100年企業レポート vol.16 岩手編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

1.岩手県の100年企業に関する分析

岩手県は、北海道に次いで全国で2番目に面積が大きい県である。西側には奥羽山脈があり、これと平行して東側には北上山地が広がっている。また、太平洋側の沿岸部は、北には隆起海岸、南にはリアス式海岸が連なっている。その沖合である三陸沖は、世界有数の漁場として知られており、ウニ、アワビ、ワカメなどの漁が盛んに行われている。

岩手県の100年企業数は、391社であり、全国33位である。

広大な自然の他にも、歴史的な遺産を有する岩手県。浄土思想に基づいて造られた中尊寺や毛越寺などの奥州藤原氏が遺した平泉にある遺産群は、2011年に東北地方で初めての世界文化遺産として登録された。また、釜石市にある橋野鉄鉱山も、2015年に世界文化遺産に登録されている。現存する日本最古の洋式高炉跡や重工業分野の遺産群は、日本の近代製鉄産業の礎を築いたとして世界的に認められたのである。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、岩手県の特性を分析した。

人口減少と少子高齢化が一段と進み、
経済指標は厳しい状況

岩手県は北海道に次いで全国2番目の広大な面積を持ち、豊かな自然環境を生かした農業・畜産業・水産業などが盛んであるが、現状は6指標全て平均を下回っている。特に人口減少と少子高齢化の進行レベルは全国トップクラスであり、その影響が他指標にも及んでいると考えられる。そのため岩手県では人口問題を重要な課題と捉え、移住者の受け入れ、結婚や子育て環境の支援などの施策に全力で取り組んでいる。また、『商業地平均価格』も比較的下位であり、こちらは人口問題と同時に社会基盤の整備や産業集積への取組みも必要になると考えられる。

2.岩手県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比43.4%であった。次いで『大正以降』の25.8%、『明治前期』の19.2%、『江戸時代』の11.3%の順である。
岩手県を代表する伝統工芸品である南部鉄器は、江戸時代中期に南部藩が茶の湯釜を作らせたことが起源とされている。良質な鉄資源が潤沢な地域であり、藩の奨励により発展していったのである。そのうちに茶釜以外にも日用品などの製造品も作られ、一般の人にも親しまれるようになった。

②創業年TOP5

岩手県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の株式会社夏油温泉は、全国で13位となっている。

③市町村別は『盛岡市』が最多

市町村別100年企業数では盛岡市が108社で最多であった。
1位の盛岡市は、『オフセット印刷業』が4社で最も多く、次いで『土木工事業』や『清酒製造業』を含めた8業種がそれぞれ3社である。
2位の一関市は、100年企業数41社であり、業種別に見ると『土木工事業』、『旅館・ホテル』の2業種がそれぞれ3社で最も多い。
3位の花巻市は、100年企業数39社であり、業種別に見ると『呉服・服地小売業』が3社で最も多く、次いで『生菓子製造業』や『酒小売業』を含めた5業種がそれぞれ2社である。

④産業は『製造業』が発展

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が226社(構成比57.8%)と最も多かった。次いで、『製造業』72社(同18.4%)、『建設業』37社(同9.5%)の順である。
かつては、近代鉄産業発祥の地として釜石を中心に製鉄業が岩手県の産業をけん引していた。その後東北新幹線や東北縦貫自動車道、花巻空港などのインフラ整備に伴い、企業誘致を推進。現在では自動車・半導体関連業などさまざまな製造業が集積し、発展している。
また岩手県では、昔から続く林業のさらなる発展を目指し、木質バイオマス事業に力をいれている。

⑤業種は『ガソリンスタンド』が最多

業種別では、『ガソリンスタンド』が20社で最多であった。もともとガソリンスタンドだったわけではなく、時代と市場環境の変化に対応していったのだと考えられる。また、『燃料小売』も上位に入っており、岩手県における小売業の年間商品販売額を見ると燃料が最も多い。(平成26年商業統計調査)このことから、ガソリンや燃料が主要な産業として岩手県の経済を支えていることが分かる。
その他には酒や服などの食品・日用品の小売業や、古くから続く旅館が上位であった。岩手県を代表する伝統工芸品である南部鉄器を製造する『銑鉄鋳物製造』も7社あり、TOP10に入っている。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比46.6%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が29.7%、『5千万円以上~1億円未満』が5.8%の順である。
資本金トップは国立大学法人岩手大学(業種:大学)が542億円。以下、地方独立行政法人岩手県工業技術センター(業種:他に分類されない専門サービス業)が49億円、盛岡信用金庫(業種:信用金庫)が18億円の順であった。
上位10社のうち卸売・小売業が3社、金融業が2社である。

⑦従業員数は『10人未満』が6割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比38.4%と最も多かった。次いで、『10~49人』が30.0%、『5~9人』が22.1%の順である。10人未満で6割を超える。
岩手県の100年企業の多くは小規模企業であるが、学校法人岩手医科大学は従業員2,000人を超え、国立大学法人岩手大学、株式会社阿部繁孝商店の2社は従業員500人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比50.0%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が37.6%、『10億円以上~100億円未満』が10.5%の順である。
売上高上位10社のうち卸売・小売業が4社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は4社

岩手県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は23社であり、構成比では全国16位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は4社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは卸売・小売業が3社、建設業が1社であり、本業以外に貸事務所業を行っている企業は少ない。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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