中小企業の生産性向上をサポートする3つの補助金~中小企業経営者のための補助金・助成金ガイド[第2回]

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中小企業にとって攻めの経営に舵を切る上で頼りになるのが、各種の補助金や助成金です。今回は、長年にわたって中小企業の課題とされてきた生産性向上をサポートする補助金を見ていきましょう。

中小企業の生産性向上は待ったなし

そもそも、「労働生産性」とは従業員がどれだけ効率的に成果を生み出したかを数値化したもので、「従業員一人当たりの付加価値額」とされます。

労働生産性=付加価値額/労働力

※付加価値額=営業利益高+人件費+租税公課+不動産・物品賃借料

※労働力=役員数+総従業員数

労働生産性を上げるには基本的に、同じ付加価値額をより少ない労働力で生み出すか、同じ労働力でより高い付加価値額を生み出すか、いずれかが必要です。

付加価値額の中身に注目すると、特に重要なのは「営業利益高」です。本業でいかに儲けるかということが労働生産性を向上させる大前提であり、それには顧客の拡大、適切な在庫管理、業務効率の改善のための設備投資、従業員の能力向上などが欠かせません。

この労働生産性の推移を企業の規模別にみると、大企業は2008年のリーマン・ショックの後大きく落ち込みましたが、その後は回復傾向にあります。一方、中小企業はほぼ一貫して横ばいです。その結果、企業と中小企業の労働生産性(従業員一人当たり付加価値額)の差は広がっているのが現状です。

中小企業の生産性向上はいまや、待ったなしの課題といっていいでしょう。

[図表1]企業規模別従業員一人当たり付加価値額(労働生産性)の推移

(出所)中小企業庁「中小企業白書 2018」58ページのデータを基に株式会社ボルテックス100年企業戦略研究所が作成

なぜ中小企業の生産性は伸び悩んでいるのか

それではなぜ、中小企業の生産性が伸び悩んでいるのでしょうか。

一般的には、事業規模が小さく効率化を進めにくいこと、労働集約型のサービス業が多いこと、財務基盤が弱く新たな設備投資が遅れがちなこと、などがあげられます。

業種によっても差があり、データを見ると、製造業、情報通信業、学術研究、専門・技術サービス業では大企業と中小企業の差が大きくなっています。一方、卸売業、小売業、宿泊業、飲食サービス業、などではほとんど差が見られません。

[図表2]企業規模別の時間当たり労働生産性の水準

(出所)中小企業庁「中小企業白書 2018」59ページのデータを基に株式会社ボルテックス100年企業戦略研究所が作成

補足すると、サービス業では企業規模に関係なく労働生産性が伸び悩んでいる要因として、サービスの生産(提供)と消費が、同じ時間・空間で行われる「同時性」、サービスを在庫として保管できない「消滅性」が挙げられます。サービス業の労働生産性を改善するには、これらの特性を打ち破っていく必要があります。

それ以外の業種では基本的に、機械・ 設備やIT化、研究開発といった各種投資、人材育成や業務効率化、アウトソーシングといった取り組みを積極的に行うほど、労働生産性が改善する傾向がみられるようです。

生産性向上に役立つ3つの補助金

中小企業が労働生産性の改善に向けて様々な取り組みを行う際に、ぜひ利用したい補助金があります。「ものづくり補助金」「持続化補助金」「IT導入補助金」の3つです。

2019年度補正予算によって創設された「中小企業生産性革命事業」によって、2020年(以降3年間)に実施されることになっています。

中小企業は現在、人手不足などの構造変化に加え、働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入など相次ぐ制度変更への対応に直面しています。「中小企業生産性革命事業」の目的は、これらへの対応や生産性向上の取組状況に応じて、複数年にわたって中小企業をサポートすることです。

いずれも通年で公募され、複数の締切を設けて審査・採択を行う予定であり、十分な準備の上、都合の良いタイミングで申請することができます。

ものづくり補助金(モノづくり・商業・サービス生産性向上促進事業)

中小企業が行う、革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資等を支援するものです。

<補助額>
100万円~1,000万円

<補助率>
中小企業1/2 小規模事業者2/3

持続化補助金(小規模事業者持続的発展支援事業)

小規模事業者が経営計画を策定して取り組む販路開拓などを支援するものです。

対象となるのは卸売業、小売業、サービス業(宿泊業・娯楽業以外)は従業員5人以下、サービス業(宿泊業・娯楽業)、製造業その他は同20人以下の小規模な法人または個人事業主です。申請にあたっては、商工会議所または商工会の支援により経営計画を作成することが要件とされています。

<補助額>
~50万円

<補助率>
2/3

IT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)

中小企業が行う、バックオフィス業務の効率化や新たな顧客開拓獲得等の付加価値向上に資するITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援するものです。

飲食、宿泊、小売・卸、運輸、医療、介護、保育などのサービス業のほか、製造業や建築業等も対象となります。

<補助額>
30万円~450万円

<補助率>
1/2

ものづくり補助金では、事業計画期間(3~5年)において、「付加価値額が年平均3%以上向上」「給与支給総額が平均年率1.5%以上向上」「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」を達成すること等が申請要件となっています。

持続化補助⾦及びIT導⼊補助⾦の⼀部事業者は同条件が加点要件です。

注目の補助金事業「戦略的基盤技術高度化支援事業」とは?

そのほか、中小企業が大学や自治体が設置した公設試験研究機関と連携して行う研究開発や試作品開発、あるいはその成果の販路開拓などにおいて利用できる補助金として注目されるのが、「戦略的基盤技術高度化支援事業」です。

優れた技術を有する中小企業・ 小規模事業者が、付加価値の高い最終製品を企画・設計する他の企業等と緊密に連携することを支援し、日本の基幹産業である製造業の競争力強化を図る補助金事業です。

戦略的基盤技術高度化支援事業

<補助事業期間>
2年度または3年度

<補助金額(上限額)>
単年度あたり4,500万円以下、3年間の合計で9,750万円以下
(定額補助率となる者については補助金総額の1/3以下であること)

<補助率>
・中小企業・小規模事業者等:2/3以内
・大学・公設試等:定額

<公募期間>
2020年1月31日(金)~4月24日(金)【17時締切】

<採択想定件数>
100件程度(予定)

なお、それぞれの補助金(補助事業)には様々な要件がありますので、詳しくは中小企業庁のホームページ等で確認してください。

著者

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所

1社でも多くの100年企業を創出するために。
ボルテックスのシンクタンク『100年企業戦略研究所』は、長寿企業の事業継続性に関する調査・分析をはじめ、「東京」の強みやその将来性について独自の研究を続けています。

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