中小企業にとって有効なマーケティング戦略とは?

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目次

中小企業、特に製造業は大手の下請けとして発注元の指示通りに部品などを製造するという事業スタイルが中心でした。小売業などサービス業も、比較的狭い商圏で、特定の顧客を対象としたビジネスを継続的に行うというスタイルが一般的です。そのため、いわゆるマーケティング機能はそれほど中小企業には必要ではなかったといっていいでしょう。

しかし、事業環境の変化にともない、中小企業であってもオリジナルの製品やサービスを開発したり、新たな販路開拓に取り組んだりする必要があります。中小企業にとって有効なマーケティング戦略について考えてみます。

1.マーケティングとは何か?

マーケティングの考え方は、1世紀以上前にアメリカで生まれたとされます。少々、歴史的な話になりますが、18世紀にイギリスで始まった産業革命では、モノの生産効率が飛躍的にアップ。イギリスは大量生産した工業製品を海外の植民地などに輸出し、販売しました。

イギリスに遅れて工業化が進んだアメリカはほとんど植民地を持たず、企業は国内市場を開拓する必要がありました。そこで、必要とされる製品を効率よく生産し、販売する目的でマーケティングの考え方や手法が生まれたのです。

その後、社会や経済は大きく変わり、マーケティングの理論や手法は、心理学、数学、社会学、経済学など様々な学問の成果を取り込み発展しましたが、いまなお根底にあるのは「売れる仕組み」を考えることです。「売れる」とは、消費者であれ企業や団体であれ、自社の顧客ニーズを満足させ、自社の製品やサービスを購入してもらうことにほかなりません。

したがって、マーケティングは顧客ニーズから出発します。マーケティングは顧客志向を大前提としているのです。

2.中小企業におけるマーケティングの現状と課題

中小企業のマーケティングは、大企業と比べて様々な課題があるとされます。

ひとつは、マーケティングに対する認識不足です。大企業の多くはマーケティングを重視しており、予算を掛けて市場や顧客を分析し、新たな市場や顧客の獲得へつなげようとします。

一方、中小企業の多くは、特定の技術や製品、サービスに依存して事業を行っています。マーケティングで事業拡大を図るというよりは、現状の事業を守ることを優先しがちです。

そもそも、事業規模がそれほど大きくない中小企業では、マーケティングに予算をあまりかけることもできません。社内にマーケティングの専門知識やノウハウを持った人材も不足しがちです。

近年、顧客情報管理システムや広告の効果測定システムなど、マーケティングに関連するITシステムが急速に発達していますが、中小企業では予算と人手の不足からこうしたITシステムの導入、活用も進んでいません。

相変わらず営業といえば営業マンが戸別訪問して商談し、商品開発やプロモーションはデータ分析に基づくものではなく、担当者の経験や勘に頼りがちです。

3.中小企業がマーケティングに取り組むメリット

マーケティングは単なる営業や広告宣伝ではなく、企業としての経営戦略に関わる重要な事業活動のひとつです。これからは中小企業でもマーケティングに積極的に取り組むべきですし、これまであまり力を入れてこなかった分、“伸びしろ”があるともいえるでしょう。

中小企業がマーケティングを活用するメリットとしては、次のような点が挙げられます。

<経営資源の有効活用>

中小企業は大企業に比べ、人材、資金、技術、ブランド力など、経営資源は限られます。その限られた経営資源を売上や利益に結びつけるには、マーケティングが役立ちます。

すなわち、マーケティングの様々な手法によって顧客のニーズを探り、そのニーズと自社の強みや特徴のマッチングを行います。そして製品やサービスの改善・改良や新規事業の開発を進め、顧客との関係強化を図るのです。

<企業ブランディングの強化>

企業ブランディングとは、顧客が直接触れる製品・サービスだけでなく、パンフレットやWEBサイト、電話での対応まで、様々な活動を通じてイメージがつくられます。

マーケティングの視点と手法を使い、企業ブランディングを統一的に進めることは、自社の競争力を高めるだけでなく、人材確保など社内的にも大きな効果をもたらすでしょう。

<企業の成長>

マーケティングによって経営資源の有効活用や自社ブランディングの強化が進めば、既存顧客の購入単価や購入頻度を高めたり、新規顧客の獲得につながったりするでしょう。

こうしたことにより、売上や利益が伸び、企業の成長につながっていくのです。

4.中小企業におけるマーケティングの実践法

それでは、中小企業において具体的に、どのようにマーケティングを実践していけばいいのでしょうか。いくつかヒントを挙げてみます。

<組織体制の見直し>

中小企業では、大企業と比べると、予算や人材は限られます。新たにマーケティング部門を設けたり、マーケティングの担当者を置いたりするのは現実的ではありません。

そこで、まずは経営トップや営業担当者などが兼務することを検討してみましょう。ただし、そのために業務の負担が増えると逆効果です。マーケティングに取り組むには、従来の組織体制や業務の見直し、合理化とセットで考えましょう。

<スキル・知識の獲得>

マーケティングの実践にあたっては、マーケティングの各種フレームやデータの測定・分析についてのスキルと知識が必要になります。また、こうしたスキルや知識は、業種や業態、メインの顧客のタイプによって変わってきます。

たとえば、BtoCの小売業であれば、消費者に好まれる商品開発やプロモーションが重要でしょう。また、BtoBの製造業やサービス業であれば、取引先のニーズ把握や発注パターンに応じたアプローチが重要です。こうした違いを踏まえて、専門書や社外のセミナーなどから情報を集めます。

<ITシステムの導入>

マーケティングでは、仮説に基づいてプロモーションなどの各種施策を行い、その効果を測定しながら調整を繰り返すことで精度が高まり、顧客の満足度向上やリピート率の向上につながっていきます。

こうした作業の効率化に有効なのがMA(Marketing Automation)ツールです。日常的な施策や効果測定などを自動化できるため、少ない人員でも多くの業務を効率的に行うことができます。

しかも、最近では大きなシステム投資を必要とせず、すぐ導入が可能なものや、基本機能だけであれば月間数万円程度で使えるものもあります。

ぜひ、検討してみたいところです。

4.まとめ

中小企業にとってこれまでマーケティングは縁遠いものだったかもしれません。しかし顧客満足度の向上によるリピートの獲得や、業務体制の見直しなどでマーケティングは有効です。

まずできるところから始めてみてはどうでしょうか。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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