100年企業レポート vol.31 静岡編

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目次

はじめに

日本は創業100年を超える長寿企業(本レポートでは『100年企業』と呼ぶ)が世界で最も多い国である。その理由や影響を与える要素が何であるかを探ることを、本研究のテーマにした。そして各都道府県の100年企業の特性や傾向を明らかにし、100年企業を創出しやすい環境や要因について分析を行うことが本研究の目的である。

静岡県の100年企業に関する分析

静岡県の街並み

静岡県には世界遺産である富士山をはじめ、ダイナミックな自然を体感できる場所が多く存在する。そのなかでも、東部に位置する伊豆半島は2018年に「世界ジオパーク」に認定され、太古の火山活動によって形成された城ヶ崎海岸や堂ヶ島など、自然が生み出した独特の景観を見ることができる。

静岡県の100年企業数は、1,176社であり、全国7位である。

東京など大量消費地である大都市に近く交通環境がよいことや、富士の麓の豊富な地下水源を利用できることから製紙工場が多く集積する。特に製紙業が盛んな富士市は「紙のまち」と呼ばれ、トイレットペーパーやティッシュなど衛生用紙が全国トップシェアを誇る。また、市内には紙のアートミュージアムや体験施設があり、紙のもつ魅力を発信している。

本レポートでは、100年企業数に相関の高い指標別にレーダーチャートを用いて、静岡県の特性を分析した。

交通の利便性がよい反面、
東京圏への人口流出が加速

富士山をはじめとした豊かな自然に恵まれた静岡県は、東西主要都市の中間あたりに位置しているためか、独自の発展を遂げている。高速道路や新幹線などの交通アクセスもよく、さまざまな産業が発達しているため、働き世代(生産年齢人口数)と働き先(事業所数)も上位である。しかし東京圏への人口流出が多く、人口減少が全国と比較しても早いスピードで進んでいる。また、『相続税課税割合』が全国5位と高いことから、一部の富裕層だけではなく幅広い層で相続税が発生していることが窺える。したがって資産状況の把握と、適切な相続税対策が必要になってくるだろう。

2.静岡県の100年企業データ

① 創業年は『明治後期』が最多

創業年の時代別では、最多が『明治後期』の構成比42.2%であった。次いで『明治前期』の28.3%、『大正以降』の20.9%、『江戸時代』の8.6%の順である。
静岡県の駿府は、江戸時代には茶問屋の町として発展し、御用茶を納めるなどして有名になっていった。明治時代になると、東海道線開通や清水港からの輸出によりさらに生産は拡大し、日本一の茶生産地となった。また、この頃の近代化にともない、水道、電灯、鉄道・バスなどの都市基盤が整備されたため、各種工事業も多くなっている。

② 創業年TOP5

静岡県の創業年TOP5は下記の5社である。
第1位の有限会社丁子屋は、全国で115位となっている。

③ 市町村別は『静岡市』が最多

市町村別100年企業数では静岡市が280社で最多であった。
1位の静岡市では、『製茶業』が20社と最も多く、次いで『建築工事業』が9社である。
2位の浜松市は、100年企業数201社であり、業種別に見ると『貸事務所業』が7社と最も多く、次いで『建築工事業』が6社である。
3位は沼津市と焼津市が、それぞれ100年企業数64社であった。業種別に見ると『その他の水産食料品製造業』が最も多く、次いで『生鮮魚介卸売業』と同じであり、どちらも水産業が盛んであった。

④ 産業は『製造業』が盛ん

産業別では、『卸売・小売業、飲食店』が556社(構成比47.3%)と最も多かった。次いで、『製造業』311社(同26.4%)、『建設業』144社(同12.2%)の順である。
静岡県は、さまざまな産業が集積していることから「産業のデパート」と言われており、その中でも第2次産業の割合が高く、平成29年の製造品出荷額は全国4位である。特にプラモデル、ピアノなどの楽器、自動車や二輪車などの輸送用機械器具は全国トップクラスのシェアを誇っている。

⑤ 業種は『製茶業』が最多

業種別では、『製茶業』が61社で最多であった。静岡県はお茶の生産量と栽培面積が全国トップである。今や静岡を代表する農作物であるお茶は、鎌倉時代に駿河国の僧侶である聖一国師(しょういちこくし)が、中国からお茶の種を持ち帰り、足久保市の土地に栽培したのが始まりとされている。
また焼津では江戸時代からカツオ漁が行われており、その他にも伊豆半島や駿河湾、浜名湖など多くの漁場をもつ全国有数の水産県である。そのため『他の水産食料品製造』が3位に入っている。沼津や焼津のカツオ、サバの節製品、駿河湾のシラスなど特産品も多い。

⑥ 資本金は『1千万円以上~5千万円未満』が最多

資本金別では、『1千万円以上~5千万円未満』が構成比59.4%と最も多かった。次いで、『1千万円未満』が17.3%、『5千万円以上~1億円未満』が5.7%の順である。
資本金トップはスズキ株式会社(業種:自動車製造業)が1,380億円。以下、静岡県信用農業協同組合連合会(業種:信用農業協同組合連合会)が1,113億円、株式会社静岡銀行(業種:普通銀行)が908億円の順であった。
上位10社のうち製造業と金融業がそれぞれ4社である。

⑦ 従業員数は『10人未満』が5割超え

従業員別では、『4人以下』が構成比36.6%と最も多かった。次いで、『10~49人』が30.6%、『5~9人』が20.5%の順である。10人未満で5割を超える。
静岡県の100年企業の多くは小規模企業であるが、スズキ株式会社は従業員10,000人を超え、株式会社静岡銀行とヤマハ株式会社は従業員2,000人を超える。

⑧ 売上高は『1億円未満』が最多

売上高別では、『1億円未満』が構成比41.2%と最も多かった。次いで、『1億円以上~10億円未満』が40.5%、『10億円以上~100億円未満』が15.1%の順である。
売上高上位10社のうち製造業が4社である。

⑨ 本業以外に貸事務所業を行っている企業は25社

静岡県で本業もしくは副業にて不動産業を行っている企業は81社であり、構成比では全国11位となっている。
そのうち、本業以外に貸事務所業を行っている企業は25社存在しており、上場企業は0社であった。
貸事務所業との組み合わせは、卸売・小売業が11社と最も多い。

データについて
・本レポートにおいて、創業100年以上経過した企業を『100年企業』と定義する。
・本レポートでは、信用調査機関の企業データから、創業年が1919年(大正8年)以前の企業を抽出した。

※創業年について
創業年が「○○年間」等のように元号もしくは時代のみ判明している場合は、その元号もしくは時代の最終年を創業年としている。ただし、江戸時代は前・中・後期に分けている。

※対象企業について
営利企業を中心としているが、非営利団体(学校、病院など)も含む。ただし、宗教法人は除いている。

※クラスター分類について
・本レポートの全国編にて、47 都道府県を7 クラスターに分類している。各クラスターについての詳細は全国編参照。

※本レポート記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本レポートは情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。

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著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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