「大学生時代が知的レベル最盛期」の人がこれから見直すべきこと

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※本記事は「ダイヤモンドオンライン」に2024年1月19日に掲載された記事の転載です。

日本経済復活およびビジネスパーソン個人の成長の秘訣を示した『CFO思考』が、スタートアップ業界やJTCと呼ばれる大企業のビジネスパーソンを中心に話題となっている。5刷3万3000部(電子書籍込み)を突破し、メディアにも続々取り上げられている話題の本だ。
本書の発刊を記念して、著者の徳成旨亮氏と、多摩大学大学院教授の堀内勉氏の対談が実現。「世界で活躍できる子に育てるために親ができること」「ビジネスパーソンの教養」「企業倒産の意味」といったテーマについて、6回にわたってお届けする。(撮影/疋田千里、構成/山本奈緒子、取材/上村晃大)

日本のビジネスパーソンの
時間の使い方は「異様」

――今回は、CFOと教養、をテーマにお話を聞けたらと思っているのですが。

徳成旨亮(以下、徳成) 前回、教育を受けられる金銭的余裕があるか、といった話をしましたが、そうは言っても日本国民は教育を受けられます。学校はもちろん、本だって図書館に行けば買わなくて読める。ただ、学ぶ時間がないと言うのです。

堀内勉(以下、堀内) これは前著の『読書大全』にも書いたのですが、日本のビジネスパーソンは時間の使い方が下手というか、キツイ言い方をすると、間違っていると思っています。

海外のエグゼクティブというのは、Ph.D.(博士号)を持っている人も多くて。マスター(修士号)を持っている人となると、その辺に普通にいます。でも日本の場合、大学院に行く人というのは圧倒的に少ない。これは、日本の場合、大学院に行くと就職がままならなくなってくる、という意味不明な実情もあるかと思いますが。

話を戻しますと、時間の使い方が下手といった理由のひとつは、同類で群れることに時間を使い過ぎている、ということがあります。そうすると学ぶ時間が減るのはもちろん、自分でものを考えるという時間も極端に減ってしまいます。

今問題になっているのは、日本男性の家事・子育てをする時間が非常に短いということですが、それと同様に、学ぶ時間も少ない。エグゼクティブの皆さんは、ずっと一緒にゴルフしていますからね。ゴルフしないと、仲間外れになってしまいますから。仮にゴルフをしなかったとしても、ずっとみんなでお酒を飲んでいるじゃないですか。

わかるんですよ、私もサラリーマンをやっていましたから。一緒にいないと外されるんですよね。だから女性などは、最初から参戦できないのです。男性でさえ一緒につるんでいないと外されるのだから、女性なんて最初から対象外なんです。そういう時代でしたね、私のサラリーマン時代は。

以前に大前研一氏の「人間が変わる方法は3つしかない。1つは時間配分を変える、2番目は住む場所を変える、3番目は付き合う人を変える」という言葉を紹介しましたが、頑張って意識的に時間配分を変えないといけない。

そこで本を読んでもいいし、一緒に話して為になる人と話すのもいいし、何をしてもいいのですが、もう少し頭を使うというか、深く考えることをすべきだと思うのです。

自分が今どのような思考の枠組みにとらわれていて、世の中をどのような角度で見ているのか、ここの角度を変えてみたらどのように見えるのか……、そういうことを考えないと成長しませんから。

大学に入った時点が知的レベルの頂点で、そこからひたすら落ちていくというようなことになると、勝負の勝ち負けどころか勝負にもならないなという感じがあって。そこも見直す必要があると思うんですよね。

「日本人男性は時間の使い方が甘過ぎる」
女性部下から見た男性社員の働き方

徳成 だから「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」は決してきれいごとではない。僕は銀行員時代、比較的多様な人材をマネージメントできると思われたのか、初めて課長になったとき、男女雇用機会均等法1期生の女性総合職と外国人を部下に持ったんですよ。

当時は銀行の担当者が女性だと、取引先企業が怒って抗議に来ていた時代です。うちの会社を軽く見ているのか、と。

その女性部下に言われたのが、「日本人の男性は時間の使い方が甘過ぎますよ」ということでした。彼女は幼い子どもがいたから、1分も無駄にしないような段取りを毎朝考えていると言うのです。

「私は朝の電車の中から、会社に着いたらあれやってこれやって、何時にこう段取り付けて……と考えている。だって絶対に17時に終わらないと、18時の保育園のお迎えに間に合わないですから。常に、なるべく効率的に仕事することを考えているんですよ」と。

