140年の矜持。守るべきものは守り、変わるべきものは変え、伝統と変革を両立する萩原
~「前を向く力」をすべての人へ届ける葬祭用品メーカー~

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「誰もが前向きに生きる社会を築く」。株式会社萩原は、この理念を掲げ、140年近くにわたり日本の葬送文化を支えてきました。1887年の創業以来、全国の葬儀社へ葬祭用品を届け、自宅葬から会館葬、家族葬へと変化する時代の中でも、守るべき伝統を守りながら、新たな価値を生み出し続けています。代表取締役社長・諸田徳太郎氏に、140年企業を次の時代へつなぐ思いを伺いました。

140年の歴史を支える強みと体制

株式会社萩原は、仏具・神具・キリスト用具から霊柩車、仏壇までを幅広く手がける、葬祭用品の製造販売会社です。1887年に創業し、2027年で140周年を迎えます。

同社の強みは、何よりもまず、その長い歴史にあると諸田社長は話します。

「140年という歴史は、一朝一夕では築けません。全国のお客様たちとの信頼の積み重ねこそ、私たちにしかない財産だと思っています。」

この歴史を支え続けてきたのが、自社製造の体制です。木工・繊維・紙製品までを自社で賄う体制を整えており、顧客の要望に合わせた商品作りはもちろん、業界の変化を先取りした提案も可能にしています。一方で、経験豊かな工芸士やスタッフたちによって作られる白木製品(木材本来の質感や木目を生かした製品)においては、日本で古くから伝統的に用いられてきた技術を長きにわたって受け継いできました。

自宅葬から家族葬へ。変化する時代に、商品で応える

日本の葬儀の形は、ここ半世紀で大きく変わってきたといいます。かつては、病院で亡くなった故人を自宅に連れ帰り、家の中で葬儀社が祭壇を組み、親族や知人、地域の人たちに集まってきてもらう自宅葬が一般的でした。しかし、30年ほど前からは社会構造や住環境の変化から、全国各地に建設された葬儀会館での会館葬が主流になっていきます。さらに近年は葬儀の小規模化が進み、家族葬も増えています。

一方、葬儀内容の多様化も進み、洋風祭壇や花祭壇といった華やかな祭壇にすることや、仏衣を洋装にするケースなども見られるようになりました。色に関しては白と黒の組み合わせ、そして祭壇を飾るのは菊の花などが中心といった、かつての常識が変わりつつあるのです。こうした変化を受け、同社は長年の伝統技術を守りながら、現代の葬儀で求められている新たな製品も次々と生み出しています。

「高齢化が進み、長く生きられた方を明るく笑顔でお送りしたいという意識が、明らかに増えてきました。形よりも、故人やご遺族のお気持ちを大切にしようという流れが、葬儀業界全体に広がっています。社会のニーズがそこにあるのなら、私たちもその変化に合わせた商品・サービスを提供し続けなければなりません」

「誰もが前向きに生きる社会を築く」に込めた思い

葬儀のニーズが多様化する中、同社はどのようにしてその変化を捉えているのでしょうか。カギとなるのは、全国の葬儀社との対話です。

「私たちは、ご遺族に直接お話を聞く機会がないので、葬儀社とのコミュニケーションをとても大切にしています。葬儀社を介してご遺族の生の声を集め、新たな商品をご提案してみる。実際にそれを現場で使っていただいた感想がフィードバックとしてわれわれに寄せられ、それを基にさらに改善する。こうした繰り返しを通じて、ニーズを形にしています」

多様化するニーズに向き合い続ける同社の根底にあるのが、「誰もが前向きに生きる社会を築く」という企業理念です。これは、諸田社長が会社経営を継承した際に定められました。葬儀という人の死に関わる事業を行う企業でありながら、生きる人の側に立った理念を定めた背景について、諸田社長はこう話します。

