「借入れ」による資金調達…失敗しないためのポイントは?
~会社の「資金繰り」完全ガイド[第2回]

経営者であれば、突然、資金が必要になる場面に遭遇することは珍しくありません。しかし資金繰りの正しい知識がないと、思わぬトラブルに巻き込まれ、大きな損失に繋がってしまうこともあります。

本連載では、健全な企業経営のためにも、資金繰りの基本を学んでいきます。今回は、中小企業の資金調達法としてメジャーな「借入れ」のポイントを紹介していきます。

借入れの最適なタイミングとは?

現金預金がギリギリの状態になってから、借入れを検討するようでは遅すぎます。会社の規模にもよりますが、500万~数千万円の現金があるうちに借入れに臨むのが、最適のタイミングです。

経営者のなかには無借金経営を理想に掲げ、借入れを罪悪視しているケースも少なくありません。しかし、現金が足りず社員に給料が払えないという事態に陥った場合はどうでしょうか。優秀な社員が続々といなくなり、会社自体が立ち行かなくなってしまうでしょう。このように、借入れのタイミングには余裕を持っておくことが必要なのです。

前回(関連記事:『融資、資産売却、私募債…中小企業の資金調達法』)、「まず銀行または政府系金融機関に融資を申し込み、断られた場合はノンバンク系へ」と紹介しました。ノンバンク系を優先すると、銀行などの審査に悪影響が及ぶからです。しかし、銀行または政府系金融機関の審査は、1ヵ月ほどかかります。できるだけ借入れは避けたいと先延ばしにしていると、申込先の選択肢から外さざるを得なくなってしまいます。ノンバンク系は審査が比較的早いというのが特徴ですが、それでも10日間程度は見ておかなくてはいけません。また金利は銀行より5倍近くも高くなります。

限界まで先送りにしたため、条件の悪い借入れとなってしまう…。そんな結果を招くようでは、本末転倒だといえるでしょう。

借入れの連帯保証人は経営者自身

借入れをする際、融資先は借主が返済できない場合、代わりに返済義務を負う保証人を求めます。個人の場合は親族や知人などが該当するでしょう。では会社の場合、どうでしょうか。企業の連帯保証人となるのは、経営者本人です。経営者自身が検討の末、借入れを申し込みますが、融資は会社に対して行われ、経営者個人の財産とは無関係です。そのため、経営者自身が連帯保証人となり得るのです。なお融資を行う銀行などは、以下のような事態を警戒しています。

・経営者自身には返済能力があるのに、会社が倒産したために返済不能となってしまう。

・経営者が倒産を見越し、めぼしい資産を自身に移してしまう。

こうした事態を防ぐため、経営者を連帯保証人として指名します。また、もし経営者自身の財産が潤沢である場合、積極的に連帯保証人となることで融資がスムーズに進むというケースも考えられるでしょう。

なお連帯保証人の責任は重く、催告の抗弁権(債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる権利)はありません。このため何とか連帯保証人となることを避けられないかと考える経営者もいます。実際に不可能ではありませんが、財務状況が良く、経営の透明性が確保され、なおかつ「企業と経営者の資産が明確に区別されている」という要件を満たしていなくてはいけません。中小企業がこれらすべてをクリアするのはなかなか難しく、審査のハードルも高くなっています。借入れの際、自分自身が連帯保証人になるという覚悟だけは、固めておくようにしましょう。

信用保証協会と保証付融資

融資の申し込み先としてのおすすめは銀行ですが、まだ創業から歴史が浅く、融資を受けるのも初めてという中小企業の場合は信用保証協会保証付融資という条件が付くことがあります。

信用保証協会とは認可法人で、全国の都道府県にひとつ以上存在しています。同協会は、企業の返済が滞った場合、企業や経営者に代わって返済を保証します。

信用保証協会保証付融資を利用する企業は、利息のほかに協会へ保証料を支払わなくてはいけません。しかし低金利の定型制度融資を用意されることが多く、長期返済や利子補給(利子の一部または全部に相当する金額を給付すること)も可能になります。そもそも協会自体が、中小企業の資金繰りを円滑化させるために存在しているので、信用保証協会保証付融資をきちんと返済した実績ができると、その後は銀行から保証なしの融資(プロパー融資)も受けられるようになるでしょう。

このように信用保証協会は中小企業にとって頼もしい存在ですが、保証付融資を受ける場合は、銀行だけでなく同協会の審査も通過しなくてはいけません。業種や資金使途、そして経営者の個人信用情報などが審査され、融資は難しいと判断される場合もあります。

また協会との面談も必須です。面談の際は、決算書や総勘定元帳、預金口座の通帳1年分などの資料を提示しなくてはいけません。そして、融資を希望したきっかけから会社立ち上げの経緯までを、根掘り葉掘り尋ねられます。面倒なのは確かですが、一つひとつを確実にクリアしていくことで、企業の信用性を内側から高めていくことができます。

金融機関を装った詐欺に注意!

資金繰りは多くの中小企業にとって難題です。このため弱みに付け込もうとする詐欺も横行しているので、注意しましょう。

手口としてはFAXなどの送信が挙げられます。与信結果報告などと称し、「数千万円の融資が可能です」と連絡があったら注意が必要です。資金繰りが難航している経営者は、うっかり融資を申し込んでしまう…すると「信用状況を見たい」と数十万~数百万円を指定口座に振り込ませようとします。冷静さを失った状態では、このような常套手段にだまされてしまうことがあるのです。

なお詐欺集団は、銀行や政府系金融機関を名乗ることはなく、「〇〇総合保証」などのノンバンク系を装うことが多いようです。融資を申し込んでいないのに接近してくる場合は、企業情報などを念入りに調査しましょう。

また近年は、ファクタリング詐欺も増加しています。利用の際に「審査時間が異様に早い」「提出しなければならない書類が少ない」など不審を感じた場合は、契約を急がず慎重を期すべきです。

まとめ

資金繰りはどんな中小企業にとっても重要であり、融資を受けきちんと返済するというサイクルは、企業にとって決して無益ではありません。

融資が必要になる前段階から、真剣に方法を模索しておく必要があるのです。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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