100年企業レポート vol.43 栃木編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

栃木県の100年企業に関する分析

宇都宮の街並み
夕暮れの地方都市の景色(栃木県宇都宮市)

栃木県の北側に位置する日光や那須は、冬に氷点下になることも多いが、夏は涼しく過ごしやすく都心からのアクセスもよいことから避暑地としても人気が高い。涼しさだけではなく、四季折々に美しい姿を見せる「中禅寺湖」、迫力と優美さを感じる日光の「華厳ノ滝」、そして爽やかな高原が広がる「那須高原」など自然の豊かさも魅力である。日光や中禅寺湖は今でも多くの外国人観光客が訪れるが、明治時代には避暑地として外国人別荘や大使館別荘が建てられ外交官や政府要人で賑わったとされ、時代や国を問わず訪れる人を魅了している。

栃木県の100年企業数は、541社であり、全国24位である。

1955(昭和30)年頃、日本で玩具の生産が盛んになり本来は都内で工場の建設を検討したが、土地が高く購入が困難だった。当時壬生町の鉄道周辺の土地を所有していた東武鉄道が積極的に、玩具工場を誘致したことから、1965(昭和40)年に壬生町に「おもちゃの工場団地」が誕生し「おもちゃのまち」という地名がつけられた。高度経済成長期には玩具の発信基地として大量の玩具を生産し、世界中の子供たちに驚きと夢を提供してきたが平成以降は、新興国への工場移転などにより玩具工場は撤退。現在は大手玩具メーカーのミュージアムや博物館が建ち、今でも子供から大人まで夢中にしている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、栃木県の特性を分析した。

首都圏へのアクセスがよく、
2拠点生活など様々なライフスタイルの選択が可能

栃木県は日光や那須などの観光地、イチゴなどの豊富な農作物、首都圏に近い立地を活かした工業と、バランスの取れた産業を展開している。働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)は平均をやや下回っているが、首都圏へのアクセスのよさから、移住・定住だけでなく2拠点生活や東京への通勤など様々なライフスタイルの選択ができる地域として、少子高齢化や人口減少への対策を打ち出している。また、『商業地平均価格』も平均をやや下回る。栃木県の地価は都心への通勤に便利なエリアとそれ以外のエリアとで二極化が進んでいると考えられる。

2.栃木県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比41.8%であった。次いで『明治前期』と『大正以降』の24.5%、『江戸時代』の8.7%の順である。
江戸時代、巴波川(うずまがわ)周辺の地域は、江戸との舟運により商都として栄えた。「小江戸」と呼ばれ、街には蔵や商店が並び、商工業が栄えていた。明治時代になり、廃藩置県により栃木県が誕生し、県庁移転や道路整備、鉄道の開通などの基盤整備などが進んだため、建設業が増えたのである。

②創業年TOP5

栃木県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の株式会社板室観光ホテル大黒屋は、全国で48位となっている。

③市町村別は『宇都宮市』が最多

市町村別100年企業数では宇都宮市が128社で最多であった。
1位の宇都宮市では、『生菓子製造業』と『酒類卸売業』の2業種がそれぞれ5社と最も多い。
2位の足利市は、100年企業数63社であり、業種別に見ると『木造建築工事業』と『その他の織物業』の2業種がそれぞれ3社と最も多い。
3位の栃木市は、100年企業数60社であり、業種別に見ると『木造建築工事業』と『肥料・飼料小売業』の2業種がそれぞれ3社と最も多い。

④産業は『製造業』が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が285社(構成比52.7%)と最も多かった。次いで、『製造業』119社(同22.0%)、『建設業』73社(同13.5%)の順である。
首都圏に位置する栃木県は、恵まれた立地のよさを活かし、有力企業の工場や事業所の誘致を進めている。日本有数の内陸型ものづくり県であり、県内総生産に占める製造業の割合や工場の立地件数は国内トップクラスである。代表的な工業製品は、自動車工業、飛行機の主要部品、医療機器などである。他にも益子焼、結城紬等の伝統工芸品も作られている。
また、世界遺産に登録されている「日光東照宮」や那須高原や鬼怒川温泉といった観光資源も多く、観光業にも力を入れている。

⑤業種は『清酒製造』が最多

業種別では『清酒製造』が22社で最多であった。栃木県は日光や那須、八溝山連山などからの名水に恵まれた地域であるため、古くから酒造りが行われていた。上位には『酒類卸』や『酒小売』も入っており、地酒産業は発展していたことがうかがえる。
酒関連以外で多かった業種は『木造建築工事』や『燃料小売』、『木材・竹材卸』などであった。酒屋のほかに大工、油屋、材木屋といった代々続く老舗という業種が多い。江戸時代には城下町として栄え、人々の往来も多く、商業が発展したのである。

⑥資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比46.2%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が34.8%、『5千万円以上~1億円未満』が3.9%の順である。
資本金トップは株式会社足利銀行(業種:普通銀行)が1,350億円。以下、藤井産業株式会社(業種:その他の産業機械器具卸売業)が18億円、滝沢ハム株式会社(業種:肉加工品製造業)が10億円の順であった。
上位10社のうち製造業と卸売・小売業がそれぞれ3社である。

⑦従業員数は『10人未満』が6割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比41.5%と最も多かった。次いで、『10~49人』が27.7%、『5~9人』が22.9%の順である。10人未満で6割を超える。
栃木県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社足利銀行は従業員2,000人を超え、藤井産業株式会社は従業員500人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比49.9%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が39.2%、『10億円以上~100億円未満』が8.9%の順である。
売上高上位10社のうち卸売・小売業が5社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は12社

栃木県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は24社であり、構成比では全国32位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は12社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは、卸売・小売業が7社で最も多い。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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