経営者にいまおすすめの本6冊 「質問力」編

目次
会議や商談、部下との面談、顧客との対話など、ビジネスの現場では日々さまざまな「質問」が交わされています。質問は、情報を集める機能だけにとどまらず、信頼関係を築き、時には人を動かす力にもなります。さらに近年はAIの普及により、適切な問いを立てて、有効なアウトプットを引き出す力の重要性も高まっています。今回は、「質問力」を磨くためにおすすめの6冊を紹介します。
AI時代に差がつく「質問力」
『正しい答えを導く質問力』
山口拓朗著 かんき出版 1,980円

質問とは、疑問をそのまま口にすること――。そう捉えている人も多いのではないでしょうか。しかし実際には、効果的な質問の多くは、「相手から何を引き出したいのか」という目的や意図を明確にしたうえで設計されています。
著者の山口拓朗氏は、作家・ライター・インタビュアーとして、これまでに3,800人以上の幅広い年代・職種の人たちを取材してきました。現在は執筆や研修を通じて、言語化力や文章スキルを伝えています。
本書で解説するのは、適切な問いを投げかけるための「質問力」です。山口氏は、質問するうえで最も重要なのは「なんとなく」で質問しないこと――つまり、「なぜそれを聞くのか」を自分で理解したうえで問いを立てることだと述べます。
そのための基盤となるのが、物事を自分ごととして捉える「主体性」と、情報の構造や細部に向ける目の「解像度の高さ」です。本書では、問いが生まれるまでの心構えや素養についても丁寧に掘り下げています。
本質的で価値ある情報を引き出すためには、事前準備も非常に重要です。山口氏は、①ゴールを明確にする、②必要な情報を集める、③質問リストを作成する、という3つのステップを提示。「いい質問の背景には、必ずいい準備がある」と強調します。「この人の質問なら答えたい」と思わせる条件や、質問の効果を高める心理的安全性など、質問をする側に求められる姿勢や態度についても言及します。
ChatGPTをはじめとする生成AIと質問力の関係についても取り上げます。AIの普及によって、「問いの質」がアウトプットを左右する実情が広く認識されるようになりました。本書では「ゴミを入れたら、ゴミが出てくる」という印象的な見出しで、AIを使いこなすためのプロンプト(指示文)設計のポイントを解説。さらに、AIを活用するためには、適切な指示を出すだけでなく、出力内容を読み解き、加筆・修正する力も不可欠だと説明します。
本書の特徴は、目的やシーンに応じた実用的な質問テンプレートやAI向けプロンプトが豊富に掲載されている点にもあります。決まり文句をただ並べるのではなく、「どう考え、どう順序立てて問いかけるか」が整理されており、さまざまなビジネスの現場ですぐに実践できる内容になっています。
質問力がある人は「なぜ?」とは聞かない
『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた 「なぜ」と聞かない質問術』
中田豊一著 ダイヤモンド社 1,804円

著者は、40年以上にわたり開発途上国支援に携わってきた中田豊一氏です。常識も価値観も異なる世界各国の人々と向き合うなかで、中田氏は「どんな相手とも正確に意思疎通するためには何が必要か」を追究し、「事実質問術」という対話手法にたどり着きました。
原因分析の場面では、「なぜを5回繰り返す」といった手法が広く知られています。しかし中田氏は、「なぜ」と聞くのは「よくない質問」であると指摘します。というのも、人は「なぜ」と問われると、事実ではなく「もっともらしい理由」を語ってしまいがちだからです。そこには思い込みや自己防衛、相手への忖度(そんたく)なども入り込みます。
そこで本書が提案するのが、「事実質問術」です。事実質問とは、事実そのものを確認する質問のことで、中田氏は「答えが1つに絞られる質問」と定義します。原則は「考えさせるな、思い出させよ」。思い込みや解釈ではなく、実際に起きた事実だけを確認することで、現実をより正確に捉えようとするアプローチです。
具体的には、5W1Hのうち、When「いつ」、What「何」、Where「どこ」、Who「誰が(誰と)」が事実質問にあたります。「みんな」「いつも」といった曖昧な言葉は避け、「誰が」「今日は」などと具体的な表現に置き換えていくのです。
事実質問の技術を身に付けるには、日々の会話の中で意識的に練習を重ねることが欠かせません。自分が無意識に「なぜ質問」をしていないかを振り返る習慣をつけることで、自分の質問や思考パターンを客観視する力も鍛えられていきます。
事実質問術は、単に情報を集めるための技術ではありません。対話を通して相手が状況を整理し、自ら解決策を見つけ、行動につなげることを促す、対話の技法です。この質問術は、マネジメントや部下育成、顧客との対話など、多くのビジネスシーンで活用できるでしょう。
相手の信頼を得る「質問力」の鍛え方
『いつも信頼される人がやっている「たったひと言」の質問力』
坂本聰著 ソシム 1,650円

