あなたは資質あり?理想的なリーダーシップとは?

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※百計オンラインの過去記事(2016/04/20公開)より転載

リーダーシップの定義は多岐にわたり必ずしも明確ではありませんが、日本におけるリーダーシップは「統率力」に近い意味で使用され、自分が先頭に立って引っ張るタイプが優秀なリーダーとみなされる傾向にありました。経営においては社員を引っ張るなど、「カリスマ経営者」がイメージされることが多いのではないでしょうか。しかし、時代の変化や価値観の多様化によって、理想的なリーダーの在り方も変わってきています。最近では「サーバント(支援)型」といわれるリーダーシップにも注目が集まっています。これは「ダイバーシティ・マネジメント」への関心の高まりとも密接に結びついているようです。

サーバント・リーダーシップとは「上司が部下を支援すること、すなわち縁の下の力持ちの役割を果たすことで、チームを目標達成に導くための行動」を指します。米国の教育コンサルタントであるロバート・K・グリーンリーフが1970年に発表したエッセイ「リーダーとしてのサーバント」をきっかけに、米国のみならず世界へと広がった理論として知られています。一方、ダイバーシティ・マネジメントとは「多様な人材を活かし、その能力を発揮することで組織を強化し経営上の成果を上げること」を指します。

最近は日本においても、女性や高齢者、外国人など多様な価値観を持つ人材を積極的に活用することが企業戦略として求められています。しかし、実際のところ、日本企業はみんなが同じ行動をとる「集団行動」は得意ですが、それぞれ違った役割を機能させる「チーム行動」は苦手ということがうかがえます。トップダウンではなく、よりフラットな組織のなかで、多様な人材をマネジメントできる、時代にあったリーダーが求められているのではないでしょうか。

サーバント・リーダーシップに求められる10の資質

リーダーに求められる資質はさまざまですが、日本サーバント・リーダーシップ協会によると、サーバント・リーダーシップに求められる資質として以下の10の特性があげられています。

1. 傾聴
相手が望んでいることを聞き出すために、ただ話を聞くのではなく相手の小さな仕草などにも目を配り、リーダーとして何ができるのかを考える。また、自分の内なる声に対しても耳を傾ける。

2. 共感
相手の立場に立って、相手の気持ちを理解する。人は不完全であるという前提に立ち、相手を受け入れ、共感する。

3. 癒し
相手の気持ちが沈んでいる時には心の傷を癒して、本来の力を取り戻させる。組織や集団においては、欠けている力を補い合えるようにする。

4. 気づき
鋭敏な知覚により、物事をありのままに見る。俯瞰して見ることで、自分に対しても、気づきを得ることができる。また、相手に気づきを与えることができる。

5. 納得
相手とコンセンサスを得ながら納得を促すことができる。影響力や権限を使って、服従を強要しない。

6. 概念化
将来に対する大きな夢やビジョンを持ち、それを相手に伝えることができる。また、さまざまなビジョンをひとつにまとめることができる。

7. 先見力
現在と過去の出来事を照らし合わせ、そこから直感的に将来の展望を予想できる。

8. 執事役
自分の利益を優先するのではなく、相手の利益に貢献することを喜びにできる。相手に気持ちよく働いてもらえるよう一歩引くことを心得ている。

9. 成長への関与
仲間の成長を促すことに深くコミットしている。一人ひとりが秘めている力や価値に気づき、長所を引き出すことで、組織も成長させていく。

10. コミュニティづくり
愛情と癒しに満ち、人々が大きく成長できるコミュニティを創り出す。

リーダーシップを身に着けるにはどれも欠かせない資質となりますが、特に相手の話をよく聞き、コミュニケーションを重視すること、そしてメンバーに対して謙虚に接する心がけが肝要といえそうです。

サーバント・リーダーシップの導入事例

サーバント・リーダーシップを経営の基盤に取り入れた企業は多数あります。

資生堂では、経営難にあった中で就任した当時の社長によって、お客様を頂点とする逆三角形のピラミッドの組織が作られました。そして、お客様に一番近い存在である現場スタッフをピラミッドの上層に置き全社で支えることを、組織図という目に見える形で明確に示したのです。彼らの提案やリクエストをもとに新しい施策を打ち出し、経営改革を推し進め、成功へ導きました。

サイバーエージェントでは、社員一人ひとりにセルフリーダーシップを求め、多様な経験から自ら能力を引き出せるような環境を提供しています。多くの新規事業や社内起業が生まれ、継続的な事業拡大を図ることで、グループ全体の収益性を上げています。

また、ユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)の会長である柳井正氏は、サーバント・リーダーシップに共感し、社内の全社員参加会議での演説の中で「社員全員と経営者全員に『サーバントリーダー』になってもらいたい」と発言しています。

リーダーが信頼を失う4つの罠

リーダーシップを発揮するためには信頼関係を築くことが大切で、求められる上司になるのか、反面教師になるのかも、信頼の有無にかかっています。リーダーが信頼を失うことにつながる、陥りがちな罠として以下の4つが知られています。

1. パターン化の罠
自分にとってわかりやすい、もしくは都合の良いようにメンバーの性格などをパターン化して判断すること。Aさんは「ポジティブ・シンキング」、Bさんは「マイナス思考」などと類型化・単純化してしまうことで、その人が本来もっている個性や多様性をひきだせなくなる。

2. 類似性の罠
自分がすでに知っている人との類似性から、その人の能力や性格を判断すること。Bさんが自分の知人であるAさんと似ている部分は認識するが、違う部分については見落としがちとなり、Bさんの個性が埋没してしまう。

3. 二者択一の罠
すべてにおいて白黒をはっきりつけてしまうこと。仕事に対する向き・不向きなどについて、イチかゼロかの二者択一で判断してしまうことにより、伸びしろのある能力や可能性を狭めてしまう。

4. ステレオタイプの罠
「年寄りは気難しい」、「最近の若者は礼儀をしらない」など、真偽はともかく一般的によくいわれているステレオタイプを特定の個人にもあてはめること。その人の個性を見失うことになり、また個性を発見する努力を怠ることにもなる。

リーダーは、メンバーのうちに秘めた可能性を引き出し、能力を最大限に発揮させることで、チームを目標へと導くことができます。そのためには、共感し、ともに納得することが前提となりますが、先入観や固定観念、短絡的なものの見方は信頼関係を損なうことになりかねないので気を付けましょう。

日々の行動によって積み重ねられた誠実さや、知識・自身の体験を惜しみなく共有できる寛容さやは信頼関係を強くしてくれることでしょう。

時代とともに理想のリーダー像も変わっていきます。同じ組織であっても部署によっては、求められるリーダーシップが違うこともあるでしょう。

ひとつの型にはめるのではなく、どのようなアプローチであれば、メンバーの成長を促しチームを目標へと導くことができるのか、メンバーの個性に合わせて接し方や育成方法を変えることも必要でしょう。また、環境に合わせてリーダーシップのスタイルを使い分けるといった適応力も、これからのリーダーにとって重要なカギになるのかもしれません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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