創業75年の日本コパックが挑む、ハンガーの「完全循環」
~「共につくる」を社名に刻んだ企業の挑戦~

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アパレルショップの店頭やバックヤードで、日常的に使用されているたくさんのハンガー。その業務用ハンガーで国内トップクラスのシェアを持つのが、日本コパック株式会社です。ハンガーのリユースやリサイクルなど、環境に配慮した事業にも積極的に取り組んでいます。そのきっかけは1990年代初頭、創業者がごみ埋め立て地で目にした1つの光景でした。プラスチック製品などの大量生産・大量消費がまだ当たり前だった時代から、同社はいかに循環型ビジネスを築いてきたのか。創業者の孫であり、次代を担う取締役・斉藤崇大氏に伺いました。

段ボールの商店から、業務用ハンガーのリーディングカンパニーへ

日本コパックは、使用済みハンガーの回収・再生を行う環境事業を軸に、店舗什器やマネキン、トルソーを企画・製造する什器事業や、自社ブランドを展開する小売り事業を手がけています。取引先は大手アパレルメーカー、総合スーパー、百貨店、専門店チェーンなど1,000社以上を数えます。

同社の創業は1951年。梱包用の段ボールの事業から始まり、時代とともに、少しずつ軸足をハンガーへと移してきました。環境事業のきっかけとなったのは、創業者の斉藤建三氏が、東京都のごみ埋め立て地だった「夢の島」を訪れた時のことでした。そこに山積みになっていたのは、自社が世に送り出したハンガーの数々でした。ハンガーはブルドーザーで押しつぶしても元の形に戻ろうと膨らんでしまい、体積以上にかさばってしまいます。また、プラスチックを燃やすと焼却炉を傷めるため、夢の島の担当者からは「ハンガーほど厄介なゴミはない」と告げられました。その一言に、建三氏は大きなショックを受けたといいます。

そこで、創業40周年の節目の事業として、ハンガーのリサイクルに取り組むことを決意。1991年、都内の百貨店の協力を得て流通用ハンガーのリユース事業に着手し、翌92年には回収・リユース・リサイクルの活動を本格化させます。1997年12月に京都市で開催された国連の会議(COP3)で地球温暖化防止を目的とした条約「京都議定書」が採択されるよりも前、企業も個人も環境問題に目を向けることが少なかった時代から、世の中に先駆けて回収・再生の仕組みを築いてきたのです。現在は毎年2億本弱のハンガーのリユース・リサイクルをする規模に達しています。

ハンガーで実現する「完全循環型」のリサイクルモデル

現在、同社の環境事業を象徴しているのが、大手アパレル小売業・株式会社しまむらと取り組む「完全循環型水平リサイクルシステム」です。これは、しまむらグループの店舗で回収した使用済みハンガーを粉砕し細かい粒のペレットにしたものを材料に、再びハンガーとして生まれ変わらせ、しまむらグループの売り場で使用する仕組みです。

使用済み製品を回収してまた同じ種類の製品に戻す水平リサイクルは、手間もコストもかかるため、ハンガーのように単価の低い消耗品では難しいとされてきました。しかし同社は、自社の強みである、回収したハンガーを再生化、その材料をもとに再度ハンガーに戻す一気通貫の体制や、日本各地と海外の協力企業のネットワークにより、ほぼ従来品と変わらない価格に抑えることを可能にしました。現在はしまむら向けだけで、年間で約1億3,000万本のハンガーを納品しています。

こうして培った仕組みを、ハンガー以外にも展開しています。近年は、買い物用のレジ袋や商品梱包用の透明袋やカバー等を回収して輸送用の袋へとリサイクルする取り組みも始めています。

上海の自社工場で事業領域を拡大、BtoCへの挑戦も

2011年に中国・上海に自社工場を設立したことも、同社にとって大きな転機となりました。什器備品を自社で企画・生産・販売できるようになったことで、アパレル業界以外にも取引先が一気に広がったのです。

「アパレルで30年近く培ってきたVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)のノウハウを基に、ホテルやオフィス、レストランにもデザイン性の高い什器を提案できるようになりました」

