新規獲得にかかるコストは既存の5倍?営業戦略としてのリテンション施策の重要性

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※百計オンラインの過去記事(2018/09/18公開)より転載

多くの企業は、新規顧客の獲得に力を入れますが、既存顧客の維持をおろそかにしてしまう傾向も散見されます。しかし、新規顧客を獲得するコストは、既存の顧客を維持するコストの5倍かかると言われています。安定した利益を上げるポイントは既存顧客の維持に力を入れることです。では、具体的にどのようにして既存顧客を維持すれば良いのか考えてみましょう。

新規顧客の獲得はコストパフォーマンスが悪い

多くの企業が売上を拡大するために最優先課題と認識していることは、新規顧客の開拓です。広告宣伝を行い、見込み客リストを集め、電話でアプローチした後、営業マンが訪問して商品・サービスの説明をし、顧客との信頼関係を構築した結果、受注につなげる――。業種やビジネスモデルによって営業プロセスは異なりますが、新規顧客を獲得するためには、このように時間と手間がかかります。

一方で、既存顧客にリピート(再来店・再購入)してもらうには、それほどの手間はかかりません。既存顧客は自社の商品・サービスについて一定の理解があるためです。DMなどで再来店を促したり、既存顧客向けのキャンペーンを実施したりするだけで、リピートにつながる可能性は高まります。

経営の世界でよく言われる法則に、「顧客獲得費用5:1の法則」があります。既存顧客にリピートしてもらうコストと比べて、新規顧客1人を獲得するコストは5倍かかるということです。新規顧客の獲得は、実はコストパフォーマンスが悪いのです。

既存顧客の維持(リテンションマーケティング)の重要性

ところが、そのことに気づいていない企業は多いのです。既存顧客維持(リテンション)の重要性を説いた書籍、『売上の8割を占める優良顧客を逃さない方法――利益を伸ばすリテンションマーケティング入門』(大坂祐希枝/ダイヤモンド社)によると、「新規顧客の獲得に重点を置く企業が44%であるのに対し、リテンションに重点を置く企業は18%」という調査結果が出ています。

多くの企業が新規顧客ばかりに目を向け、既存顧客を置き去りにしてしまっていることがわかります。その結果、既存顧客の離反が起こるケースもあります。携帯電話会社がそのいい例でしょう。

携帯電話会社は大々的な広告宣伝を行い、新規契約者の獲得に力を入れています。一方で既存顧客に対する囲い込み施策にはあまり力を入れないため、他社への流出が増加してしまいます。流出を新規顧客で穴埋めするべく、また広告宣伝を行います。つまり悪循環に陥っているのです。新規顧客獲得よりもリテンションの方に力を入れれば、余計な広告宣伝費をかけずに安定して売上を作ることができるはずです。

具体的に何を実施すればいいのか

では具体的に、どのようにしてリテンション施策を実行すればいいのでしょうか。いくつかの方策を紹介しましょう。

・無料や低価格で新規顧客を釣るキャンペーンは中止する
キャンペーンで顧客を釣っても、すぐに解約が発生したり、一度だけの来店・購入だけで終わったりしてしまっては意味がないためです。

・解約理由を聞き、解約を止めるように説得する
顧客からサービスを解約したいという申し出があった時に、引き留めましょう。その際、解約理由を聞き出し、それに対して自社ができることを提案します。

・既存顧客に対して積極的なコミュニケーションをとる
再来店・再購入を促すために、DM・電話・メールなどを使って定期的に連絡しましょう。その際に顧客のニーズを聞き出せば、その情報を基に新たな提案することができます。

・優良顧客に対して特別なサービスを実施する
自社にとっての優良顧客を定義し、その顧客限定で特別サービスを実施しましょう。たとえば「契約○年以上」の顧客に、プレゼントや料金の割引などを行います。

リテンション施策の考え方は、他の業界にも適用できます。たとえば賃貸経営なら、広告費をかけて空室を埋めることだけでなく、既存の入居者へのサービスにも力を入れてみてはどうでしょう。既存の入居者の声に耳を傾け、設備やサービスを改善し、顧客満足度を高めて長期契約を実現することが、結局は賃貸経営の利益を安定化させることにつながります。

ほかの多くの業界・業種にとっても、同じことが言えるでしょう。新規開拓も重要ですが、既存顧客を維持するリテンションにも目を向けてみてはいかがでしょうか。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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