【研究員コラム】2022年の経済展望

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2021年は、コロナ禍が続いているものの経済が回復し、世界を見れば人手不足や物流停滞などを理由にインフレが進んだ1年でした。本コラムでは、主にIMF(International Monetary Fund, 国際通貨基金)による2021年10月のWorld Economic Outlook(世界経済見通し)を参考として、2022年の経済を展望します。

まず、世界の新型コロナウイルスの感染状況について振り返ります。2021年に入った辺りまでは、新型コロナウイルス感染症による新規死亡者数の増える時期が世界各地域でシンクロしていましたが、以降はシンクロがなくなり「いつも、どこかで」深刻な事態が発生していました。最近では、ヨーロッパで感染者数が増えてきており、フランスでは2021年の大みそかに過去最多の23万2,200人が新たに感染しました。また、ワクチン接種については、2021年9月時点において、先進国では60%近くの人が必要回数分完了していましたが、新興市場国では35%程度、低所得途上国は5%程度と、違いが顕著に現れました。2020年末時点においてアジアは、ほかの地域と比べて新型コロナウイルスの封じ込めに相当程度成功していたこともあり、ワクチン接種が2021年6月頃から増え始めることになりました。

経済の回復の不均衡という点では、Google社が公表する「モビリティ指数(スマートフォンアプリなどの位置情報から、滞在人数や滞在時間を地域ごとに指数化したもの)」でも、どれくらい人々の行動が制限されているかについて、世界各地域でやはり行動制限はシンクロしておらず、各国がそれぞれの発生状況に応じて措置を弱めたり進めたりしてきたことが明らかになりました。

世界の貿易量については、2021年の半ばくらいに、新型コロナウイルスが流行する前の水準に戻りました。リーマン・ショックのとき、激しく落ち込んだ貿易量が元の水準に戻るのに約2年を要したことと比較すると、早い回復となっています。一方、航空旅客や海外旅行の数は、早い回復に努める観光依存国においても、いまだ従前の水準には戻っていません。

経済の回復が順調な先進国において、現在最も問題になっているのは、インフレ(物価上昇)です。材料等の不足によって生産が制限されていることを報告している企業の割合は、米国やユーロ圏の各業態(ゴム、電気、自動車など)で、2013年から2019年にかけて概ね10%未満だったところが、2021年第2四半期においては各業態概ね30%以上になっています。また、海上輸送費においても、2021年第1四半期、第2四半期と、その上昇率が高まってきています。2021年7月時点において、一部の国を除けばモノの価格上昇がサービスの価格上昇よりも上回っており、モノの供給が足りていないことによってインフレが引っ張られる状況となっています。

IMFは、2021年の実質GDP(物価変動の影響を除いた国民総生産)成長率の着地を、世界5.9%、先進国5.2%、新興市場国・発展途上国6.4%、低所得途上国3.0%、日本2.4%と予測しており、如何に低所得途上国に打撃の大きい1年であったかを知ることができます。2022年の実質GDPの成長率は、世界4.9%、先進国4.5%、新興市場国・発展途上国5.1%、低所得途上国5.3%、日本3.2%と予測しています。ワクチンの生産・流通が想定より速く進行したり、決済システムなどの変化によって生産性が向上したりすると、予測値より上振れる可能性はあります。しかし、予測値より下振れるリスク要因として、より感染力が強く重症化しやすい新型コロナウイルスの変異株の出現、需要と供給のミスマッチの長期化、気候変動ショックの悪化などがあり、下振れリスクが支配的になっていく可能性が高いという見通しが示されています。2022年に先進国は、パンデミックを想定していなかった2020年1月時点に予測していた2022年の予測生産水準まで成長する見通しとなっていますが、一方で新興市場国・発展途上国は、長く2024年まで展望したとしても、2020年1月に予測していた2024年の生産水準まで成長できる見通しにはなっていません。現在よりも、世界で格差が拡大していく可能性が高まっています。

日本は、先進国のなかで経済成長の度合いにおいて見劣りしているように映ります。しかし、企業が長期的な成長を目指すうえで重視すべきESG(環境Environment, 社会Social, ガバナンスGovernance)の文脈で、日本の企業がいま海外から評価され始めています。数年前までは、長寿企業が新陳代謝のないことの象徴として捉えられることもありましたが、ニューヨーク・タイムズやBBC(British Broadcasting Corporation, 英国放送協会)で日本の長寿企業が取り上げられるなど、長寿企業の捉え方に変化が生じてきています。創業100年以上の企業数が世界に占める割合でトップの日本において、2022年は1,334社が100周年を、8社が200周年を、2社が300周年を、1社が400周年をそれぞれ迎えることが、東京商工リサーチの調べで明らかになっています。日本の強み、自社の強みを活かしながら、長期的な視点で経営の舵取りを大胆に行っていくことで、新たな日本経済の形を築く、弾みの年にしていけるでしょう。

【参考文献】
Google“COVID-19: コミュニティ モビリティ レポート”
https://www.google.com/covid19/mobility/(2022年1月4日閲覧)
IMF(2021年10月12日)“Recovery During a Pandemic – Health Concerns, Supply Disruptions, and Price Pressures” World Economic Outlook, October 2021
https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2021/10/12/world-economic-outlook-october-2021(2022年1月4日閲覧)
Our World in Data
https://github.com/owid/covid-19-data/tree/master/public/data(2022年1月4日閲覧)
アビームコンサルティング株式会社『デジタル時代が創る経営管理の在り方 ~ Digital ESG ~』ホワイトペーパー
https://www.abeam.com/jp/sites/default/files/field/field_pdf_files/WP003_Digital_ESG.pdf(2022年1月4日閲覧)
佐藤克宏(2021年12月22日)『2022年を変革元年に!』RIETI(The Research Institute of Economy, Trade and Industry, 独立行政法人経済産業研究所)新春特別コラム:2022年の日本経済を読む~この国の新しいかたち
https://www.rieti.go.jp/jp/columns/s22_0007.html(2022年1月4日閲覧)
鷲見周久(2021年12月9日)『IMF世界・アジア太平洋地域経済見通し:パンデミック下の回復-健康上の懸念、供給混乱、物価圧力』RIETI公開BBLウェビナー
https://www.rieti.go.jp/jp/events/21120101/handout.html(2022年1月4日閲覧)
東京商工リサーチ(2021年12月3日)『「2022年」創業100周年は全国で1334社、100年超の老舗企業は4万769社に』
https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20211203_01.html(2022年1月4日閲覧)
矢嶋康次(2021年11月25日)『2022年展望』ニッセイ基礎研究所 公開セミナー

著者

安田 憲治

株式会社ボルテックス 100年企業戦略研究所 上席研究員

一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。塩路悦朗ゼミで、経済成長に関する研究を行う。 大手総合アミューズメントメント企業で、統計学を活用した最適営業計画自動算出システムを開発し、業績に貢献。データサイエンスの経営戦略への反映や人材育成に取り組む。
現在、株式会社ボルテックスにて、財務戦略や社内データコンサルティング、コラムの執筆に携わる。 麗澤大学都市不動産科学研究センター研究員。
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