100年企業レポート vol.46 高知編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

高知県の100年企業に関する分析

高知の街並み

毎年8月9日~12日の4日間で行われる南国土佐・高知の『よさこい祭り』。約18,000人の踊り子が工夫を凝らし、地方車には華やかな飾り付け、市内を乱舞する高知商工会議所が中心となり、市民の健康と繁栄を祈願し、経済復興の足掛かりにと『よさこい祭り』を発足。1970年に日本の祭り10選に選ばれ、1990年には『YOSAKOIソーランが誕生』し、よさこい祭りは全国に普及した。よさこい祭りを通して高知のまちや人に惹かれ、踊るために高知に移住・転職する人がここ数年増加傾向にある。高知市では「よさこい移住プロジェクト」を発足し移住者のサポートを進めている。

高知県の100年企業数は、207社であり、全国45位である。

高知県は黒潮が育む豊かな水産資源に恵まれ、さまざまな魚を採ることができる。なかでも有名なのが「カツオ」。カツオの消費量は全国トップクラスを誇り、「高知県の魚」として愛されている。全国では、カツオ漁は「巻き網漁」が行われていれているなか、高知県では今でも伝統的漁法の「一本釣り」が大半を占める。一度に多く採れる「巻き網漁」と異なり、時間や労力が掛かるが魚が傷つきにくく魚価も高い。カツオは高知県の強力なコンテンツとなっており、水産業だけではなく、食文化や観光を含め大事な基幹産業となっている。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、高知県の特性を分析した。

働き世代の人口減少が進行、
経済活性をはじめさまざまな取り組みを推進

四万十川の清流や緑深い山々など豊かな自然に囲まれた高知県は、坂本龍馬などの多くの偉人を輩出してきた歴史と風土を持っている。しかし現在は 6 指標すべて平均を下回る厳しい状況にある。特に人口減少が進み、働き世代生産年齢人口数と働き先事業所数はかなり下位である。そのため高知県では 、6 次産業化の推進などの経済活性化、少子化対策、中山間対策などの取組みを全力で進めている。ちなみに、『商業地平均価格』も平均以下だが、郊外の商業施設や観光客増加などによる店舗需要により上昇している地域もあり、他指標ほど順位は低くない。

2.高知県の100年企業データ

①創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比41.3%であった。次いで『大正以降』の29.1%、『明治前期』の20.9%、『江戸時代』の8.7%の順である。
高知県は、古くから日本有数の酒どころであった。高知県最古の蔵元が創業した江戸時代には、高知の地酒は特産品として江戸まで流通していたとされている。また高知城の城下町では、大工や製材業者といった職人や、食料品店や小間物屋など様々な商店などが繁盛し、商業地として発展した。

②創業年TOP5

高知県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の司牡丹酒造株式会社は、全国で140位となっている。

③市町村別は『高知市』が最多

市町村別100年企業数では高知市が87社で最多であった。
1位の高知市では、『土木工事業』が4社と最も多く、次いで『他に分類されないその他の卸売業』、『家具小売業』、『一般病院』の3業種がそれぞれ3社である。
2位南国市は、100年企業数17社であり、17社それぞれ業種が異なる状況である。産業別に見ると製造業と卸売業がそれぞれ5社である。
3位の香美市は、100年企業数13社であり、業種別に見ると『利器工匠具・手道具製造業』が2社と最も多く、あとは異なる業種が各1社ずつという状況である。

産業は第3次産業が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が96社(構成比46.4%)と最も多かった。次いで、『製造業』64社(同30.9%)、『サービス業』21社(同10.1 %)の順である。
高知県では、全国平均と比較すると第2次産業の占める割合が低く、第3次産業が発展している。歴史ある製紙業や漁業、林業に関係する伝統産業が盛んであり、土佐和紙や土佐打刃物、カツオ・マグロ漁業などが有名である。最近はこのような伝統産業のほか情報通信業などの産業が伸びており、今後さらなる進展が期待されている。

業種は『清酒製造』が最多

業種別では、『清酒製造』が14社で最多であり、次いで『酒小売』も8社で2位であった。古くから酒造りが盛んであった。平安時代、紀貫之の土佐日記には既に土佐人は無類の酒好きという記述があることから、高知県の地酒の歴史は1000年を超えているのである。
3位は『生鮮魚介卸』が5社であった。カツオが有名な高知県は、黒潮が流れる太平洋に広く面しているため、長い海岸線では豊かな水産資源に恵まれている。その中でも特にカツオやマグロ漁は、県の水産業の40%以上を占める伝統的な産業である。土佐の一本釣りという昔からの漁法は現在も行われており、高知のカツオは有名となった。カツオを求めて観光客も訪れるなど、今やカツオは重要な観光資源となっている。

資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比45.4%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が27.6%、『5千万円以上~1億円未満』が5.1%の順である。
資本金トップは株式会社四国銀行(業種:普通銀行)が250億円。以下、株式会社ミロク(業種:純粋持株会社)が8.6億円、東洋電化工業株式会社(業種:フェロアロイ製造業)が3億円の順であった。
上位10社のうち建設業、製造業、卸売・小売業がそれぞれ2社である。

従業員数は『10人未満』が5割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比36.2%と最も多かった。次いで、『10~49人』が27.0%、『5~9人』が18.4%の順である。10人未満で5割を超える。
高知県の100年企業の多くは小規模企業であるが、株式会社四国銀行は従業員1,000人を超える。

売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比45.4%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が35.7%、『10億円以上~100億円未満』が15.3%の順である。
売上高上位10社のうち卸売・小売業が4社、製造業が3社である。

本業以外に貸事務所業を行っている企業は4社

高知県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は6社であり、構成比では全国40位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は4社存在しており、上場企業は1社であった。
貸事務所業との組み合わせは純粋持株会社が2社であり、本業以外に貸事務所業を行っている企業は少ない。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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