100年企業レポート vol.45 大分編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

大分県の100年企業に関する分析

大分の街並み

大分県は、日本列島において、「熱源」・「水の通路(断裂系)」・「水源(適度な降水量)」という温泉の3つの要件が最高レベルであり、マグマ吹き出し口が作られやすい場所に位置している。別府温泉や由布院温泉をはじめ多くの温泉を有し、源泉数、湧出量ともに日本一。温泉は、古くから浴用や飲用を中心に、湯治などの温泉療養や観光資源として利用されてきたが、近年クリ-ンエネルギ-としても注目され、温泉熱を利用した暖房や施設園芸、野菜の栽培、養殖など地熱発電等の産業面にも幅広く利用されている。

大分県の100年企業数は、357社であり、全国39位である。

以前の大分県は製造業が中心だったが、情報関連産業も積極的に誘致を進め、都心部のIT企業や人材を迎え入れるなど、互いの交流や誘致を進める新たな事業がスタートしている。通信網や施設整備、UIJターンの受け入れ、求人が堅調なIT業界に狙いを定めて移住希望者を支援する事業を進めている。県内へのIT企業の誘致、交流、業務提携促進、情報関連産業も積極的に誘致を進める対象に加え、サテライトオフィスの誘致や地元の面白いIT企業とコラボなど、”おおいた”をフィールドとした、「おおいた×IT」が全国的に注目を集めている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、大分県の特性を分析した。

物流拠点として大きく発展
観光名所も多数ありインバウンド対策も強化

「アジアの玄関口」である九州の北東部に位置する大分県は、戦国時代には南蛮貿易が盛んに行われるなど、古くから国際都市として繁栄してきた。100年企業数は少ないが、『100年企業輩出率』はやや高めである。
事業所数は少ないものの、近年は関西・関東を結ぶ空路・航路と九州全土をめぐる高速交通網の基点であるアクセスのよさから、さまざまな分野の企業が集積し、さらに物流拠点としても大きく発展している。また大分県は温泉などの観光名所があることから、インバウンド対策にも力を入れており、今後観光客はますます増える可能性がある。

2.大分県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比44.1%であった。次いで『大正以降』の23.7%、『明治前期』の18.2%、『江戸時代』の13.2%の順である。
大分県といえば麦焼酎が有名であるが、最初の地酒は日本酒であった。江戸時代に「麻地酒(あさじざけ)」というお酒が誕生し、全国的に有名となった。幕府への献上品にもなり、大分の地酒のルーツになったといわれている。その後、清酒粕を原料に焼酎も造られるようになったとされており、大分県には焼酎だけでなく日本酒造も多い。

②創業年TOP5

大分県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の有限会社藤野屋商店は、全国で113位となっている。

③市町村別は『大分市』が最多

市町村別100年企業数では大分市が73社で最多であった。
1位の大分市は、『屋根工事業』、『ガソリンスタンド』の2業種が3社で最も多い。
2位の中津市は、100年企業数40社であり、業種別に見ると『しょう油・食用アミノ酸製造業』が6社で最も多く、次いで、『農業用機械器具小売業』が2社である。
3位の天草市は、100年企業数37社であり、業種別に見ると『塩干・塩蔵品製造業』や『清酒製造業』を含めた6業種がそれぞれ3社で最も多い。
同じく3位である別府市では、『旅館・ホテル』が4社で最も多い。

④産業は『卸売・小売業、飲食店』が最多

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が176社(構成比49.3%)と最も多かった。次いで、『製造業』86社(同24.1%)、『サービス業』47社(同13.2%)の順である。
大分県は、大分臨海工業地帯の発展により、鉄鋼、石油、化学、半導体、機械、自動車、医療機器など幅広い産業がバランスよく立地している。製造品出荷額は福岡県に次いで九州第2位である。(経済産業省「平成29年工業統計調査」より)

⑤業種は『旅館・ホテル』が最多

業種別では、『旅館・ホテル』が16社で最多であった。大分県は日本一の温泉県であり、平成29年3月末における源泉数・湧出量はともに全国第1位となっている。(環境省「平成29年度温泉利用状況」より)別府や湯布院などの有名な温泉地にて古くからの旅館が多いのである。
2位は『蒸留酒・混成酒製造』が15社であった。大分県では江戸時代から清酒とともに粕取り焼酎が造られていた。明治時代に入ると製造技術も進歩し、白糖や穀物からも焼酎が造られるようになり、多くの酒造が誕生した。ちなみに大分で有名な麦焼酎は、麦の統制撤廃が実施された昭和26年以降に開発された。

⑥資本金は『1千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円未満』が構成比40.2%と最も多かった。次いで、『1千万円以上~5千万円未満』が32.2%、『5千万円以上~1億円未満』が2.5%の順である。
資本金トップは株式会社大分銀行(業種:普通銀行)が195億円。以下、株式会社アステム(業種:医薬品卸売業)が33億円、株式会社アメイズ(業種:旅館・ホテル)が12億円の順であった。
上位10社のうち金融業と運輸業がそれぞれ2社である。

⑦従業員数は『10人未満』が6割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比46.0%と最も多かった。次いで、『10~49人』が23.1%、『5~9人』が20.1%の順である。10人未満で6割を超える。
大分県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社大分銀行、株式会社アステムの2社は従業員1,000人を超える。

⑧売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比59.8%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が28.7%、『10億円以上~100億円未満』が8.3%の順である。
売上高上位10社のうち卸売・小売業と製造業がそれぞれ3社である。

⑨本業以外に貸事務所業を行っている企業は5社

大分県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は6社であり、構成比では全国45位となっている。そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は5社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは卸売・小売業と製造業がそれぞれ2社であり、本業以外に貸事務所業を行っている企業は少ない。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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