「信頼される人」と聞いて、どんな人を思い浮かべるでしょうか? 本書では、信頼される人とは「相手に信頼される質問」ができる人であるとし、そのための質問力を習得する手法を解説しています。
本書によると、「相手に信頼される質問」とは、相手に「この人は、自分のことを本気で知ろうとしている」と感じさせる質問です。そのために重要なのが、「わからないこと」を率直に質問する姿勢です。
実は、多くの人が「わかったつもり」のままで物事を進めています。しかし、わかったつもりで行動する人と、わからないことをきちんと理解しようとする人では、どちらが信頼できるでしょうか。答えは明白です。
つまり、信頼される人になるためには、「自分はまだわかっていない」と自覚することがスタートラインになるのです。では、その「わからない」をどう発見し、自覚するのか。そのために役立つのが、本書のメインテーマである「絵訳」です。
絵訳とは、読んだことや聞いたことを頭の中で絵にして、自分の理解度を確認するメソッドです。例えば、「犬のような4本足の動物」を絵にするとします。このとき、「どの犬種だろう」「毛の長さはどれくらいだろう」「大きさはどのくらいだろう」といった疑問が自然に生まれます。
言葉だけで考えていると、人は曖昧なまま理解した気になってしまいます。しかし「絵にしてください」と言われた途端、一気にイメージを具体化する必要に迫られます。細部を描こうとすればするほど、自分に不足している情報が浮かび上がっていく。これが、絵訳によって質問が生まれる仕組みです。
本書では、質問力と理解力とを鍛える方法として、絵日記を勧めています。ここでいう「絵日記」とは、単なる出来事の記録ではありません。自分が理解したいことの絵を描き、5W1H、1文、200文字といったルールに沿って言語化するトレーニングです。著者が開発した絵日記のテンプレートやサンプルも掲載されているため、すぐに実践できます。
この絵日記は、日常生活だけでなく仕事にも応用可能です。例えば顧客から説明を受けた際、その内容をどこまで具体的にイメージできるかによって、自身の理解度を確認することができます。そして「わからない」に気づくことができれば、「相手に信頼される質問」も自然に生まれてくる。本書は、そのプロセスを実践的に教えてくれる一冊です。
『「いい質問」が人を動かす』
谷原誠著 文響社 1,870円

質問には、人生を成功に導く6つの力がある。①思いのままに情報を得る、②人に好かれる、③人をその気にさせる、④人を育てる、⑤議論に強くなる、⑥自分をコントロールする、だ。敏腕弁護士が実際に使っている究極の質問術を、具体的なケースを挙げながら徹底的に解説する。
『博報堂クリエイティブプロデューサーが明かす 「質問力」って、じつは仕事を有利に進める最強のスキルなんです。』
ひきたよしあき著 大和出版 1,650円

大手広告代理店での経験を基に編み出した質問術を、5日間の25のメソッドに分けて学ぶストーリー形式の本書。軽快な対話を通して、効果的な質問をするためのノウハウをわかりやすく解説する。相手の本音を引き出し、人を巻き込みながら意見を通すための質問力が身に付く。
『1万人のマネジャーを指導したコーチングのプロが教える 質問力で人を動かす』
マイケル・バンゲイ・スタニエ著、吉村明子訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2,200円

コーチング入門書として、北米で100万部を突破したベストセラー。「7つの質問フレームワーク」を身に付けることで、部下や顧客、同僚などとのコミュニケーションの質が高まる。会議や1対1のミーティング、商談、日常会話など、あらゆる場面で活用できる実践的な1冊。
[編集]一般社団法人100年企業戦略研究所
[企画・制作協力]東洋経済新報社ブランドスタジオ