そしてその体制を基盤に、BtoCのビジネスへと踏み出します。2021年には、工具なしで簡単に組み立てられる家具ブランド「KIT」を立ち上げました。2025年9月には初の直営店を東京のニュウマン高輪にオープン。10年以内にニューヨーク・ソーホーへ出店することを目標にしています。

ほかにも、売り物にならなくなったB品の木製ハンガーを動物の形のプロダクトにつくり変える「CLOSET ANIMAL」は、親子向けワークショップとしても展開され、「キッズデザイン賞」を受賞しました。また、素材そのものを問い直す取り組みも進んでいます。2023年には、廃棄された衣料を原料に什器を作るプロジェクト「RCL」を立ち上げました。廃棄衣料から、ディスプレイ用のシェルフやラックなどが生まれています。

そして、次なる挑戦としてDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)に着目し、デジタルサイネージ製品の開発も行っています。アパレルショップやレストランになじむ、洗練されたシンプルなデザインを追求し、さまざまなタイプの製品を展開しています。斉藤氏は、「デジタルサイネージは情報を表示するだけでなく、店舗やブランドの世界観を伝える什器でもあります。当社は、アパレル分野で培ってきたVMDの知見を生かし、空間や用途に合わせて筐体の形状を企画・設計し、製造まで一貫して対応できます。そうした当社の強みを生かせる領域だと考えています」と、新たな事業の可能性を見出しています。

同社では「循環型ビジネスと優れたデザインでお客様の魅力を最大限に引き出し、サスティナブルな未来を共に築く」というビジョンを掲げています。環境にやさしい循環型のものづくりと、アパレル業界向けで培ったファッション性の両立が、同社の大きな強みといえます。

「共に」を社名に刻んだ企業が受け継ぐもの

社名「コパック(COPACK)」の、「CO」は“共に”、「PACK」は創業事業である“パッケージ”を意味します。顧客とも仕入先とも「共につくる」という姿勢が、社名に刻まれています。

什器はその店舗の売り上げを間接的にサポートするものだからこそ、売り場のつくり方から顧客と一緒に考える。環境事業も、億単位の数のハンガーを1社で仕分けることはできず、売り場、物流、リサイクラー、成形工場、すべての当事者が動いて初めて輪がつながる。こうした共創こそが、同社の事業を支えてきた基盤であり、環境問題と向き合い続ける源泉となっているのです。

30年以上かけて築いたリサイクル工場や材料メーカーとの協力関係は全国に広がり、環境事業への取り組みに対する意識は従業員に浸透しています。こうした共創の輪が広がるほど、次に踏み出せる領域も拡張してきました。近年は、EC市場の拡大を受けて宅配向けの紙製パッケージにも進出しているほか、BtoCの海外展開や、サイネージ事業の拡張も見据えています。

プラスチックを、使い捨てられる素材から受け継がれる資源へ。その循環を、斉藤氏は未来へ広げていこうとしています。

「プラスチックは悪者にされがちですが、いろいろな形に成型できて、安くて使い勝手がいい。非常に優秀な素材ですから、使用自体をやめるのではなく、リサイクルして長く使っていくほうがいいと思うんです。また、リサイクル事業とは単に環境問題に取り組むことではなく、材料を安定的に調達できて外部要因に影響されにくい強い事業基盤を築くこと、そしてお客様と関係を長く続けていくことにもつながります。環境事業を通じて30年以上培ってきた当社のこうした財産を、今後も受け継いでいきたいです」

顧客と共に歩む。その姿勢を貫きながら、日本コパックは常に業界の一歩先で新しい仕組みを立ち上げてきました。ごみの山を前に創業者が抱いた思いは、三代を経てなお、社内にしっかりと根付いています。

お話を聞いた方

斉藤 崇大 氏(さいとう たかひろ)

日本コパック株式会社 取締役

アメリカの大学で経営学を学び、卒業後は重工業メーカーで3年間財務を担当。2020年4月に日本コパックへ入社。海外・国内の新工場立ち上げや、循環型リサイクル事業を担当している。創業者・斉藤建三氏の孫。

[編集]一般社団法人100年企業戦略研究所
[企画・制作協力]東洋経済新報社ブランドスタジオ

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