「当社の商品は、亡くなられた方のためだけにあるものではありません。大切な人を見送り、悲しみの中にいるご遺族が、葬儀という大切な儀礼を経て少しずつ前を向いて歩み出す。その時間を支えることが私たちの使命だと考えています。

だからこそ、企業理念を『誰もが前向きに生きる社会を築く』としました。『誰もが』には、ご遺族だけではなく、社員、お客様、お取引先など、当社に関わるすべての人への思いを込めています」

未来へつながる商品開発・人づくり

萩原は伝統を守る一方で、時代に合わせた商品開発にも積極的に取り組んでいます。その1つである、軽量化を追求した「エアリシリーズ」は、現場で働く方々の負担軽減や女性活躍にもつながっています。きっかけは葬儀社での女性活躍に着目したことでした。

「葬儀の現場は力を使う仕事が多く、優秀な女性を採用したくても『力仕事ができないから男性に』となりがちでした。ならば商品自体を軽くすればいい、という発想です。例えば、当社の棺の中には、従来品より約30%軽量に作られているものもあります。現在は、女性社員がものづくりの責任者を務めており、女性目線での商品開発を行っています」

この軽量化は、業界が直面する人手不足の課題に対する有力な手立てとなっています。1人で施工準備まで担うワンオペ化が進む中、軽い棺は現場作業の負担軽減に大きく役立っています。

また、140年企業を未来へつないでいくために最も重要なのは、「人づくり」だと諸田社長は考えているといいます。そこで同社では、社員一人ひとりが理念を共有し、自ら考え、挑戦できる組織づくりを進めています。

社内の人材採用・育成においても、新たな取り組みが進められています。研修のほか、次世代のリーダーを育てるプロジェクトを10カ月かけて実施するなど、会社の未来に向けて教育の仕組みをアップデートし続けています。

こうした姿勢の背景にある経営者としての考えとはどのようなものなのでしょうか。諸田社長は次のように話します。

「歴史があるから変われないのではなく、歴史があるからこそ変わり続ける責任がある。それが私の経営に対する考え方です。

白木加工の技術を守ることも、新しい商品に挑戦することも、本質は同じです。140年積み重ねてきた信頼を未来へつないでいくために、守るべきものは守り、変わるべきものは変え続けていきたいと思っています」

140年続いた源泉は「お客様への真摯な姿勢」

最後に、約140年もの長きにわたり事業を続けてこられた理由を尋ねると、諸田社長はこのように語りました。

「お客様の役に立とう、真摯であろう、という姿勢があったからだと思います。信頼を得るには長い時間がかかりますし、一方で簡単に崩れてしまうこともあります。だからこそ、全国津々浦々のお客様のもとに直接足を運び、迅速に対応するということを地道に積み重ねてきました。

140年という歴史は、私たちにとって決してゴールではありません。150年、200年先も社会から必要とされる企業であり続けるために、伝統を守りながら時代に合わせて挑戦を続けていく。その歩みを止めることなく、『前を向く力』を支える企業として、日本の葬送文化に貢献していきたいと考えています」

誰しもいつかは、この世を去る時が訪れます。だからこそ萩原は、大切な人がいなくなった後も生きていく人たちすべてのために、「前を向く力」を届けようとしています。守るべきものをしっかり守り、変わるべきものは躊躇せずに全力で変えていく。創業140年という歴史を背負いながら、萩原の挑戦はこれからも続いていきます。

お話を聞いた方

諸田 徳太郎 氏(もろた とくたろう)

株式会社萩原 代表取締役社長

大学卒業後、証券会社に入社。その後、祖父の逝去をきっかけに家業を継ぐことを決意し、2009年に株式会社萩原に入社。青年会議所(JC)での活動も行ったのち、常務取締役を務め、2023年10月に代表取締役社長に就任。

[編集]一般社団法人100年企業戦略研究所
[企画・制作協力]東洋経済新報社ブランドスタジオ

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