100年企業レポート vol.29 秋田編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

秋田県の100年企業に関する分析

東北地方の北西部に位置する秋田県は、重要無形民俗文化財が日本で最も多い県。男鹿半島の奇習「なまはげ」や、東北三大祭りの「秋田竿燈まつり」など、独自の伝統文化や風習が数多く残っている。民俗芸能が多く残る理由は、自然豊かで災害が少なく文化の継承がされやすかったことや、長く厳しい冬を乗り越えるために祭事が大切にされてきたからではないかといわれている。しかし、今全国で最も人口減少が進んでおり、先祖代々伝えられてきた民俗芸能の継承が困難といった危機に直面している。

秋田県の100年企業数は、400社であり、全国32位である。

秋田県は全国有数の米どころとして知られ、また良質な水源や気候風土にも恵まれていることから清酒の生産量や消費量も高く「美酒王国」といわれている。雪国の寒い気候をうまく利用し、低温でじっくりと時間をかけて仕込む伝統製法「秋田流低温長期発酵」で造られた日本酒は、ゆっくりと発酵することから、きめが細かくなめらかで口あたりのやさしい淡麗な味わいになる。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、秋田県の特性を分析した。

少子高齢化や人口減少問題が深刻化
商業地平均価格も全国最下位

平成30年の「人口推計」によると、秋田県の高齢化率は36.4%で、47都道府県でトップであった。少子高齢化や人口減少が最も進行している県であり、働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)も少ない。また人口問題の影響は地価にも出ており、『商業地平均価格』も最下位であった。区画整理や商業地発展により上昇している地域もあるものの、過疎化にともなう下落地域と今後二極化が進む可能性がある。豊富な自然資源を活かした産業振興や雇用創出、結婚や子育て環境の支援などを着実に実践していく必要がある。

2.秋田県の100年企業データ

① 創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比38.4%であった。次いで『明治前期』の30.2%、『大正以降』の19.4%、『江戸時代』の11.6%の順である。
江戸時代、院内銀山などの鉱山に労働力として全国から技術者、労働者などが集まり、大規模な町を形成した。鉱山周辺には娯楽も無いため、酒は不可欠なものとなり、秋田の酒造りは大きく発展した。明治になり、酒造業も近代化が進み、さらに品質も向上する。そして奥羽本線の開通により、県外への販路拡大が可能となり、ますます発展した。

② 創業年TOP5

秋田県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の株式会社飛良泉本舗は、全国で38位となっている。

③ 市町村別は『秋田市』が最多

市町村別100年企業数では秋田市が105社で最多であった。
1位の秋田市では、『酒小売業』が6社と最も多く、次いで『菓子小売業』が5社である。
2位の横手市は、100年企業数55社であり、業種別に見ると『清酒製造業』が5社と最も多く、次いで『木造建築工事業』、『木材・竹材卸売業』、『婦人服小売業』の3業種がそれぞれ3社である。
3位の大館市は、100年企業数50社であり、業種別に見ると『生菓子製造業』、『他に分類されない木製品製造業』、『ガソリンスタンド』の3業種がそれぞれ3社で最も多い。

④ 産業は第1次産業が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が206社(構成比51.5%)と最も多かった。次いで、『製造業』99社(同24.8%)、『建設業』41社(同10.3%)の順である。
秋田県は古くから農業や林業などの第1次産業が盛んである。「あきたこまち」をはじめとする国内有数の米どころであり、平成30年の米生産量は、全国で3位である。またスギ人工林面積は日本一であり、林業も盛んである。秋田杉は日本三大美林の一つとなっており、曲げわっぱや桶樽などの伝統工芸品を生み出している。

⑤ 業種は『清酒製造』が最多

業種別では、『清酒製造』が24社で最多であった。秋田県は日本有数の米どころであり、良質な水源や気候風土など酒造りに適した環境に恵まれている。そのため江戸時代から多くの酒造業が発展した。
2位は『一般土木建築工事業』が17社であった。秋田県は第2次産業の割合が全国と比べて低く、製造業の割合も全国平均より低い。しかし建設業の割合は全国平均より高くなっており、100年企業においてもその傾向が見られる。
3位以降を見ても、各種小売業やサービス業が多く、第2次産業は入っていない。

⑥ 資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比39.2%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が25.5%、『5千万円以上~1億円未満』が3.8%の順である。
資本金トップは株式会社秋田銀行(業種:普通銀行)が141億円。以下、株式会社北都銀行(業種:普通銀行)が125億円、小坂製錬株式会社(業種:その他の金属鉱業)が47億円の順であった。
上位10社のうち金融業が3社である。

⑦ 従業員数は『10人未満』が6割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比47.5%と最も多かった。次いで、『10~49人』が23.0%、『5~9人』が21.9%の順である。10人未満で6割を超える。
秋田県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社秋田銀行は従業員1,000人を超え、株式会社北都銀行は従業員800人を超える。

⑧ 売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比59.7%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が31.4%、『10億円以上~100億円未満』が7.2%の順である。
売上高上位10社のうち卸売・小売業が5社である。

⑨ 本業以外に貸事務所業を行っている企業は2社

秋田県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は19社であり、構成比では全国28位となっている。 そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は2社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは卸売・小売業が2社であり、本業以外に貸事務所業を行っている企業は少ない。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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