経営改善を先送り…過去にすがる「既往のしわよせ」とは?~20年で終わる会社と生き残る長寿企業[第2回]

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※過去の記事(2020/02/19公開)のデータをアップデートしたものです。

大手信用調査機関の調査によると、2021年に倒産した企業の数は6,000件あまりでした。業種別でみるとサービス業が最も多く、建設業、卸売業が後に続いています。また、倒産した企業の寿命ついては、最も長いのが製造業の36.3年、最も短いのが金融・保険業と情報通信業の15.7年でした。業種別にみるとその差が20年以上あるものの、平均寿命は23.8年という数値も導き出されています。

リーマンショックが起きた2008年(倒産企業数1万3,000件以上)以降、倒産企業数は13年連続で減少しています。しかし、2020年以降は、コロナ禍の厳しい状況を支えるための各種支援策による影響もあるとみられます。したがって回復傾向にあるものの、楽観はできない状況です。

同調査では業歴が判明した5,000件あまりについて、業歴10年未満の企業と業歴30年以上の企業の倒産件数を比較分析した結果も示されています。倒産件数に占める業歴10年未満の企業の構成比は26.5%であるのに対し、業歴30年以上の企業の構成比は33.8%と2年連続で上昇し、外部環境の変化に対応できていない状況がうかがえます。長寿企業といえども、これまでの成功体験にこだわっていては、今後は生き残ることが難しいといえるでしょう。

本連載では企業の倒産原因に注目し、企業が存続し続けるためのポイントを紹介していきます。今回は、倒産の直接的な原因となり得る「既往のしわよせ」について、特徴や対策を考えていきます。

過去の資産を使い果たす「既往のしわよせ」

「既往のしわよせ」と聞いても、ピンと来ない人がいるかもしれません。既往とは「過ぎ去ったこと」を指す言葉で、対して「しわよせ」は「あることの結果として生じた無理や矛盾を、他の部分に押しつけること」を指します。

このふたつを組み合わせた表現である「既往のしわよせ」による倒産とは、経営状態が悪化しているにもかかわらず、現実を直視せず具体的な対策を講じないまま過去の資産を使い果たして倒産に至ることをいいます。

「過剰に借入しているわけではないし、業績が悪化したなら、過去の資産を使うのは仕方がない」と考える方もいるかもしれません。しかし、個人の資産状況に置き換えて考えてみればどうでしょうか。

「給料は下がったけれど、貯金を切り崩せば何とかなる」

このような状態が長く続けば生活が立ち行かなくなるのは明らかです。生活費をきりつめて支出を抑えたとしても、いずれは貯金が底をついてしまうでしょう。企業の場合、キャッシュフローの規模が大きいため、驚くほどのスピードで追い込まれていくことになりかねません。

売上が右肩下がりであれば、数字により経営状態の悪化がはっきりと明示されているはずです。内部留保やキャッシュ減少への対処に遅れを感じている経営者は、「既往のしわよせ」を生じさせないよう、今すぐに対策を講じていかなければなりません。

「既往のしわよせ」が生じる原因とは?

企業は年間を通し、経営や財務・経理などについて、総合計画を策定しておかなければなりません。特にキャッシュフローに関連する財務計画は重要です。しかしながらCFOまたは財務本部長に任せきりで、詳細を把握していないという経営者は意外に多いのです。こうした企業は明確な指針を持たないままに経営を続け、自ら業績の低下を招いてしまうことになります。

■経営や財務計画が機能していない

企業は年間を通し、経営や財務・経理などについて、総合計画を策定しておかなければなりません。特にキャッシュフローに関連する財務計画は重要です。しかしながらCFOまたは財務本部長に任せきりで、詳細を把握していないという経営者は意外に多いのです。こうした企業は明確な指針を持たないままに経営を続け、自ら業績の低下を招いてしまうことになります。

設備投資をしていない

「既往のしわよせ」が生じている企業も、業績が好調だった過去があります。しかし、いずれ競合他社やまったく違う業種の代替品が台頭してきます。競争力を維持するためには、業績が好調なうちに新商品や新サービスを開発しなければなりません。企業内の設備が劣化している、型が古くなっているという状態では、新たな開発にチャレンジできない場合があります。また、既存製品の生産設備のメンテナンスが十分でなければ、設備の不調が生産に悪影響を与え、業績の悪化に直結することも考えられます。

■人材育成が進んでいない

企業の黄金期に活躍したスタッフの技術が、後進の若手にうまく継承されているのか、いま一度見直してみることも必要です。若手人材の育成を先延ばしにしていると、ベテラン社員の退職により、技術や知識、経験、ノウハウが失われたり、新たな技術の開発に遅れが生じたりして、業績の悪化につながる恐れがあります。

■顧客の新規開拓を重視していない

企業の売上を支えるにあたり、大口顧客と緊密な関係を築いておくことは非常に重要です。

しかし経営環境の変化が激しい近年においては、大企業であっても不景気の影響を受けることも考えられます。取引縮小やよりよい条件を提示する競合他社への乗り換えなどにより、大口顧客との繋がりが断ち切られてしまう可能性も充分に考えられます。

「既往のしわよせ」に直面している中小企業の中には、大口顧客との長期的な信頼関係に甘んじ、顧客の新規開拓を重視していないケースがあります。複数かつ異業種の取引先から業務を受注する「取引先のメッシュ化」によって、リスクを低減する必要があります。

「既往のしわよせ」の状態から脱却するための対策

ここまで「既往のしわよせ」と、その原因について考えてきました。思い当たる部分のある経営者は、すぐに対策を講じなくてはなりません。どのような点に注意していくべきなのか、見ていきましょう。

■経営状態をきちんと把握する

経営計画や全体の方針を定めていない経営者は、財務や経理の情報に基づき、キャッシュフローを随時確認する習慣をつける必要があるでしょう。

1年間の決算データが出た時点で初めて「前年から売上がダウンしている」という状態を知るようでは、いつまで経っても「既往のしわよせ」の状態から脱却できません。そこで、以下のポイントを実践していくようにしましょう。

・CFOや財務責任者とのコミュニケーションを緊密化する

・CFOや財務責任者のマネジメント能力をいま一度確認し、不安を感じるところがあれば、キャッシュフローレポートを提出させることを習慣化する

・会社の資産状態を随時確認する

・財務計画の立案を習慣化し、適宜確認や修正を行う

現状維持ではなく、未来を見据えた先行投資を行う

「既往のしわよせ」に陥っている企業は、過去の好況に甘んじ、新たな局面を切り拓く努力を怠っているケースがあります。資金に余裕があるうちに先行投資の必要性を理解し実践していきましょう。

・人材への投資を行い、技術や知識、経験、ノウハウを引き継ぐ

・人材採用では非正規雇用の人材で隙間を補填するのではなく、将来性のある若い人材を育成する努力をする

・社内設備が老朽化している場合は、刷新を検討する

■企業の新たな可能性を模索する

自社の業種が衰退産業に含まれている場合は、強い危機感を持つ必要があります。蓄積したノウハウを活かし、新たな事業展開を模索するのも一案です。

・顧客を新規開拓し、取引先のメッシュ化を図る

・商品力や品質を高める努力を真摯に行う

・別の業種への参入を本格的に検討する

まとめ

「既往のしわよせ」が起きるということは、「これまでの実績がある」、あるいは「先代の遺してくれた資産がある」証拠でもあります。しかし厳しさを増す国内外の経済状況を鑑みれば、過去の実績や資産に頼った経営は、企業存続を危うくしている状態といえるでしょう。企業の経営者は、未来を見据えて早期の対策を心がけなくてはなりません。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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