マーケティングの重要指標「LTV」の高め方
~経営者こそ知っておくべき、マーケティングのトレンド[第6回]

競争の激しい成熟市場において、中小企業が安定経営を図るために、顧客の生涯価値=LTVという考え方に注目が集まっています。

経営者だからこそ知っておきたい、最新のマーケティング事情に迫る本連載。今回は、LTVが重要視される背景を解説するとともに、この指標を改善するための方策を探ります。

LTVとは?

近年、マーケティング活動の中でもっとも重要な指標の1つとされている「LTV」とは「Life Time Value」の略称です。日本語に訳すと「顧客生涯価値」。つまり、消費者が企業との取引を開始してから終了するまでの、「顧客ライフサイクル」と呼ばれる期間にもたらす価値のことを指しています。

例えば、1人の消費者が特定ブランドのコスメ商品を購入したとしましょう。その人が商品を気に入ればリピーターとなり、人によっては「これが私の定番。ほかの商品は使えない」と何年にもわたって購入し続けてくれるかも知れません。

しかし、化粧品業界にはたくさんの競合商品がありますから、「もっと安くて高機能な商品を見つけた」という理由から、他社商品へと乗り換えてしまうこともあるでしょう。すると、その消費者の「顧客ライフサイクル」はいったん終了します。

この「顧客ライフサイクル」が長く、そしてその期間のリピート購入が多いほど、「LTVが高い」ということになります。

なぜLTVが重要なのか

LTVが注目を集めている背景として、成熟した市場には競合が多く、新規顧客の獲得にかかるコストが増大していることがあげられます。

一般的に、「新規顧客の獲得には、既存顧客維持の5倍のコストがかかる」と考えられています。これが事実ならば、闇雲に新規顧客の獲得をねらうよりも既存顧客との関係強化に力を注ぎ、「リピート率向上」「離脱率低下」を図った方が経営効率は高まるはずです。

とは言え、既存顧客のリピート率を高めるだけでは、売り上げは維持できても企業の成長はいずれ頭打ちになってしまいます。事業の拡大を図る上では、新規顧客の獲得にも適切なコストを払う必要があるのです。

実は、1人の顧客を獲得するためにかけられるコスト(CPA:顧客獲得単価)の算出にもLTVが役立ちます。分かりやすく言えば、算出した平均LTVよりも小さなコストで新しい顧客を獲得できれば、利益が拡大していくということです。

LTVの計算方法

ここまでLTVの概要と活用法を紹介してきましたので、次に具体的な計算方法を見ていくことにしましょう。まず、基本となる計算方法は以下です。

(1)平均顧客単価×平均購入回数
ビッグデータを基に、全顧客の購入単価と購入回数の平均値を算出して乗ずる、もっとも単純なLTVの算出方法です。

例えば平均顧客単価2,000円で平均購入回数が12回という場合、LTVは2万4,000円となります。

(2)平均顧客単価×平均購入頻度×平均継続期間×平均収益率
上記の計算に継続期間と収益率の観点を加えることで、より詳細なLTVを算出する方法です。

例えば平均顧客単価2,000円で平均購入頻度は月に1回(年12回)、平均継続期間は1年、そして収益率は60%というサービスの場合、LTVは以下のように算出されます。
2,000円×12×1×0.6=1万4,400円

(3)平均顧客単価×平均購入頻度×平均継続購入期間×平均収益率-(顧客の獲得コスト+維持コスト)
こちらは上記の計算式から顧客獲得/維持コストを引く計算式で、より実質的な利益の算出に役立ちます。

ほかにも、LTVにはいくつかの計算方法があります。自社商品(サービス)の特徴や「LTVをどのような目的で活用するのか」を意識しながら、最適な計算方法を選択していくといいでしょう。

LTVを向上させる方法

企業が安定経営を図る上で重要なLTVですが、ここからはそれを向上させるための具体的な方法について見ていきましょう。

■顧客単価を高める
当然のことながら、消費者1人あたりの商品・サービスの購入金額が増えれば、LTVは高まります。そのためには、上位グレードの商品への乗り換えを意味する「アップセル」や、関連するオプション商品の購入を指す「クロスセル」という方法があります。

■購入頻度を高める
顧客単価を上げることが難しくても、これまで2カ月に1回だった購入頻度を、1カ月に1回に増やすことができれば、LTVは向上します。購入頻度を高めるには、「商品の消費時期を見計らったプッシュメール」の送信などが有効でしょう。

■リピート率を維持する
LTVを高める上で、「顧客ライフサイクル」を伸ばすことが重要だということは冒頭で述べた通りです。一度顧客になった人に、長く商品を購入し続けてもらうには「商品の新たな使い方を提案するメールマガジン」などが有効です。しかし、メールマガジンは一方通行の情報発信ですので、モニター調査などを通じて顧客の声を収集し、商品やサービスの質を高めていく努力も必要です。

このほか、「これから上顧客に成長しそうな層」や「休眠層」に向けても、個別のアプローチを考えていきたいところです。それぞれの層へ最適な情報を発信していくことが、全体のLTV向上へつながります。

 

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する
調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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