そんな彼女から見ると、男性たちはいつもダラダラして、22時頃まで残業している。それでアウトプットは彼女と一緒なのに、22時までやっているほうが頑張っていると言われるわけですよ。

リターンオンインベストメントじゃないですけど、効率性の概念が全然ない。それって資本主義の基本的な概念でもあるけど、それが日本の会社からはすっぽり抜け落ちてしまっている。そして完全に同質な社会で、皆と同じように非効率なことをしていないと外される……というさっきの堀内さんの話につながるのですが。

堀内 だから意図的にダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンをやっていかないと、日本の会社は本当にダメになってしまいますよね。

徳成 違う考えの人、違う制約を持っている人。女性はもちろん、ハンディキャップの人だろうが介護を抱えている人だろうが、いろんな人を入れていかないと会社としての力が必ず落ちてくると思います。

飲みに行ったり、頑張りを見せるための残業時間がなくなったりすると、当然ですが時間が生まれます。その時間はどう使ってもいい。本を読むのでもいいし、家事育児をするのでもいいし、僕みたいにおやじバンドをやるのもいい(笑)。

何でもいいんだけど、そこから何らか世界は広がるので、自分の引き出しが増えてくるんですよ。それって広い意味でのリベラルアーツだと思うんですよね。で、そうやって身に着いたものってユニバーサルで、海外に出たときにも通用するんですよ。

僕も海外でちょっと音楽の話をすると、「おお!」と反応してくれる人にたくさん出会います。趣味的なことって、言語を超えていくんですよね。

堀内 若い世代は、少しずつ変わってきているとは思いますけどね。

徳成 ええ、さすがに変わりつつある。若い人たちは、自分にメリットがある、意味があると思えば、業務時間外の飲み会や勉強会にも参加する傾向にあります。

僕は、若い世代から、「時間外でも付き合いたい」と思ってもらえるオヤジを目指しています(笑)。そうした自発的な飲み会なら、仕事も円滑になるし、双方にとって、また会社にとってもプラスですから。

お話を聞いた方

徳成 旨亮 氏

株式会社ニコン取締役専務執行役員CFO

慶應義塾大学卒業。ペンシルベニア大学経営大学院(ウォートン・スクール)Advanced Management Program for Overseas Bankers修了。 三菱UFJフィナンシャル・グループCFO(最高財務責任者)、米国ユニオン・バンク取締役を経て現職。日本IR協議会元理事。米国『インスティテューショナル・インベスター』誌の投資家投票でベストCFO(日本の銀行部門)に2020年まで4年連続選出される(2016年から2019年の活動に対して)。本業の傍ら執筆活動を行い、ペンネーム「北村慶」名義での著書は累計発行部数約17万部。朝日新聞コラム「経済気象台」および日本経済新聞コラム「十字路」への定期寄稿など、金融・経済リテラシーの啓蒙活動にも取り組んできている。『CFO思考』は本名での初の著作。

堀内 勉

一般社団法人100年企業戦略研究所 所長/多摩大学大学院経営情報学研究科教授、多摩大学サステナビリティ経営研究所所長

多摩大学大学院経営情報学研究科教授、多摩大学サステナビリティ経営研究所所長。東京大学法学部卒業、ハーバード大学法律大学院修士課程修了、Institute for Strategic Leadership(ISL)修了、東京大学 Executive Management Program(EMP)修了。日本興業銀行、ゴールドマンサックス証券、森ビル・インベストメントマネジメント社長、森ビル取締役専務執行役員CFO、アクアイグニス取締役会長などを歴任。 現在、アジアソサエティ・ジャパンセンター理事・アート委員会共同委員長、川村文化芸術振興財団理事、田村学園理事・評議員、麻布学園評議員、社会変革推進財団評議員、READYFOR財団評議員、立命館大学稲盛経営哲学研究センター「人の資本主義」研究プロジェクト・ステアリングコミッティー委員、上智大学「知のエグゼクティブサロン」プログラムコーディネーター、日本CFO協会主任研究委員 他。 主たる研究テーマはソーシャルファイナンス、企業のサステナビリティ、資本主義。趣味は料理、ワイン、アート鑑賞、工芸品収集と読書。読書のジャンルは経済から哲学・思想、歴史、科学、芸術、料理まで多岐にわたり、プロの書評家でもある。著書に、『コーポレートファイナンス実践講座』(中央経済社)、『ファイナンスの哲学』(ダイヤモンド社)、『資本主義はどこに向かうのか』(日本評論社)、『読書大全 世界のビジネスリーダーが読んでいる経済・哲学・歴史・科学200冊』(日経BP)
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※本記事は「ダイヤモンドオンライン」に2024年1月19日に掲載された記事の転載です。
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