば、新分野への進出戦略には主に次の3つがあります。

①製品開発戦略……既存市場に新製品を販売する
②市場開拓戦略……既存製品を新市場に販売する
③多角化戦略………新製品を新市場に販売する

D社は、既存顧客である書店に防犯カメラを新たに販売したり(①)、既存製品である包装機械を韓国の書店に販売したり(②)するなど、新分野に挑戦を重ねていたところ、韓国の顧客から「通販事業者向けに、商品の仕分け・梱包・発送システムを開発・提供できないか?」という相談(③)があったそうです。同社にとっては未知のビジネスでしたが、デジタル化の影響で書店市場全体が縮小し、マンガ本包装機械事業の収益も減少しており、新たな収益事業の確保が急務でした。そこで、この事業への参入を決意。大手通販会社ではなく中小の通販会社をターゲットに、比較的小規模の投資で導入できるようなシステムを開発・販売した結果、見事成功したそうです。

「③の多角化戦略にも2種類あり、一つは本業とは違う新分野に進出する方法、もう一つは本業に隣接している分野に進出する方法です。前者はすべて一からなので成功確率が低く、中小企業の場合、後者の隣接分野を目指すべきというのが私の考えです」

代を重ねて老舗になることこそ、ジャパニーズドリーム

厳しい経営環境が続く中、本業の収益力の強化や新分野への進出を検討している中小企業は多いでしょう。福永氏は「『売り上げ』ではなく『シェア』に着目した事業展開をしてほしい」と話します。

「売り上げ志向とシェア志向は似て非なるものです。売り上げが増えればシェアも高まると考えている方が多いのですが、それは違います。売り上げの拡大を目指そうとすれば、大きな市場に目が向きますが、その市場にすでに君臨している強者に勝つことは難しいでしょう。売り上げもなかなか伸びません。シェア志向とは、もっと市場を細分化し、どの地域のどんな顧客層にどんな商品を売るか的確に捉えてビジネスを展開しようとすることです。より小さな市場で戦うことがランチェスター戦略につながります」

前述のように、弱者が勝つには、局地戦で優位性を発揮することが重要です。たとえ小さくても自社の強みを発揮できる市場を見つけて「差別化・集中・接近戦」を実践し、シェアを獲得していく。それがその市場での「勝利」につながります。

「アメリカでは、一代で巨万の富を築いてリタイアする経営者が多く、アメリカンドリームと呼ばれています。これに対して日本の経営者の目指すところは『代を重ねて老舗になること』で、これこそがジャパニーズドリームだろうと私は思うのです。この発想が、日本を長寿企業大国に導いてきたのではないでしょうか。長寿企業の経営者に話を聞くと、順風満帆で100年やってきたというケースはなくて、何度も苦しい局面を乗り越えてきたと言います。その際に欠かせないのが『戦略』です。この記事を読んでいる経営者のみなさんも、ぜひランチェスター戦略をはじめとする戦略を学んで、100年企業を目指していただきたいと思います」

お話を聞いた方

福永 雅文 氏ふくなが まさふみ

戦国マーケティング株式会社 代表取締役

小が大に勝つ「弱者逆転」を使命とし、競争戦略のバイブル「ランチェスター戦略」を指導原理に、企業の営業戦略の策定と活動管理の仕組みを導入するコンサルタント。経営相談、コンサルティング、企業内研修、講演を行う。ランチェスター戦略学会 常任幹事、公益財団法人 SAWADA FOUNDATION 理事も兼任。著書は『中小企業のコンサル事例でわかるランチェスター戦略〈圧倒的に勝つ〉経営』(日本実業出版社)など。

[編集] 一般社団法人100年企業戦略研究所
[企画・制作協力]東洋経済新報社ブランドスタジオ

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